田舎の顔をもつ都会。
台湾の古い街には「廟」がたくさんあります。
廟とは、寺のような、神社のような、
派手な地蔵尊のような場所で、
偉いことをした先祖を祀っています。
自分ちのじいちゃんとかじゃダメみたいで、
もっと歴史的に有名な将軍とかを祀っています。
人気の偉人は、あっちこっちで祀られていて
一個の廟の中には、地域住民の好みで(多分)
いろんな偉人が同居しています。
神様のセレクトショップみたいな感じです。
私の店があるエリア、
大稻埕(ダーダオチェン)も古い街。
廟がたくさんあります。
この偉人系神様、
中でも人気の高い神の誕生日が来ると
ド派手で巨大なパレードで練り歩きます。
観光客にとっては、運良く出くわしたら
民族度が高くてかなり嬉しい。
でも、台湾の観光局は、
このアミューズメントをあまり押していません。
交通渋滞にもなるし、
檳榔(ビンロウ)という
興奮する木の実の噛みタバコを
食べている人が多いからかな?
口が赤くなってるし
台湾人、檳榔はイメージが悪くて嫌うんです(註1)。
しかしながら、
大行列がドンチャンしながら練り歩く様子は、
踊りとオッパイとプリケツのないリオのカーニバル。
とは、言い過ぎか。
もとい、化け物と年寄りの鼓笛隊見たいな
珍しい感じ。
また言い過ぎか。
神輿もあるけど、黒い顔で怖くてデカイ、
カブリものが何柱も練り歩く方に
圧倒的に目が行きます。
中身は、もちろん人間で、
ヨーロッパの休日の街中で、
足の長いゴキゲンなピエロが歩いていたりする、
逆バージョン。
構造も、ピエロのように足の上げ底じゃなく、その逆。
中に入る人の頭の上からがデカイ。
カブリもののお腹に、丸いメッシュの穴が
小窓の分際でデカく付いているので
中の人と目が会うとギョッとします。
これも楽しい。
歴史的な漢方街、迪化街を含む大稻埕エリアにも、
今や、洒落たカフェとか雑貨屋も増えて
有名な縁結びの神様もいるけど、面白いのはその奥。
引っ張りましたが、これが言いたかった。
顔の黒いカブリものの保管場所も
迪化街の奥の路地にあります。
祭りに遭遇しないでも見れますよ。
その他にも
廟の境内にデカイ屋台村があって、
大量の年寄りが朝から酒を飲んでいるので目を疑う。
とか、
ひと気のないフォトジェニックな
レンガの屋根付き歩道?(走廊:ゾウラン)
とか、
観光客に人気の籠屋より
民芸をわかってセレクトしている農耕具屋もある。
とか、
我が店、『你好我好』もある。
近所まで来たら
迪化街という一本の通りじゃなくて、
大稻埕というエリアを見てってください。
住んでいる人の様子や大事にしているものが
わかって面白いです。
迪化街まで来て、ここまで見ないで
帰るのはもったいなぁ、と思いますよ。
台北は、世にも珍しい田舎の顔を持った都会です。
註1:檳榔の噛みタバコは、
石灰ブレンドしているものは、噛んでいると
汁が赤くなり、口にたまってきます。
この汁の一番搾り(一口目)は、
飲み込むと胃をいためるので、吐き出します。
これが道路などに残って汚すこともあるし、
また、檳榔を売る店では
エロな服の女性が販売員であることが多かったため、
イメージが良くないと思うらしいのです。