HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
台湾のまど 青木由香の台湾一人観光局 ほぼ日支所
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高雄ツアー その3。

人の温もりを感じる「いいもの」を探しで高雄に来て、
本屋でクリオちゃんに知り合い、
翌日、彼女の町、鳳山(フォンシャン)で待ち合わせ。
案内してもらうことになりました。

前回、前々回に引き続いて高雄です。

高雄あたりで300年くらいの歴史がある古い町といえば、
新幹線駅の左榮かこの鳳山と聞きました。
ここで台南ばかりが古都ではないと当然なことに気づき
MRTもあってアクセスのよいところに城壁跡のある、
いい田舎なイメージが湧きました。

「鳳山でcity bikeを借りておいて。」
という指令が下されていました。


city bikeとは、無人のレンタサイクル。
あっちこっちにステーションがあって、
どこのステーションに返してもいい便利なシステム。
その上、安い。

高雄のMRTと兼用のSuicaみたいなプリペイドカードがなくても
やってみるとクレジットカードでスルリと借りれました。


試乗を兼ねて、簡単に借りられた喜びを表し試運転中。
このあと叱られる。

猿回しの猿みたいにいい歳してグルグル走っていたら、
警備員に笛を吹かれて警告を受けました。

テヘヘ。なんてしていたら、クリオちゃん登場。
一緒に自転車で出発です。
すぐに五金行(ウージンハン)が目に入ってきました。

五金行は、台湾ローカル版、プチ・ホームセンター。
田舎では掘り出し物があるお宝の宝庫。
私、個人的に結構好物。
店の入り口に雑な造りのほうきがあり、
ほうきにしては頼りない。
クリオ氏の方を見ると「こんなもん知らない」と。
南部でもメジャーではなさそうです。
おばさんに聞くと、畳の材料・イグサ製で
引越しの際、新居を履いて厄払いするものでした。


雑なほうき、50元。
「柄の部分に小判やお多福を刺して、神社で売れば、
酉の市なんかで売ってる熊手の逆ものとして売れるんじゃないか」と、
可能性を感じた一品。

引越しの予定もなく、その後の自転車の旅を考え
購入はとどめ、続いて市場の中の五金行へ。
次の五金行は、完全に金物屋です。


台北の迪化街にもこんな佇まいの農工具屋がある。
日本には農村部に行ってもない。
なぜだ? ホームセンターが発達したからかな。

刃物という刃物を各種取り揃えている、すごい品揃え。
手作りのハサミもありました。
市場で働くあらゆる人のニーズに応えているからです。
鍬、鎌、包丁研ぎに、計りの調整などメンテもしてくれる。
お直し産業が盛んな台湾、
台北でも徒歩圏内に靴、服の直しがあり、
私は前よりものを捨てなくなった気がします。


ちょうど計りのメンテに来たヘルメットの下にサンバイザーのおばさん。
日焼けを気にして手甲しているが、
二の腕の肉がはみ出してるのがいいと、この旅の連れが言っていました。

隣の洋品店。

隣の洋品店のマネキン。

向かいの爺さん。

市場の中の古いドリンク屋。昔ながらの店の鉄則は、
「氷砂糖で甘さをつけ、
氷を入れずに(氷が溶けると味が薄くなるから)
飲みのも自体をヒエヒエにすて出すのが正統派。」とクリオちゃん。

次に訪れたのが、
「竹もの取り扱い店は多いけど、
作って売っている店は少なし。」
ということで、チャリにまたがり、
竹で椅子を作る爺さんの店に。
我が家の小さい人へ二番目に低い高さの椅子を選んでいると、
爺さんが、椅子の脚の地面につく側に竹の節がある方が
強くていいと教えてくれました。なるほど。
「汚れてないの〜」と選んでいた私の浅さよ。
自転車移動を忘れて大物を購入したのは、
作っている人の顔が見えたからからでしょう。


竹で家具を作る、爺さん(裸)。

そして、廟(寺)に向かって自転車でキコキコ。
すると、私がずっと作りたいと思っていた
もっこり文字の看板屋が!
クリオちゃん知り合いらしい。
通りから声をかけると
チョロ髭マッチョの先生(裸)が出て来ました。
ドン突きの寺に掛かる『雙慈亭』の文字も先生の作。
あっちこっちの寺に自分の作品が飾られる素敵な職業、
退職したら弟子入りしたい。


太極拳だかカンフーだか、ああいう中国伝統武道みたいなものの
先生でもあり、どの字体も全てご自分で書いている。
書いて、彫って、塗って、アチョーです。
先生の右手にある黒地の金ものは、だいたい6000元くらい。

台湾でも作っている人が少ないので、
みんなここに注文するらしい。
私も近い将来、必ず彫ってもらおう。

キコキコキコ。

数件先は、寺っぽいのセレクトのおもちゃ屋さん。


被り物の顔やお面があります。

商品をぶら下げるのが台湾っぽいです。
こちらにも手作りのパチンコ台という
レアものが売っていました。


パチンコ台は千幾ら(値段忘れた)。そんなに高くない。

レトロ王冠型メンコは数枚入って、たったの10元。

店主のおばあさん。一応現代的風なおもちゃも取り扱っている。
後ろに小さく写るトーマスとかは明らかに、んん?なお顔した商品。

廟前通りは、提灯屋さんもある。
寺がらみの提灯を売っているけど
「臭豆腐」とか「焼き鳥」なども頼めば書いてくれる。
いいことを聞いた。

古くからの営みが残っている、いい街だ。
車ブンブンの橋をキコキコと走っていると
橋から川の中洲みたいなところに、
昔の城壁の門だけが残っていました。
現代の道路も橋もあるのに、
門の方はバイクや自転車が
幸せな感じに行き来しています。
城があった頃は、南の方から高雄方面に行くには
必ずここを通っていました。
だから外部から来た人に、
そこが街のどの方角に位置するか
すぐにはわからないような名前を門につけています。
それもそのままありました。


城壁内側は「東便門」。

城壁の外側の門は「同儀門」。

その門を超えると、鍛冶屋街。
誰もいない古い路地でしたが、
南方からの長旅をへてこの街にたどり着いた人たちが、
生活を始めるにも何をするにも
一番に必要なのは金物だったから、
ここに鍛冶屋ができたのです。



鍛冶屋街自体の規模は小さくなっているけど、
工事現場で使うドリルの先っぽが鈍るとかで、
ここに持って来る人は今もたくさんいるそうです。
300年近く前の名残が、各所に残る鳳山。
それは大体的に観光名所に吊るし上げられているんじゃなくて
いい感じでした。
高雄全体は、なんだかお年寄りが元気で
それは自分が歳をとった時を想像しても
年寄りの行き場があっていい街だと思いました。
次回は高雄の美味しいものを見つけに行きたいです。

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鳳山でお世話になったクリオちゃんは、メガネじゃない方。
2017-08-27-WED
信仁五金刀具行順彩商店
(市場のあらゆる金物を扱う金物屋)


高雄市鳳山區新興里民生路7號(第二市場) 
07−7461339

竹藤屋(竹家具屋)

高雄市鳳山區大東一路96號 
07−7410630

慶章書法(看板屋)

高雄市鳳山區三民路248號