清順 | 俺は、こいつ(砂漠のバラ)を めちゃくちゃいいと思ってるんです。 とりあえず、プロポーションが ものすごくかわいくて、たまらない。 しかも、花がとてもきれいだし。 |
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糸井 | ‥‥たとえば、これを 土と鉢と清順さんの言葉の入った ブックレットをセットにして 販売するのはどうでしょう? つまり、「そら植物園」さんと ぼくら「ほぼ日」で、キットを考えていく。 |
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清順 | いいと思います。 栽培も難しくないし、 植物の「BEGINNING」としては めちゃくちゃええと思います。 |
糸井 | 清順さんが、「砂漠のバラ」について 扱い方や物語を伝えてくれる ブックレットをつけて、 植物でBEGINNINGできるような キットを作るんです。 たくさんの人が同じ植物を 同じ時期に招き入れるって、 ちょっと、ないもんなぁ。 いろんな場所に住む人たちに このひとつひとつが渡って、 「おんなじことを見てるんだなぁ」 というようなことがもしもできたら、 おもしろいと思います。 |
清順 | やってみたいです。 この「砂漠のバラ」は そういうことに向いていると思います。 |
糸井 | やるとしたら、やっぱり、 苗より種がいいのかな? |
清順 | そうですね、どっちもいいんでしょうけど、 種から育てたほうが、 個性が出やすいです。 これでもいちおう キョウチクトウの仲間なんですけどね。 |
糸井 | おおむねアフリカのもの? |
清順 | そうです。このアデニウムの種類は おおむねアフリカ大陸、アラビア半島です。 たまに日本に輸入されて、出荷されて、 「アデニウム」といって売られてるだけ。 でも、それやと、かわいそうなんです。 もっといっぱい伝えることある。 |
糸井 | そうですよね、まずは植物を 「アデニウム」という名前だけですませないのが いいと思うんですよ。 キョウチクトウです、おしまい。 松です、バラです、といっておしまい。 名前を呼んでおしまいになっちゃったら 植物のほうからすると、つまんないよ。 |
清順 | そうです。 「日本人ね、はいはい」で終わりなのと同じ。 |
糸井 | 清順さんがここの植物の看板に 「つぶやき」を書いてるのも まったく同じ意味でしょう。 |
清順 | はい。 だから、あのプレートには 植物の名前を 大きくは書いてないんです。 |
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糸井 | 砂漠のバラの、種を蒔く時期は? |
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清順 | 春先か、夏が向いてます。 |
糸井 | 土はどうすればいいんだろう? |
清順 | 土はねぇ‥‥土のことは、 話すと長くなるんですけど。 |
糸井 | 短めにお願いします。 |
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清順 | 短めに(笑)。 |
糸井 | あるいは、顔真似でもいいよ。 |
一同 | (笑) |
清順 | 土というのは、工業製品じゃないから 人間が作り出せないものなんですよ。 ですから、どんな園芸屋さんでも どこかで掘り出した土を使っています。 地球上の土をみんなが回し合ってるだけなんです。 |
糸井 | うん、うん。 |
清順 | でも、土がわりになるものがひとつあります。 それは「ヤシガラ」です。 ココナッツの実をとったあとの残骸を 熱処理して加工し、 ヤシガラのロープやマットを作りますね。 あれは、園芸用土としても使えます。 軽いし、土のように手が汚れない。 だから、机の上の鉢に入れても汚れにくい。 植物にも、とてもいいものです。 樹木も野菜もサボテンも育てることができます。 ぼくらは、このヤシガラを自社で直接 インドから取り寄せています。 育てる植物によっては、これに 土や砂を足したりしますが、 ヤシガラだけでもぜんぜんいけます。 |
糸井 | じゃあ、このヤシガラのなかに、 種をぽんと入れて、水をやれば‥‥ |
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清順 | 芽が出ます。 |
糸井 | 鉢はセットにして 届けたほうがいいのかなぁ。 素材は、素焼きがいいとか、 何かありますか? |
清順 | いや、ないです。 |
糸井 | ない! |
清順 | 鉢は、たいてい見てくれだけの問題です。 底に穴があいてればなんでもいい。 だから、もしも種といっしょに 鉢をつけるとしたら、かんたんなものにして、 あとは受け取ったみなさんがどうとでも 工夫してやっていくのがいいと思います。 |
糸井 | ある程度、おおらかな気持ちで いけそうですね。 |
清順 | はい。 砂漠のバラは丈夫ですが、 枯れることだってないとはいえません。 けれど、それはしょうがないことで、 ちゃんと経験していただくことが 重要だとぼくは思っています。 枯れることを恐れすぎないでほしいです。 冬は落葉しますから、 つんつるてんになっても心配しなくていい。 |
糸井 | それもBEGINNINGの形ですからね。 |
清順 | そうです。 種から育てると、育つ環境によって 個性が出ておもしろいですよ。 これのでかいのは、このくらいになる。 めっちゃでかくなります。 |
糸井 | これ、生きてるんだ。 すごい形だ。 |
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清順 | 生きてます、生きてます。 |
糸井 | まるで巨大なたけのこだ。 こうなっても、花が咲くんだね。 |
清順 | もちろんです。 ぼくらはこの、生きてる日本の世界が あたりまえだと思っています。 しかし、あたりまえの世界って、それぞれです。 この「アデニウム・アラビカム」が やってきたのはイエメンですが、 イエメンにはイエメンで、 雪国では雪国で、山の中は山の中で、 どの世界もみんなそこがあたりまえです。 ぼくらはいつもの日本のルーティンの人生の中で、 常識とか、きれいな景色とか、いろんなことを 自分で考えちゃってます。 けれども、イエメンくらい遠くに行ったら これが生えてるんやなぁと思ってくれるだけで 何かがすこし変わっていくと思うんです。 |
糸井 | うん、そうだね。 |
清順 | 「へぇー」と思ってもらえるかなぁ、 ぼくがやってるのは、 それだけのことです。 |
(つづきます) |