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イナカモン外伝、逆襲のサガ。
都会の正体とはなんだろう?

<そんなに奥までくわえ込まないで>


某超有名検索サイトで
「佐賀 エンターテイメント」で検索したら、
「遊園地、テーマパーク」の登録がたったの一件。
 しかもその一件、
「有田陶器市」ですって。
すごいですよねぇ…。
有田陶器市って、
ゴールデンウィークだけのお祭り行事ですよ?
お祭り行事を「テーマパーク」という
カタカナにあてはめられちゃうあたりが
柔軟すぎて素敵です。
Myサガ。

行事といえば、今でも脳裏に焼きついてはなれない、
佐賀ならではの光景があります。

 それは「もちすすり」。

テレビで奇妙奇天烈な技として紹介されている光景を、
見た覚えのある人も多いのではないでしょうか?
あれは佐賀では、
一応「めでたい時の風習」という位置づけです。
技そのものはほとんど
「生命の限界への挑戦」としか思えなくて、
私は小さい頃に目の前で見て泣きわめきました。

まず、つきたてのほっかほかで
柔らかなお餅を大量に用意します。
それを、地元のおじいちゃん達が何人か、
両手いっぱいに各々適量をちぎり取ります。
そしておじいちゃん、横一列に並びます。
手に取った餅を水に浸して冷ましながら、
長い棒状に形を整えます。
醤油の入った皿を用意して、それに餅の先端を浸します。
さあ、ここからが勝負!
その棒状にした餅を両手でやさしく包んで唇へくわえこみ、
一切噛まずにすすりこむ!

…想像できます?

餅の棒の直径も決して細くないですよ。
ペットボトルの蓋ぐらいはあろうかという
「餅の棒」を五十センチとか1メートルぐらい、
ただただ吸い込んでいくおじいちゃん達。
口から入って喉を開いたまま、
食道通って胃まで太い一本の餅が支配するというのは、
考えただけでも苦しそう。
そして至近距離で見物してると、
吸い込む度に聞こえてくる呼吸音がすごく怖いんですよ。

どっ、どっ、どっ、どっ!

息を鼻から吐いては、
再び

どっ、どっ、どっ、どっ!

「ど」と「ぞ」の間のような音が響き渡るんです。
本当に。

そしてまた速いんです、
大量の餅が口と喉に入っていくそのペースが。
見る見るうちに吸い込まれていって、
小さい頃は絶対に手品だと思ってました。

「あの人達はたぶん首の後ろに穴ば開けて、
 吸い込むフリしてそこから
 服の裏に隠しようとよ、きっと」
とか
「実は口に入れると縮小する、
 特別な仕掛けのお餅じゃなか?」
と、友達と大議論したこともあったっけ。
もちすすり専用サイボーグ説は有力だったなぁ。
大きくなったらなったで
「実はなんてエロティックな行事なんだ!」
と本気で思いました。

「あなたがくわえ込む、なまあたたかくて白い、
 柔らかな棒がゆっくりと喉の奥まで…」

いやん、じいちゃんじゃなければ大問題ね。

 今となってはこの「もちすすり」の技を
受け継ぐ人は少なくなったそうですが、
それでもこれを「伝統行事」と呼ぶしかないというのは、
命の危険もあるだけに何とも複雑です。
高齢になったらお餅そのものがしんどいでしょうし。

興味がある方は秋になったら行くとよろしい、
餅をフィーチャーした佐賀県・有明町の

『ぺったんこ祭り』

多分、最近もやってる…と思う。
もちすすりな方々もご存命…と思う。

次回は、7年前、
私が高校生時分の佐賀の映画館事情をご紹介します。

2001-03-23-FRI
TANUKI
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