YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson38  自分の意見のルーツを知って、説得力を出す

あなたは、
自分の意見を言うとき、
何を根拠にしていますか?

人を説得するものは、
「意見」よりも、「理由」です。

自分はいったい、どこから「理由」を持ってきているのか、
どこから持ってくる傾向が強いのか?

それをつかんでおきましょう、
というのが、今日のレッスンです。

自分の根拠の出どころや、クセが分かれば、
自分の強みや限界、
相手との立場の違いが見えてきます。

自分を知ってこそ、
はじめて人に伝わる説得力は出てきます。

では、ちょっとテストしてみましょうか、質問その1です。

●私の意見はどこからやってくるのだろうか?

森首相が、
ハワイ沖での米原潜と実習船の衝突事故について
第一報を受けた時、
すみやかにゴルフをやめ、
職場に帰り任務にあたる、
ということをしなかったことについては、
大きく分けて、
退陣すべきだという意見と
退陣の必要はないという意見があります。

あなたは、これについてどう考えますか?
……………………(思考タイム)…………………。

できましたか?

では、ここからが、本当の質問です。
あなたは、なぜそう思ったのでしょうか?
あなたの意見はどこからやってきましたか?
最近読んだ本?
自分の体験?
ニュースで得た知識?
直感?
なんとなく?
それとも生まれつきの思考のクセ?

根拠の出どころを自己分析してみてください。
では、どうぞ、
……………………(思考タイム)…………………。

できましたか?
ではもう1問いってみましょう。

あなたは友人からこのようなことを言われました。
「俺は、インターネットの情報を信じない。
ほとんどの情報がタダでやりとりされているからだ。
タダの情報に責任があるとは思えない」と。

この友人に何か言葉をかけてください。

では、どうぞ、
……………………(思考タイム)…………………。

できましたか?
ではこれも、あなたはなぜ、そう思ったのでしょうか?
根拠の出どころを自己分析してみてください。

さて、2問ですべてはわからないにしても、
こんなふうに、自分の根拠の出どころをチェック
してみる感覚はつかめたと思います。

日ごろの傾向も考えあわせたとき、
あなたは次のどのタイプでしょうか?

●あなたの傾向と対策

あなたの根拠は大きく分けて次の二つのうち、
どちらからきていますか?
自分の「体験」
本やテレビなどから得た「知識・情報」

あなたは問題を考えるとき、次の二つのうちどちらですか?
もしも自分だったら…と、相手への「共感・実感」からスタートする。
より客観的な立場から「分析」しようとする。

自分が森首相だったらどうするか、
事件の当事者だったらどう思うか、あるいは、
ネット不信になった友人の気持ちになってみようとした人は、
「共感・実感」から考えていこうとする人です。
一方、危機管理とはどうあるべきか、
ネット情報の信頼性とは、といった視野から考えた人は、
「分析的な立場」と言えます。

これらを表にしたものが次です。
あなたはどのタイプですか?

  知識・情報で語る 体験で語る
共感・実感から
考えていく
知識をもとに、
実感をこめて語る
体験をもとに、
実感をこめて語る
批判・分析的
な立場から
考えていく
知識をもとに
分析的に語る
体験をもとに
分析的に語る

この表は、高校生の小論文について、
伝わると、伝わらないの違いに私が悩んでいたとき、
ある高校の先生がつくってくださいました。
その先生は、ディベートなどもいちはやく授業に採り入れ、
とても学習効果の高い授業をされています。

この4タイプは、人間の個性のようなもので、
どれがよい、どれが悪い、というものではありません。
ただ、自分を知っているかどうかは重要です。

その先生は、それぞれのタイプの傾向と対策を
次のように示してくださいました。

体験をもとに実感をこめて語る人

うまくすると自分の人間性が強くアピールできる。
失敗するとただ感情に流れるだけで、
説得力を失う。

知識をもとに実感をこめて語る人

うまくすると理性と感性の融合した
すばらしい説得力が出せる。
失敗すると、どこかで仕入れた知識・情報を
感情的に語るだけ。

知識をもとに分析的に語る人

うまくすると客観的でレベルの高い内容になる。
失敗すると評論家の受け売りのように
根の弱い、理屈になってしまう。

体験をもとに分析的に語る人

うまくいくと具体的、かつ論理的な話ができ、
すばらしい説得力が出せる。
失敗すると自分の体験したせまい事例を、
こねくりまわすことになる。

さて、あなたはどのタイプでしたか?

体験で語ることが多い人は、
その体験が通じる範囲というか、限界に注意するといいです。
自分にとってその体験が有効でも、
別の人間、別の環境になったとき、
通用しないこともあるからです。
そういうことを知っていれば、
体験豊富なあなたの考えはより説得力をますでしょう。

これから日常の場面で、
ふと相手との話し合いが煮詰まったようなときに、
自分の根拠はどこからきているのか、
チェックしてみてはどうでしょうか。
自分が知らず知らずに影響されている
人物やメディアも見えてきたりして、
なかなか面白いものです。

自分の意見のルーツを知って、自分を活かしましょう。

2001-02-21-WED

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