ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-06-30-TUE

リッピ監督のあやまち。


franco

FIFAコンフェデレーションズ杯2009において、
イタリアはリーグ戦で敗退しました。
イタリア代表アズーリまでがふらつきはじめたことは、
イタリアのサッカーの先行きは
ますます暗くなったことを意味します。
ユーヴェ、ACミラン、インテルらが
UEFAチャンピオンズ・リーグ準々決勝で敗退し、
クラブチームの浮上は成らなかったという結果でしたが、
それでもイタリアのサッカーへの情熱を、
アズーリなら、しっかりと
繋ぎとめることができたはずでした。

ヨーロッパ内の選手権で
イタリアが輝いていなかったのは事実ですが、
それにもかかわらず、
3年前のW杯ドイツ大会優勝のおかげで、
イタリア代表チームは今も世界一の座にいます。

マルチェッロ・リッピ監督は、
来年行われるW杯南アフリカ大会に
連覇できると信じていたのですから、
まさにその南アフリカで行われた
FIFAコンフェデレーションズ杯においても、
イタリアは実力を試すべきでした。
ところが結果は、エジプトとブラジルの前に
イタリアは重なる失態を見せ、
今までの輝かしい立場のすべてを
曇らせてしまいました。

動けないアズーリ。

まず、アズーリに勝ったためしのないエジプトが、
使い古された選手ばかりのアズーリを破ります。
そしてブラジルは、
わずか8分のうちに3ゴールを入れて、
イタリアを崩壊させました。

イタリア代表とブラジル代表といえば、
代表チームとしての最高レベルを象徴する2チームです。
2チームがW杯で優勝した経験は、
ブラジル5回、イタリア4回、
あわせて9回にもなります。
その2チームが闘うのですから、
スペクタクルな展開と感動とを
かならず保証してくれるはずなのです。

にもかかわらず、この一方通行のような
バランスの悪さはどうしたことでしょう。
イタリアの星たちは、ただ眺めているだけで、
麻痺したかのように動けませんでした。
まるで、決して止まらずに歩を進める
無情な時の神の前に、
屈服してしまったかのようです。

マルチェッロ・リッピ監督は、
W杯優勝をもたらせてくれた選手たちに対し、
大きな評価と感謝の気持ちを持っています。
しかし、それが、逆に裏目にでました。
来年のW杯を見据えながら
有望な若手選手たちを試すには、
絶好のチャンスだったこの大会で、
リッピは過去のビッグネームに縛られすぎるという
過ちをおかしたのです。

franco

若手を使うべきだとぼくは思います。

彼が「招集しない」と決めていた
若い選手がふたりいます。
彼らは、この1年の間に、
本当にチームを好転させる可能性を
持っていました。

ひとりは27歳のカッサーノで、
まあ、ごく若いとは言えませんが、
ここ2年はUCサンプドリアで
カンピオナートを健闘しています。
しかしリッピは彼の「若気の至り」を許そうとせず、
彼らの間には底知れぬ悪意があるようにさえ思えます。

franco

もうひとりは、2008年8月に18歳になった時、
イタリア国籍を取得したバロテッリです。
彼はアズーリでプレイすべきですし、
イタリアサッカー界もこぞって
それを望んでいます。

franco

彼の両親はガーナ人ですが、
パレルモの孤児院に置き去りにされ、
ブレシャのバロテッリ家に引き取られました。
インテルのユースで頭角を現し始め、
2年前に正選手になったばかりです。
そういう経過をたどってイタリア国籍を得た
マリオ・バロテッリは、まだ18歳ですが、
完全な価値あるチャンピオンになるための
肉体、走り、シュートとゴールのセンスなど、
全てを備えています。

彼はイタリアの「アンダー21」で
成功をおさめていますが、
リッピは彼に関しても、
性格上のことで招集を留保しています。
バロテッリは肌の色のことで、
しばしば対戦相手のティフォーゾから侮辱され、
それに対する応じ方が少々子どもっぽいというのです。
彼はまだ若いのだし、多くの価値を持っていると
ぼくは思うのですが。

franco

いずれにせよリッピは、遅かれ早かれ、
彼を招集せざるを得なくなるでしょう。
それは黒い肌の選手がアズーリのシャツを着る
最初の瞬間ですから、
イタリアサッカーにとって
歴史的な日ということになるはずです。


訳者のひとこと

28日の決勝戦はアメリカ対ブラジルで、
結果は2対3で
ブラジルが前回についで連覇し、
最優秀選手にカカが選ばれたようです。

といっても、参加したのは8チームなので、
アズーリが決勝に絡めなかったのは、
やはりイタリアにとってはショックだったでしょうね。

うららさんイラスト

翻訳/イラスト=酒井うらら



まえへ
最新のページへ
つぎへ