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糸井 |
はじめまして、よろしくお願いします。 |
原 |
どうも、はじめまして。 |
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糸井 |
さっそくなんですが、
原さんの「本業」ってなんなんでしょう? |
原 |
え? |
糸井 |
いつもは「ベンチャーキャピタリスト」と
紹介されるんでしょうけど、
なんだか、それだけで語れないような
いろんなことをやってらっしゃる印象があって。 |
原 |
デフタ・パートナーズっていう
ベンチャーキャピタルの会社を経営しています。
本業というなら、それかな。
でもまぁ、それだけじゃなくて、
非営利の企業や財団の運営などもやってますので、
本業はなにかと聞かれれば、
とりあえず「実業家」と答えています。 |
糸井 |
そういう肩書き以外の活動っていうのは、
原さんにとって、どういうものなんですか? |
原 |
まぁ、いろんなことをやってるんですけど、
そのどれも、最終的には
「アメリカの悩みを解決するのは
日本なんだぞ」というふうにしたいんです。 |
糸井 |
アメリカを、日本が助けると。 |
原 |
たとえば、日本の学者の考えかたを
アメリカで発表できるよう、
財団をつくって資金を提供したりしています。
日本のメディアにいくら出したって
ニューヨーク・タイムズは、
ぜったい、とり上げてくれないでしょうし。 |
糸井 |
それは、そういうものなんでしょうね。 |
原 |
残念ですが。 |
糸井 |
でも、原さんって、世間的に見たら、
「アメリカで働くエリート」に
ジャンル分けされる人でしょう? |
原 |
うーん、本人には
ぜんぜんそういう意識はないですけどね。
以前、「ほぼ日」でも紹介された
岩井克人さんと初めて対談したときも、
最初はそう思われていたようですね。
岩井さんからは、わたしがアメリカで働く
ベンチャーキャピタリストだということで、
ジョージ・ソロスや
村上ファンドの村上世彰みたいな人間ではないかと
思っていたと言われました。
幸い、会ってすぐに誤解はとけたんですけど(笑)。
でもまあ、そういうふうに、見えるんでしょうか。
月に半分以上は、日本にいませんし。 |
糸井 |
そういう人が
「アメリカを助けるのは日本だ」って。 |
原 |
しょっちゅう、グリーンカードをつくれと
合衆国からは言われますけど、
それもずっと、拒否してるんですよね。
だって、わたし、日本人ですから。 |
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糸井 |
でも、アメリカのエリートの生きかたには
ちょっと、興味があるんです。 |
原 |
わたしが身近でみていても、
たいして変わったとこはないですよ。 |
糸井 |
いや、あの‥‥。
ひとりの人間ができることの分量って、
あるていど、限られるじゃないですか。
それなのに、
「100メートルのスピードで
フルマラソンを走りきる」みたいに
がんばってらっしゃいますよね、みなさん。
アメリカで働くエリートの人って、
とにかく、そう見える。
ただのイメージなのかもしれないけど。 |
原 |
ええ、まぁ、たしかに。 |
糸井 |
で、それが「勝ち組」みたいに
思われてるせいなのか、
エリートじゃない
ふつうのわれわれ日本人までもが、
自民党政権のことから、朝青龍の事件から
ご近所づきあいの悩みから‥‥
すべてにコミットしなければならないと
思っちゃってる気がするんです、現代って。 |
原 |
本が出たら、読まなきゃならない、とか。 |
糸井 |
ええ、古典の知識だって必要だ、とか。
つまり、強迫観念みたいに
情報やら知識やらを求められていますよね。 |
原 |
そんなにたくさん、こなしきれなくて
あせってる人たちのほうが、多いでしょう。 |
糸井 |
はい。そうなんです。
で、その「あせってる」人たちというのは、
エリートの側から見たら、
自分たちの仕事の売り先の、
「たんなる消費者」にしか過ぎないのか‥‥。 |
原 |
それは、アメリカが解決できていない
問題のひとつですね。 |
糸井 |
だから、そういう人たちの仕事論というか、
生きかた観については、興味あるんですよ。
なにしろ元気じゃないですか、朝から晩まで。
アメリカで働くエリートの人たちって(笑)。 |
原 |
まぁ、ヘンに元気なのが多いけどね。
わたしから見りゃあ。 |
糸井 |
いちばん最初にそれを感じたのは、
アメリカの企業の
カンファレンスに参加したときなんです。
壇上に上がってくるエリートたちは、
みんな明るくて、体格がよくて、
朝から夜中まで元気で、酒もよく飲んで‥‥。
で、翌朝も誰よりニコニコしながら
「おはようーっ!」なんて言って出社してくる。
体つきも、シャープだったりしてね。 |
原 |
そういうイメージって、たしかにありますね。 |
糸井 |
その一方で、典型的な言いかたをしちゃうと
遊園地かなんかに、
太ったお父さんを中心にした家族づれが
脂っこいファーストフードを食べながら、入ってく。
人数として多いのは、
明らかにそういうお父さんたちじゃないですか。
でも、世間で信じられてる「基準」からすると、
そっちの人たちのほうが「負け組」というか、
「ダメ」だとされちゃってますよね。 |
原 |
ああ、それで、さっきの‥‥。
たんなる「消費者」なのか、と。 |
糸井 |
そういう基準って、いったいなんなんだろう。
どうしても、やるせないんですよ。
みんなオッケーでしょ、って言いたいんです。
アフリカから
奴隷として連れてこられた人たちの子孫が
それこそ、大統領になってもおかしくない
時代になったわけですから。 |
原 |
たしかにね。 |
糸井 |
エリートだなんだという基準とは別のところで
みんなが肯定されるような考えかたが
見えてくるといいなぁって、思ってるんです。 |