あのひとの本棚。
     
第5回 光石研さんの本棚。
   
  テーマ「ソウルな5冊」  
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役を演じるうえでも、実生活でも、
大切なのは「しっかりした思い」なんじゃないかと、
そんなふうに考えているんです。「ソウル」ですよね。
何度引っ越しをしても、ぜったいに捨てることはない、
ぼくの魂の5冊を紹介します。
   
 
           
           
 
 
 
 
『あるがままに』 笠智衆ほか 世界文化社/1400円(税込)

ぼくが役者として食べていけるのかどうか、
ちょっと悩んでいる時期にこの本に出会いました。
本屋さんで買って電車の中で読みはじめて、
涙ぐむくらいに勇気づけられた本です。
笠さんは、「役者とはかくあるべき」みたいなことは
すこしも書いていないんです。
「ぼくはなにもできない人だったんだ」とか、
「小津安二郎先生から、君はヘタなんだから
 言われた通り動きなさいと叱られた」とか、
「君はこの役をやるかい、と言われてうれしかった」とか、
ずっとそんな、日記のような文章で。
「ぼくはこういうふうに演じる」みたいな演技論は
まったく書かれていない。
それを読んで、すごく勇気づけられたんですよ。
‥‥これは本に書かれていたことではないんですが、
「俳優っていうのは、なにもできないんです。
 監督がいてプロデューサーがいて
 あとは現場のスタッフがいるから、
 ぼくはここに立てているんです」
と、笠さんはそういう思いでいらしたんじゃないかと、
この本を読んでぼくは勝手に思いました。
いまぼくは、その考えで
この仕事をやらせてもらっています。
淡々とつづられた静かな本です。
でも、「しっかりした思い」が、ひしひしと伝わる
ぼくにとってはソウルにあふれた一冊です。

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『甘茶ソウル百科事典』 テリー・ジョンスン、ビリー・ブラックモン、ムーディ・ムーニー ブルース・インターアクションズ/3045円(税込)

「甘茶ソウル」というのは、たぶん湯村輝彦さん‥‥
あ、この本ではテリー・ジョンスンという名前ですが、
この湯村さんの造語だと思うんですよ。
「甘茶ソウル」とはなんなのかというと、湯村さんいわく、
「それは股間で感じろ」と(笑)。
まぁ、要は「ベタベタに甘いソウルミュージック」
とぼくは解釈しているんですけれど。
それをこれでもかと紹介するのが、この本なんです。
ぼくが「甘茶ソウル」に行き着いた経緯は、
ちょっとディープになっちゃうんですけど‥‥
まず、ぼくの中で音楽は、
キャロルに始まり、クールスがきて、
次にシャネルズがきたんですね。
シャネルズ、衝撃的でした。
黒人がみんなでスーツ着て甘い曲を歌うっていう、
ドゥーワップを知らなかったから。
そしたら、湯村さんが詳しいんですよドゥーワップに。
あちこちでコメントをいっぱい書いてる。
あぁ湯村さんってそうなんだ、と思って、
ぼくもどんどん甘いほう甘いほうにいったら、
今度は横山剣さんがめちゃくちゃ有名な甘い曲を
クールスで歌ったりするんです。
‥‥自分の好きな人たちが、
自分の気になったところでつながっていくというか、
そういうのが、なんだかほんとにドキドキしてうれしくて、
いまでもぼくはこの「甘茶ソウル」な音楽が大好きですね。
この本からは、音楽に限らずいろんなことを教わりました。
ソウルフルであるための、バイブルのような一冊です。

   
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『これは恋ではない』 小西康陽 幻冬舎/2310円(税込)

元ピチカート・ファイヴの小西康陽さんが
いろいろなところで書かれたコラムをまとめた一冊です。
とにかくいろんなこと、たとえば洋服のことから、
もちろん音楽、レコードのこと、映画のこと、
アイドル論みたいなことまで、キョンキョンの話とかね、
いろんなことが語られているんですよ。
どこから読んでも、すごくおもしろくて、
勉強になるというか、
実際ゴダールの映画はこの本で小西さんが触れていたので、
観はじめたりしましたからね。
小西さんも、ぼくにとって、かっこいい存在です。
音楽性はちがうんですけど、
クレイジーケンバンドは小西さんとつながっていますしね。
小西さんのプライベートレーベルから、
アルバムを出してるんですよ。
そういうこともあって、なにか通じるものを感じるんです。
イカしたなにかを。
これもやっぱり、ぼくのソウルな一冊ですね。

   
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『CKBD―Crazy Ken Band Dictionary』 川勝正幸、下井草秀、クレイジーケンバンド ソニー・マガジンズ/1995円(税込)

またクレイジーケンバンドの本なんですが、
こちらは横山剣さん個人ではなくバンドの様々な情報が
アルファベット順にびっしり並んでいるという、
まさに辞書みたいな構成なんです。
で、この本を書かれたひとりが、
川勝正幸さんっていうぼくの大好きなエディターのかたで、
しかも表紙は、これまたぼくの大好きな
湯村輝彦さんが描かれている。
ぼくにとっては、もう、夢のような本なんです。
内容も、いわゆる普通のタレント本ではなくて、
取材やインタビューが充実していて、
バンドのことがかなりディープに掘り下げられています。
ほんとうにクレイジーケンバンドのことが好きで、
その周辺情報を知りたくてしょうがない人が
本気でつくったんだなぁというのが伝わってくる。
ファンとしてはたまらないですよね。
‥‥イカしてるんですよ。
これもまた、「これこそがソウルフル」な一冊として
とても大切にしている本ですね。

   
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『クレイジーケンの夜のエアポケット』 横山剣 ぴあ出版/1575円(税込)

これは、クレイジーケンバンドの横山剣さんが
『Weeklyぴあ』で連載されていたのをまとめた本なんです。
実はぼく、連載されてたときの雑誌のページを切り抜いて
いまでもそれを持ってるんですよ。
横山剣さん、もう、かっこいいです。
キャロルとかクールスとかの流れがぼくは大好きで、
クールスのメンバーだったころから横山さんのファンで、
ライブをみにいったとき一度だけスタッフかたの紹介で
握手をしていただいたんですが、とても気さくなかたで‥‥
うーん、どうしても熱くなっちゃいますね(笑)。
この本には、ぼくのあこがれがぜんぶ詰まってます。
70年代の、横浜だったり、原宿だったり、
昔あったレオンっていう有名な喫茶店の前に
クールスのメンバーが乗っていた
ハーレーダビッドソンがズラッと並んでたとか‥‥。
福岡に住んでいたぼくのあこがれが、ぜんぶ詰まってる。
読みながら勝手に思うんですよ、
横山さんの趣味はぼくの趣味に近い! って(笑)。
もちろん横山さんのほうが知識はだんぜん深いんですよ。
でも、大好きなミュージシャンと好きなものが同じ
っていうのは、それだけでうれしいんですよねぇ。
読み返すたびに、ソウルフルになれる一冊です。

 
 
光石研さんの近況

数々の映画やテレビドラマでご活躍の、光石研さん。
「ほぼ日」乗組員も大好きな映画、
『めがね』では、物語の舞台となる南の海辺にある
飾らない宿「ハマダ」の主人・ユージ役を演じています。



そんな光石さんに、映画のみどころをうかがってみました。

「ちゃんと朝起きて、朝ごはんを食べて、
 運動をして、またお昼を食べて‥‥。
 そういう大切なことを忘れているんじゃないですか?
 と、いまの人たちにゆっくり問いかけているような‥‥
 そんな映画じゃないかと、ぼくは勝手に思っています。
 これといった事件はなにも起こらず、
 なにも波風の立たない映画なんですけれど。
 なにしろ食べものがほんとにおいしそうなんですよ。
 というか、おいしかったんです、すばらしく。
 映画のなかでは宿の主人であるぼくが
 その料理をつくっているわけですが、
 実際にはぼく、ぜんぜん料理ができなくて(笑)。
 撮影中はフードスタイリストの飯島奈美さんに、
 ずっととなりにいてもらいました。
 ともかく、とてもリラックスできる映画だと思います。
 手足をのばすように、ゆったりと観ていただけると
 うれしいですね」

光石研さんが出演される『めがね』は、
9月22日(土)から全国ロードショーがはじまります。
上映される劇場の情報など、
詳しくは、公式サイトをぜひご覧ください!

 
2007-09-11-TUE
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