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── |
『ハウルの動く城』のDVDの
プロモーションを考えるにあたって、
とっかかりはどこだったんでしょう? |
糸井 |
え〜っと。
ぼくは、おおざっぱなコンセプトを
最初にたてたいタイプなんで、まず、
「ひとっつもウソをつかない」っていうことで
宣伝をしたいなと思ったんですよ。 |
── |
「ウソをつかない」? |
糸井 |
うん。たとえば、『ハウルの動く城』って、
興業収入みたいなものからいうと、
たしか『もののけ姫』の
ちょっと上くらいなんです。
ってことは、ふつうに考えて、
すっごくあたった映画なんですよ。
でも、そういう印象がないでしょう?
『千と千尋の神隠し』に比べて、
興行収入的に下がったという
言い方をされてるのは、
ブランドが上がってしまったことの
反作用がきているんだと思うんだけど、
まずは、『ハウルの動く城』が
当たらなかったというのは
「ウソでしょ」って思った。 |
── |
そういうことも含めて、
「ウソをつかない」宣伝にしたいと。 |
糸井 |
そうですね。
それは、映画のよさを伝えるときも同じで、
「この映画はこんなふうにすばらしいんです」
って言えば言うほど、
ウソは自然に混じっちゃうんですよ。
でも、できればそういうものも排除して、
「額面どおりに受け取ったら
買いたくなっちゃった」
というのが理想の宣伝だと思ったんです。
そのことをずっと考えているうちに、
「台本のないインタビューでつくるテレビCM」
というイメージが出てきた。
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── |
養老孟司さん、美輪明宏さん、
そして木村拓哉さんというメンバーが
『ハウル』についてただしゃべるという、
ちょっと、すごいCMですけれど。 |
糸井 |
観ていただければわかると思いますけど、
これ、ほんとうに台本がまったくないんです。
ただしゃべってもらったんです。
あの、たとえは悪いんですけど、
「台本はあるんだけど、
ないかのようにしゃべる」という
ドキュメンタリー風のCMって
あるじゃないですか。
あれって、不気味だと思うんですよ。
まあ、ぼくなんかもたまに
やらされたりするんだけど(笑)、
やったあとに、どっと疲れたりするんです。
だから、しゃべってくれた人が、
「え? これでCMになるんですか?」
っていうくらい、
決まり事のないCMにしたかったんです。
なんなら、平気で悪口言ってもいいくらいの。
たとえば、CMのなかで、
美輪さんが木村さんに向かって
「あなた、トトロに似てるわ」って、
なんの脈絡もなく言うところがあるんですよ。 |
── |
それは、実際のテレビCMに
使われてるんですか? |
糸井 |
使いました(笑)。
そんなの、『ハウル』のよさを伝えるために
効果があるかっていったら
わかりゃしないんですよ。
だって、『トトロ』ですからね、
『ハウル』のCMなのに(笑)。
でも、おもしろいじゃないですか。
なんていうか、人がリラックスして、
ウソのないほんとうのことを言ってるとき
特有の会話のおもしろさって、
やっぱり、あるんですよ。
そういうことも考慮したうえで、
おもしろいことを言ってくれる人を
あらかじめ集めたわけです。
これは「ほぼ日」で学んだ手法ですけどね、
キャスティングが整った時点で
必ずおもしろくなるものがあるんです。 |
── |
キャストをあの3人にした
経緯を教えてください。 |
糸井 |
まずは、木村拓哉さんですよね。
彼は、ハウルの声優をやっているわけですけど、
それとはべつに、ぼくは、
木村さんのふだんのおもしろさが
出るようにしたいなと思ってたんです。
カメラが回ってるうちに、
ふだんの木村さんのよさが
つい出ちゃう、っていう感じにしたかった。
正攻法のインタビューじゃなくて、
友だちどうしが語るように
『ハウル』を語る木村さんを見せたかったんです。
でも、キャストを木村さんひとりにしたら、
聞き手をぼくがやんなきゃいけないと思った。
そりゃちょっと荷が重いな、と思って(笑)。
まあ、荷が重いっていう以上に、
ぼくが聞き手をやると、
きっと木村さんに義務感が出ちゃうんですよ。
だからね、もっとほったらかしにしないと、
おもしろくなんないと思った。
予定通りのものができあがるよりも、
もっと危ないことがしたかったんです。
で、思いついたのが、
養老孟司さんと美輪明宏さん。
いまだから言いますけど、
企画当初は谷川俊太郎さんも考えてたんです。 |
── |
すごいメンバーですねえ。 |
糸井 |
全員、ウソがつけないタイプの人なんです。
そういう人ばっかを集めて
ほったらかしにしておこう、と。
で、木村さんに聞き役というか、
妖怪変化みたいな人たちの相手を
してもらおうと思って(笑)。
ふだん、取材されるばっかりの木村さんに
聞き役のマイクを持たせて、
養老さんと美輪さんに取材するうちに、
木村さん自身の声が混じる。
そういうふうになったらおもしろいな、
くらいのイメージを持って、
あとは、もう、本番任せです。
ふだん、加工されたものばかりが
流れているテレビのなかに、
ほんとうのことだけを言ってる場面が
急に現れたら、観てる人に
明らかに違いがわかるはずですから。
(続きます!)
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2005-10-04-TUE |