彼方からの手紙
 




<『ヒマの過ごし方』を聞きながら>

糸井

ああー、いいなぁ‥‥。
あのね、この、『ヒマの過ごし方』なんてね、
ぼくが、いつも言ってることは、
もう、これだよ!
ボーズ はははははは。
糸井 こんなこと、ずーっと言ってるわけだよ。
ヒマの過ごし方、だよ。
ボーズ ヒマの過ごし方ですね(笑)。
そういう曲。
これはですね、別役実さんのことを、
3人とも、すごい好きな時期があって、
別役さんっぽい言葉使いとか、
クールなトーンで、話が進みつつ、
どっかから急にデタラメなことになる、
みたいな感じをすごいやりたくて。
糸井 ほー。
ボーズ 音とか、トーンとか、すごく普通なのに、
まじめに聴いてると、
くっだらねぇこと言ってるなこの人たち、
みたいなふうに聞こえるようなものを、
つくりたかったんですよね。
糸井 ああ、そうですか。
けどさ、なんていうんだろう、
くだらないというよりも、
ぜんぜん、ぼくからしたら、
言ってることはすごく正論。
ボーズ そう、正論では、ある(笑)。
糸井 いまじゃスリランカと言ってますけどね。
ボーズ セイロン、ですよね。
糸井 はい。セイロン。
あのさ、こういう歌詞を書いていくときって
頭から順番に行くんですか。
ボーズ 歌詞は、こういうのに関しては
頭の1文字目から、最後まで書きますね。
だから、1番を書いてる時点では、
3番でなにを言うかなんて、
誰もたぶん思いついてなくて。
糸井 おもしろーい。
ボーズ 1番を書き終えて、
どういう話になってくんだろう、これ?
って考えながら、3日後ぐらいに
2番の頭を書き始める、みたいな(笑)。
糸井 だから、後ろの方で
お話変わったような感じがしたり。
ちょっと苦心した感じがあったり。
ボーズ そうですね、はい。
糸井 このへんのセンスが、やっぱりぼくは、
ちょっと自分が近いものを感じて(笑)。
ボーズ ええ、ええ。
糸井 1番、2番、3番、4番みたいなときに、
後ろのほうが、ちがってたほうが
やっぱりうれしいんですよ。
ボーズ うれしいです、うれしいです。
それは自分たちで書いてても、
そういうものを見てみたいっていう
他人事みたいな気持ちがある。
だから、1番を書いてる時点では
3番の気持ちには、なれてないんですよ。
糸井 うん。
糸井 で、3人でだんだん、
おっ、わかってきた、わかってきた、
ってなってきたり、かと思うと、
途中で、ぜんぜんわかんなくなった、
っていう瞬間もすごいあったりして。
糸井 いいですねぇ。
ボーズ この曲でいうと、盛り上がって、
いちばんわくわくしてくるのは、
「万里の長城」と「巨乳」を
並べたりしてるときなんですよ。
糸井 そう、ここ、ピークですよね。
ボーズ そう。
これに到達するために書き出してる
とも言える感じで。
糸井 そうですね。
「巨乳」ひとつが変えるんですよね。
ボーズ そうなんです、そうなんです。
「巨乳」が入るべくして入ったともいえるし、
「巨乳」が出てほんとに助かったともいえる。
糸井 この2文字が、このなんていうの、
この歌の、へそ?
ボーズ ははははは。そうなんですよね。
糸井 ‥「巨乳」がヘソ。乳なのに、ヘソ。
ボーズ しかも、この淡々とした、
別役実さんみたいなトーンで言われてると、
「巨乳」に気づかない人もいると思うんですよ。
それはそれで狙いなんですよね。
糸井 ふふふふふ。
ボーズ なんか大きいこと言い出したな、
っていう一連のなかに「巨乳」が
そっと入ってるっていうのが好きですね。
糸井 うん。その加減でちゃんと伝わってますよ。
ボーズ ほんとですか(笑)。
糸井 あとね、「巨乳」1個だけ、
っていうのもすごいなぁと思う。
ボーズ はははははは。
なんかひとつにしたいんですよね。
糸井 そこはやっぱりすごみですよ。
だってね、「巨乳」を思いついたら
もう1個入れちゃうと思うよ。
「巨乳」の続きというか、発展を。
ボーズ はははは。うん。そうですね。
ぼくらね、よくこのパターンはやるんですけど、
溶け込ませるために、
4つとか、8個の中に1個、
っていうくらいにするんですよ。
それ、好きなバランスなんですよね。3人が。
糸井 だから、それが、
スチャダラパーっていう個性。
ボーズ そうそうそう。
3人の、気持ちよさの好みなんですね。
とくにシンコがこういう、
微妙な加減が好きなんですよ。
糸井 (笑)
ボーズ もう1個入れようを、
やめようとするんです、だいたい。
糸井 よろしいですねぇ(笑)。
で、もうちょい先へ進めると、
話の流れが一段落したところに、
ストーリーのとどめみたいにして
海の水の話が入るでしょう?
これがね、ビューティフルなんだよねぇ。
「また かつて海の塩分を
 1パーセント上げようと
 何千トンもの塩をあつめた
 男がいたとかいないとか」
ボーズ ふはははは。
糸井 だってね、あのね、
「いたとかいないとか」って言うんだったらね、
その前の「1パーセント」とか
「何千トン」とか‥‥。
ボーズ そうなんですよ、いらないんです(笑)。
糸井 ここがね、オレね‥‥
自分の兄弟じゃないかなって。
ボーズ ははははははは!
糸井 なぜスチャダラパーが
好きかっていうことですよ。
ボーズ そういうことに気づいてくれるのは、
ほんとにうれしいですね。
糸井 しかも、そのブロックの最後は、
「いた だろう たぶん な!!」だからね。
だから、けっきょくもう、
マッサージのし合いみたいなもので。
ボーズ ああー(笑)。
糸井 しかし、1曲目をちょっと聞いただけで
こんだけ語ることがあるんだからね。
すごいねぇ、やっぱり‥‥。
この『ヒマの過ごし方』っていうのは、
アルバムのテーマというか。
ボーズ うん、そうですね。
これと、『彼方からの手紙』っていう
最後の曲が‥‥。
糸井 はい、はい、はい、はい。
また最後に語りますけれども。
ボーズ うん。その2曲が
すごく自分たちの中でも、テーマというか。
言いたいことは、ほんとにそれですね。
糸井 うん。
(つづきます)

 

2010-08-16-MON



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