主婦と科学。 家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所 |
研究レポート40 血液型性格学、そこに科学はあるのか? 後編 ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。 さて、前回は「血液型性格学」の前編でした。 血液型と性格に関係がありそうに見えるのはなぜ? と統計のカラクリのさわりをご紹介しました。 今回の後編は逆に「ひょっとして、関係ある?」 ってお話にしてみたいと思いますね。 血液型って実際のところ何さ?ってことは 多くの人があまり気にしていないかもしれません。 それもそーです、必要ないですもの。 でも今回のお話を進めるにあたって まずは血液型を知るために大事な 「抗原抗体反応」のご説明からはじめます〜。
抗原抗体反応とは、生体が自分の身体を守るために 「異物を排除する」システムです。 体内にヨソ物(これを「抗原」といいます)が入ると 身体が「敵だ敵だ」と判断します。 敵を察知した体内は 抗原を攻撃する防衛軍「抗体」を作り出すのです。 そして、この防衛軍である抗体が 敵である抗原と反応して(抗原抗体反応) 異物を排除します。 そして、再び「同じ敵」が進入したら 体内は速やかに準備された抗体防衛軍によって 対処できるというわけです。 (免疫ができた、という状態) このとき、すごいのは敵ごとにあった形の 抗体を作るということ。 オーダーメイド防衛軍、なんですね〜。 これらの抗原や抗体はもちろん、イメージですが、 こんな感じに「カギ」と「カギ穴」のような関係のものを 作ってしまうのです。 ちなみに、予防接種もこのシステムを使っています。 弱くした「毒」をあらかじめ体内に入れて 抗体を作っておくことで 本格的な「毒」に備えるというもの。 また、本来「異物から身を守る」 ためのシステムである抗原抗体反応が 過剰に反応してしまった例が 「アレルギー症状」になるのです。 一見「血液型」の話から 逸れてしまったようですが 実はこの「A」「B」などの 血液型を作る血液型物質は まさに「抗原」なのです! そして、この血液型物質は 血液の赤血球上だけにあるのではありません。 だ液・胃液などあらゆる体液の中にも存在します。 犯罪捜査でもだ液から血液型わかっちゃいますものね。 最初に発見されたのが血液中だったので 「血液型」と呼んでいるのです。 うーん、確かにだ液型・胃液型って名前だったら ここまで流行らなかったかも。 体液だけじゃなく、血液型物質は 臓器や組織の表面にびっしりと生えています。 だから、このような「血液型物質」は 「自己と他者を区別する」抗原の旗印! といえるわけです。
さてさて、4種類の血液型はどのように違うのでしょうか。
てな具合になっております。 ABO式と呼ばれる血液型物質は 「糖のつながったもの」でできています。 このときO型の糖鎖が基本形となり それにA用の飾りがくっついたものがA型糖鎖。 B用の飾りがくっついたものがB型糖鎖となるのです。 ここで大事なのが「血清中にある抗体」です。 なんか「抗」「抗」と頭がおかしくなりそうですが 「抗A抗体」というのは 「A型糖鎖に『抗』する抗体」ってイミ。 表を見ると、A型の血液型には「抗B抗体」がありますね。 A型の血液にB型の血液を混ぜると 「B型糖鎖(抗原)」と「抗B抗体」が 「抗原抗体反応」してしまって 異物排除システムが働いてしまいます。 だから、輸血は厳禁になるわけです。 このように生物が「旗印」を持っているのは 自分と敵とを区別するため、です。 でも、細菌などの敵もさるもの! 進化して血液型物質と似た「旗印」を持って扮装し 生物への進入を試みるのです。おぬしやるな。 実際、ある種のサルモネラ菌はO型物質を 結核菌はB型物質を、肺炎双球菌はA型物質を それぞれの表面に付けていることがあるとか。 というわけで、血液型と「病気」には 何らかの関係があってもおかしくないと思えてきません? 実際、疾患と血液型との関係は いろいろ研究されてるのです。 例えば「O型は胃潰瘍になりやすい?」 という説があります。 胃潰瘍や胃ガンはヘリコバクター・ピロリという バクテリアが原因の一つです。 これは、胃壁にもぐりこむ際に O型糖鎖を足がかりにしているとか。 従って、O型糖鎖しか持たないO型の人間は 胃潰瘍などになりやすい、というのです。 (国立遺伝学研究所 斎藤成也博士らの研究) 他にも、「B型は結核に弱い?」とか 「A型はガンになりやすい?」とかの結果が出ています。 ただ、これらは今のところ統計手法に 疑わしい点があったりなど あくまで「?」の域を出ていないとか。
そして、こんな面白い話にでくわしました。 「カキにあたる人とあたらない人がいるのは 血液型が関係している?」というものです。 カキをこよなく愛し、カキシーズンを心待ちにしている 研究員Aとしては見逃せない研究です! なんと意義深いのだ。 カキにあたるのは「ノロウィルス」が原因なのですが このノロウィルスは血液型物質を 足がかりとして発症するのだそう。 そして、ノロウィルスはその種類によって 足がかりとして利用する血液型物質と 利用しないものがあるのだとか。 というわけで、 「同じカキを食べたのにあたる人と あたらない人がいるのは血液型に関連が??」 ということなのです。 (参考サイト) 本文で「他の多くの実験をしなければ 最終的な結論は出せない」と断っていますが 実に意味ある研究であるとカキ党研究員Aは考えます。 研究員Aが今後カキで苦しむという 悲劇に遭わないためにも (好物にあたるなんて悲劇以外の何物でもない!) 今後の展開を大いに期待しております。
このような血液型と病気の関係から 「ある特定の血液型がなりやすい病気がある。 その病気との関係から性格も形成されたのでは?」 とのユニークな説を ご存じ竹内久美子女史が「小さな悪魔の背中の窪み」 で紹介しています。 例えば、病気に強いO型だからこそ 病気を恐れず人と交わる「社交的」な性格となった、とか。 病気に弱いA型だから、慎重な性格になった、とか。 この大胆な仮説は当然のことながら論議を呼びました。 確かに、「血液型→病気」の関係は証明できたとしても 「病気→性格」の関係を示すのは難しい。 そして、それが「血液型→性格」と繋がるとも限らない。 でも! ニヤニヤしながら「ほんとかな」と 楽しめる面白い本だとは思います。 そもそも、研究員Aは 「これって科学があるかな?」 「単なる偶然かな?」 の狭間にある話がだーいすきです。 「出産は低気圧の日や夜間に多い?」とか 「授乳中は甘党になるか?」とか。 「どうなんだろ?関係あるんだろうか?」と 「なんちゃって科学」を楽しむ分には面白いんですよね〜。 科学って科学者だけのものではありませんもの〜。 と、シロウト主婦が無責任な立場から いい加減なことを言ってみる次第です。勝手なもんだ。 でもさすがに、テレビ番組で取り上げるような 血液型の「実験」はこんな研究員Aでも 「ツッコミどころ」満載です。 「この○型の人のグループって 目的にあった人を揃えたんじゃないのお」とか。 「一組のカップルだけを取り上げて 相性をどうこういうなあ」とか。 あーこれも天の邪鬼B型だからですか? でも、誠意のある、きちんとした研究のもとに 「血液型性格学には科学があるらしい」ってことが 将来わかったら面白いかも〜と期待しております。 結局「なにもない」って結果が でるかもしれないんですけどね。 とにかく、「血液型性格学」には科学がない! と言い切るの「も」非科学的です。 マイナスイオンの話と同じく。 そこに科学が「ない」可能性は ゼロとは言い切れないのです (ああ、わかりにくい日本語〜)。 イイカゲンな検証で 「血液型と性格の関係は科学的根拠がある」 と騒ぐのも、もちろんよろしくありませんが。 研究員Aのまわりの科学者にB型が多いかも? って話もシロクロつけずに ちょっと楽しんでみようと思うのでした。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 参考サイト 生命誌研究館 ひろしまの保健と福祉 Glycoforum 関西医科大学・法医学講座・講義ノート「血液型」 参考文献 「血液型と輸血検査(第2版)」大久保康人 医歯薬出版 「小さな悪魔の背中の窪み」竹内久美子 新潮文庫 |
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2004-07-23-FRI
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