山下 |
‥‥こ、こんなに近くで見るのは初めてです。
なんという種類なのでしょう?
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木村 |
ヨツユビハリネズミという種類で、
アフリカの方に棲息しています。
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山下 |
そうですか‥‥。
いやもう、なんといいますか、失礼ながら、
予想をはるかに越える愛くるしさです。
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木村太先生(既婚)のお仕事は、獣医さん。
東京都下の小金井市で
「みなみ小金井動物病院」という医院を
奥様(獣医さん)と一緒に開かれています。
身長180cm(目測)、趣味・運動(推測)。
ご誠実そうな笑顔がとても凛々しく頼もしい、
動物のお医者さまです。 |
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山下 |
意外と、おとなしいのですね。
そんなふうに素手で持てるとは
思いませんでした。
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木村 |
性格には個体差があるんですよ。
ハーマイは、かなり穏やかなタイプですね。
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山下 |
え? ハーマイ?
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木村 |
名前です、この子の。ハーマイオニー。
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山下 |
あ、ハーマイオニーちゃん。
ん? それってハリーポッターに出てくる
女の子の名前ですよね?
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木村 |
そう(笑)、ハリネズミたちにはみんな
ハリーポッター関連の名前をつけてるんです。
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山下 |
ああ、なるほど! 針があるから!!
針ポッターですね!
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木村 |
ええと、このコは
(別のケージに手を入れる)、
グリフィンドールといいます。
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山下 |
わあ、すごい! 丸まってます!
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木村 |
10月に生まれたばかりです。
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山下 |
かっわいいなあ‥‥。
かわいいのだけれども、抱きしめられない。
この、もどかしさがたまらないです。
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木村 |
そうそう、そうですね、
ハリネズミの魅力はまさにそれですよね、
ほおずりしたくてもできない‥‥。
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山下 |
‥‥ちょっと、なでてみていいでしょうか?
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木村 |
ええ、どうぞ、そっとなら大丈夫です。
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山下 |
で、では(そおっと)‥‥。
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山下 |
‥‥‥(手を引っ込め)か、感激です。
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木村 |
もう一匹いるんですが、出します?
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山下 |
はい、お願いします!
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木村 |
わかりました。(また別のケージに手を)
このコは気が荒いので‥‥よいしょ。
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山下 |
うわあ! これもまた丸い!
色もひときわ濃いです。
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木村 |
スネイプといいます。
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スネイプ |
しゅー、しゅー。
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山下 |
あ、スネイプ、しゅーしゅーいってます!
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木村 |
威嚇の鳴き声ですね。
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山下 |
すごいなあ‥‥。
‥‥ところで木村先生、先生はなぜ
ハリネズミを飼おうと思われたのですか?
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木村 |
あ、きっかけですか。ええと、
そもそものきっかけはですね、友人に‥‥
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スネイプ |
しゅー、しゅー。
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木村 |
‥‥これ、もどしてもよろしいでしょうか。
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山下 |
あ、すみません気がつかなくて。
はい、そうしてあげてください。
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木村 |
(ケージにもどす)よいしょ。
‥‥ええと、きっかけはですね、
友人に一匹ゆずってもらったのが最初です。
で、繁殖に挑戦してみようと思いまして、
もう一匹飼ってみたら、これが思いのほか
簡単にどんどん増えましてね。
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山下 |
え? 赤ちゃん、生んだんですか。
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木村 |
はい、何匹も。
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山下 |
いるんですか? ここに。
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木村 |
いや、みんな里子に出したので。
あ、でも画像がありますよ。見ます?
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山下 |
は、はい! ぜひ見せてください!
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木村先生はその場でノートブックを開くと、
数枚の画像を僕に見せてくださいました。 |
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木村 |
これは生後2日目ですね。
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山下 |
す、すごい!
なんだか笑ってるみたいです!
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木村 |
こっちは泣いているみたいでしょ。
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山下 |
ほんとだあ。「えーんえーん」。
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木村 |
はははは。
横から見るとこんな感じです。
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山下 |
‥‥な、なんでしょうかこれは。
大昔の、カンブリア紀の生物のような‥‥。
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木村 |
このときは5匹生まれました。
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山下 |
ひゃあー。きちんと針もはえて‥‥。
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木村 |
針は生まれて1分後にはえてくるんですよ。
最初はつるつるで生まれてくるんです、
産道にひっかからないように。
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山下 |
へええええええ。
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木村 |
それとほら、哺乳類ですから、
こういうこともちゃんとするんです。
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山下 |
‥‥お、おっぱい、ですね。
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木村 |
ええ、それでこのくらいまで育ちまして‥‥
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木村 |
みんな里子に出ていったわけです。
これはもらわれていく前の記念写真ですね。
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山下 |
わあ。あどけない顔で、きちんと並んで‥‥。
‥‥ん? この記念写真の、
この奥に写っているのは、サボテンですか?
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木村 |
ええ、以前から好きなんですよサボテン。
ほらそこ、待ち合い室にもありますでしょ。
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山下 |
‥‥そうか、なるほどお。
木村先生は、丸くてトゲのあるものに
かわいさを感じるわけですね。
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木村 |
うーん、やはり、そうなんですかねえ。
自分でもそうかとは思うのですが‥‥。
でもですね、栗のイガ、ありますよね?
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山下 |
はい、ありますね、丸くてトゲトゲの。
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木村 |
あれにはべつに何も感じないのですよ。
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山下 |
そうなんですか‥‥。
じゃあ、ウニは? ウニはどうですか?
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木村 |
ウニ‥‥。
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山下 |
はい、ウニ。
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木村 |
‥‥‥‥‥‥‥‥ときめかないですねえ。
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山下 |
ああ。
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木村 |
食べたいと思いました。
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山下 |
‥‥そうですか。
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木村 |
すみません、はっきりとした規則性があれば
もっと取材が盛り上がるのでしょうが‥‥。
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山下 |
いえいえそんな、とんでもないです。
それより木村先生、
最後にひとつお願いがあるのですが‥‥。
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木村 |
はい、なんでしょう?
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山下 |
‥‥その、ハリネズミをですね、
持たせてはいただけないでしょうか。
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木村 |
あ、いいですよ。
じゃあ、このスネイプを‥‥。
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スネイプ |
しゅー。
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山下 |
ハーマイオニーでお願いします!
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木村 |
あ、ハーマイがいいですか。
わかりました。‥‥さあ、どうぞ。
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山下 |
は、はい‥‥‥‥(ケージに手を入れる)。
‥‥‥‥‥‥も、持った!! 持ちました!
すみません先生、両手がふさがっているので
写真を、写真をお願いします!
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木村 |
わかりました。‥‥‥‥よし、撮りましたよ。
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山下 |
ありがとうございます‥‥ああ。
‥‥あの先生、もうちょっとのあいだ、
ハーマイを持っていてもいいでしょうか。
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木村 |
どうぞどうぞ。
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山下 |
ああ、こんな手触り、うまれて初めてです。
おなかのほうはやわらかくて‥‥‥‥。
‥‥あれ? あ、あ、あ! せ、先生!
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木村 |
なんでしょう。
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山下 |
ハーマイが、ハーマイが僕の指をなめます!
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木村 |
よし、それも撮りましょう。
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山下 |
‥‥わあああああ、まだなめてますよ。
かわいいなあ‥‥。
もうちょっと、もうちょっとだけ、
こうしていてもいいですか。
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木村 |
ええ、どうぞどうぞ(笑)。
山下さんを気に入ったみたいですね。
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山下 |
(笑)そうみたいですねえ‥‥。
ん? ん? んん? ‥‥‥‥いっ!!
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木村 |
どうしました?
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山下 |
いや、なんでもありませ‥‥痛っ!!
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木村 |
ちょっと見せてください。
‥‥まずいです、それは本気かじりです。
はやく下に、下においてください。
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山下 |
(ハーマイを下におく)‥‥‥‥‥‥。
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木村 |
‥‥大丈夫ですか?
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山下 |
だ、大丈夫です‥‥。
ただ、歯形がくっきりついてしまいました。
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木村 |
ああ、ほんとうだ‥‥。
でもケガというほどじゃなくてよかったです。
どうします? それも写真、撮ります?
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山下 |
そうですね、せっかく、くっきりですものね。
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山下 |
‥‥すばらしい体験ができました。
本日はほんとうにありがとうございました。
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木村 |
いえいえ、こちらこそたのしかったです。
おい(ハーマイに)、だめじゃないか、
本気かじりをしちゃ。
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