21世紀の
向田邦子をつくろう。

■「久世塾おぼゑがき」54号
女、29歳がけっぷち!?


1.「確実に婚期は遅れる」
2.「恋人とは長続きしない」
3.「お尻の形が悪くなる」
4.「吐き続ける毎日もある」
5.「人間不信になる」
その理由は、
1.『出会いはあっても、愛を育む時間がないから』
2.『仕事が続くと時間の管理がムチャクチャになるので
  デートの時間さえ約束できないから』
3.『長時間の座り仕事だから』
4.『締め切りとプレッシャーで、体力的にも精神的にも
  キツイ毎日だから』
5.『いろんな人が違うことを言うので、
  誰を信用していいのか分からなくなるから』
ここでひと呼吸おいて、
「それでもあなたは脚本家になりたいですか?」
と、青柳祐美子先生は、
脚本家を目指す塾生たちに言い放った。

そして、
「女、29歳がけっぷち。
 私もこのまま脚本家を続けていっていいのかな?と
 疑問に思うこともある」とのこと。
「とにかく30までは突っ走る!」と決めて、
しゃにむに仕事に打ち込んできた青柳さん。
でも時折、仕事を始めた23歳からの6年間を思い返して、
「私の青春を返して!」と叫びたくなるときもあるらしい。

でも現在脚本家を目指している塾生の中には、
「そんな青春が送りたい(送りたかった)!」
と思っている人も多いのではないだろうか。
青柳さんも、「それでもやはり“脚本家”という仕事には、
他では得難い充足感がある」と言っているし、
やっぱり脚本家稼業は、
「一度やったらやめられねぇ」商売なんだろうな。

とにかく向こうっ気が強く、
サッパリした印象の青柳さん。
塾生にも「質問があったらいつでも
メールで送ってください」と、
なんと自分のアドレスを黒板に公開。
おいおい、大丈夫かいな?と心配して見ていると、
「でも変なメールが一通でも来たら、
 すぐにアドレスを変えますから」とひとことクギをさす。
そして1分も経たない内に、
「みんなメモした?じゃあ消すよ!」と、
ササッと消しちゃいました。
しまった!メモできなかった……。

ところで皆さんは、今年の春にNHKで放映された
『ただいま』というドラマを憶えているでしょうか。
「だんじり祭り」で有名な、
大阪の岸和田を舞台にしたドラマで、
石田ひかりや加藤雅也、藤竜也などが出ていました。
僕はこのドラマが大好きで、
以前にも「とってもナチュラルな大阪弁を使ったドラマ」
としてここで紹介しましたが、
その際「うん、あれは自然で良かったね」というような
肯定派の意見と、
「あのドラマの大阪弁は正しくないです」という
否定派の意見の両方をメールで頂きました。

確かに昔ながらの
“正しい大阪弁”という観点からみると、
決して正確ではないのでしょう。
しかし僕からみると、
今の若者たち(だけとはいえない)が日常話す
“自然な大阪弁”がセリフに生きていました。
これは方言指導の人が相当デキル人なのか、
それとも脚本家もしくは演出家が関西の人なのか、だな。

そしてその脚本を書いたのが青柳祐美子さん。
これはぜひ直接聞かなければならない。
この日青柳さんは、渋滞に巻き込まれてしまい、
会場に入ったのが10分前。
講演会前に聞く時間はない。
こうなったら終わってからが勝負だ。
午後3時過ぎ、講演会終了。
しかし控え室に戻ってからも、
たいてい誰かと話していてなかなかタイミングが掴めない。

そうこうしている内に、
「じゃあそろそろ……」とお帰りタイムになる。
こうなったら帰り際しかない!
僕は一足早く廊下に出て、エレベーターの前で待つ。
ちょうどエレベーターの扉が開いたときに青柳さん到着。
どうぞ、といって同じエレベーターに
乗り込む僕(ちょっとストーカーっぽいな?)。

ここは3階、時間は1階までの数10秒。
よし、早口勝負だ!
「今日はどうもお疲れさまでした」と僕。
「こちらこそありがとうございました」と笑顔の青柳さん。
「ところで青柳さんに、
 ぜひとも聞かなければいけないことがあるんです」
「何でしょう?」(ちょっと怪訝な表情)
「実は前にNHKでやっていた『ただいま』という
 ドラマのことなんですが、あれは青柳さんですよね?」
「あぁ、はい、そうです」
「実は僕、あのドラマが大好きでして……」
と、ここでエレベーターは1階に到着。
出口まで10歩あまりしかない。
「特に出演者の皆さんの大阪弁、
 とても自然で良かったです」
「ありがとうございます」
「僕も実は大阪なんですけど、
 あれは方言指導の人がちゃんといるんですか?」

青柳さんはちょっと立ち停まって、
「えぇ、そういう人もいますし、
 あの時はキャストやスタッフにも
 関西人が多かったので……」
そしてひと呼吸置いた後、ちょっと微笑んで
「それにあの時は、ちょうど関西の人と
 付き合っていたのよ」と軽く言い添えられました。
なるほど!そうだったのか…。
「じゃ、失礼します」
そういって脚本家・青柳祐美子は、
夕方の池袋の人混みに消え去っていったのでした。
青柳さんって、イカすなぁ……(思いっきり死語だけど)。

さてここで話は変わりますが、
このコーナーの上にある紹介文は読みましたか?
『21世紀の向田邦子をつくろう』というタイトルの下、
「作家で演出家の久世光彦さんが〜」から始まる文章です
(読んでない人は今スグ読むこと!)。
その文章の最後の3行。
そこには「久世塾」から生まれた脚本を
ドラマとして制作し、
「ほぼ日」で放送すると書いてあります。

この「久世塾&ほぼ日/ネットドラマプロジェクト」
(仮称)が、いよいよ動き出します。
そこで、これからはこの『久世塾おぼゑがき』を
若干リニューアルし、
今までのような「久世塾リポート」と
新たな「ネットドラマ情報」の2本立てで
お送りしていきます。

特に「ネットドラマ」は、
読者の方の参加も念頭に置いた企画となる予定。
キーワードは、【18.35】です。
今後の展開に乞うご期待!

それでは。

文責 さとう

★久世塾正式サイトへのアクセスは
 http://www.kanox.co.jp/へ。

2000-08-02-WED

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