[黒柳]
「徹子の部屋」で、最近おもしろかったのはね、上地(雄輔)くん。羞恥心、知ってます?
[糸井]
はい、はい。
[黒柳]
あの人、おバカとかみんなに言われてるけども、すごい野球の選手だったんですってね。
横浜高校で松坂大輔さんと一緒で、あの人がキャッチャーで、松坂さんがピッチャー‥‥わたし、この頃、やっとこれがわかったからね(笑)。
[糸井]
投げるのがピッチャー、みたいなことがわかったんですね。
[黒柳]
そう。投げるのがピッチャーでいいんですよね?
そして、松坂さんは、彼のサインに対して首を横に振ったことがなかったんだって。
[糸井]
うんうんうん。
[黒柳]
だけど、一回だけ、彼がサインを出しているのに振らなかったことがあったんですって。
[糸井]
‥‥‥‥振ったことがあったんですよね。
[黒柳]
あ、そうそう、ええっと、いつも振らなかったんだけど、でも、一回だけ振った。
[糸井]
振った。
[黒柳]
そのとき、ホームランを打たれたんだそうです。
[糸井]
へぇええ。
[黒柳]
上地くんの言うこと聞いてれば大丈夫だったってわけです。
上地くんという人は、この、キャッチャーの仮面みたいなかぶりものの、細い隙間から、ですよ?
あの隙間から、全部見てたんです。
わたしね、キャッチャーはピッチャーにだけサインを出すのかと思ったら1塁にも、2塁にも、3塁にも、出してるんですってね。
[糸井]
守備位置、もっと右に行けよ、みたいなサインは出しますね。
[黒柳]
わたし、ぜんぜん知らなかった。
考えてみたら、キャッチャーって、古田さんとか、野村監督とか、頭のいい人しかやってないでしょう。
[糸井]
はい、はい。
[黒柳]
それを上地くんがやってたということは、そうとう頭がいいんだと思います。
だからあれは、世を忍ぶ仮の姿だなぁと思ってます。
[一同]
(笑)
[黒柳]
上地くんは、小学校は、すごくできたんだけど、中学に行って勉強できなくなったらしいです。
お母さんが
「がんばんなさい、わたしと一緒にやろう」
と、持ってきてくれたドリルに
「この表(ひょう)を元(もと)に 計算しなさい」
という問題があったんですって。それを上地くんは
「この麦(むぎ)を元(げん)に」
と読んだんですって。
「このむぎをげんに、けいさんしなさい」
って、そのとたん、お母さんが、フッ(笑)、
「いいわよ、もうやんなくて」
[一同]
(笑)
[糸井]
いいですね。
[黒柳]
上地くんは、九九もよく覚えられなかったんですって。
野球のことはどんなことでも覚えられるのに、不思議だった、とおっしゃってました。
わたしもできないからわかるんだけど、足し算、引き算は、なんとかなるんですよ。
でも、算数は割り算、掛け算が大事ですから九九ができないと、たいへんです。
九九=81 がわからないので、上地くんは9と9をずっと足していくんだって。
[糸井]
9を9回足すんですね。
[黒柳]
そうやって、ずーっと足すからすごい時間かかっちゃって(笑)。
笑ってるけど、フッ(笑)、わたしもそういう子どもだったから。
[糸井]
笑って、いま、息つぎしてましたね?
[一同]
(笑)
[黒柳]
あ、それでね、息つぎのことで言うとね。
[一同]
(笑)
[黒柳]
わたしはいま、あまりドラマには出てませんけど、昔、テレビドラマにいっぱい出ていたとき、外に出てよくロケーションをやったんですよ。
[糸井]
はい。
[黒柳]
外のロケーションは、ガァガァガァガァ、自動車が通ったり人がしゃべったりするから、音声がうまく録れないもんで、アフレコと言ってあとでスタジオに入って自分の口に合わせて台詞をしゃべって録音するんです。
これがわたし、全然、合わないの。
[一同]
(笑)
[黒柳]
みんなをよく見るとわかったんですけど、やっぱり、息してるところで合わせるのね。
わたしは、画面を見たところ、ぜんぜん息してないの。
[糸井]
‥‥ははははははは。
[黒柳]
おかしいって、自分でも思ってものすごくよーく聴いてみたらね、もう「ね」って言ってるときに、ですからいまも、吸ってるの。
ものすごく「ちょっと」で、いいんです。
息つぎがうまいために、自分でもわかんないくらいに吸ったり吐いたり吸ったり吐いたりしてる。
[一同]
(笑)
[黒柳]
だから、どんなに長いセリフでも、疲れないで言えるし、もうね、なんて言うんでしょうか、我ながらうまいの。
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