第7回
<会長への道・マジシャン編>
77年プロ・デビューの際、
僕らにはふたつの大きな夢がありました。
ひとつは、やはりラスベガスの舞台で大ウケすること。
もうひとつは日本奇術協会の会長になることでした。
ラスベガスへは1984年、
ランドマーク・ホテルのステージに立ち、
拙ない英語が逆に幸いして大爆笑をゲット出来ました。
夢は叶ったのです。
さて、問題はもう一方の夢、日本奇術協会会長への道。
結論から申しますと、まるですごろくのように、
休み、戻り、
現在はなんと「平会員」に甘んじているのです。
我々ナポレオンズが所属し、
会長の椅子を目指している(社)日本奇術協会には、
日本のほとんどのプロ・マジシャンが
協会員になっています。
歴史は古く、
発足からおよそ100年になろうとしています。
現在、所属マジシャンは約90名。
まずは準会員
(すぐに会員になれると思ったら大間違いです! )から
スタートして正会員(まぁ、平会員です)
幹部、相談役、監事、常任監事、理事、専務理事、
総務、参与、顧問、名誉顧問、
さぁもうちょい、副会長、
そうしてやっと「会長」へと辿りつくのです。
生半可な努力、苦労では掴めない、イバラの道なのです。
現在、我々ナポレオンズの二人は、ともに平会員のまま。
我々のはるか後輩
(専修大学マジック同好会の後輩でもある)の
ケン正木などは、
すでに専務理事の座まで昇りつめているというのに。
これには深い深いわけがあったのです。
十数年前に、あるテレビ局でタネあかし番組が
企画されました。
「マジックのタネ、大公開! 」
というようなタイトル通り、
マジシャンにとってはかなり刺激的な内容。
そこで我が日本奇術協会は、
「マジックのタネを明かすのは、
マジシャンの生活権を脅かすとともに、
マナー違反というべき愚行である! 」
と抗議したのです。
それ以後、タネ明かしは
明確にタブーになってしまったのです。
当時、順調に出世して理事になっていた我々でしたが、
ナポレオンズといえばタネを明かして笑いをとる芸風。
(それだけじゃないのですが、世間のイメージとして)
当然、風当りはきつくなって行きました。
そこへ、あのミスター・マリック事件です。
事情はあったにせよ、
我々はある月刊誌に
「マリックさんはマジシャンである」として
トリックの方法を掲載しました。
さぁ、これで万事窮す!
懲罰人事として、平会員への降格となったのです。
しばらくすると、ほとぼりも冷めたのか、
ボナ植木(ナポレオンズのリーダーです)だけでも
理事に戻したら、などという空気になって来ました。
そんな頃、なんとボナ植木はこともあろうに
協会の機関誌「ワンツースリー」に、
こんな記事を発表したのです。
「私の考えからいえば、
マジック歴何年なんていうのは何の意味ももたない、
おかしな表現なのだ。
マジック歴40年といっても、
その1/3は睡眠時間だ。
食事やトイレなんやかやで実質、
マジックに係わっていたのは数年、
いや数十時間だろう。
皆さんは、飛行機のパイロットの事を
考えてごらんなさい。
彼らは、飛行歴何年とは言わない。
実際に空を飛んだ<時間>で、
自分の経験を表しているのだ。
つまり、実践がものをいうのだ。
したがって、彼らが飛行時間1000時間というように
表すように、マジシャンもパフォーマンス時間
1000時間というように表現すべきなのだ。
実際に、観客に見せている本番の時間の蓄積だけが、
その人のキャリアになるべきで、
パイロットが教室での勉強や
シュミレーター訓練などをしても
実経験にならないように、
マジックの練習や研究を芸歴に入れてはいけないのだ。
こうして、自分のマジックの経験を自身で確認すれば、
偉そうなことを人に言わなくなるのだ。」
う〜ん! さすが我が相棒、お見事お見事!
などと喜んだのも束の間。
気持ち良いほど反感買いましたね、この正しきご意見は。
なんせ芸歴ウン十年を誇る方々ばかりなんです、
我が協会は。
というわけで、ますます会長の椅子は
遠ざかるのでありました。
さて、めげずに「タネ明かし」です。
バラバラの3ケタの数字を
書いてもらう。 (例)671
それを逆向きにした数字を −176
引く。 −−−−−
495
答えを逆向きにして足す +594
−−−−−
1089
つまり、この方法だとどんな3ケタでも
答えは1089か198の2種類なのです。
メモ用紙の表に1089、裏に198と
予め書いておけば、
見事な予言マジックの出来上がり
です!
さて、ナポレオンズのホーム・ページはご存知ですか?
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/tvland/
tvland@bekkoame.ne.jp
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