ライフ・イズ・マジック 種ありの人生と、種なしの人生と。 |
『マジシャンの講演』 このところ、講演を依頼されることが多くなった。 講演であるから、ただマジックを見せる公演とは かなり違う。 講演時間はおよそ90分ほど、 そのうち60分は私のトークのみで進行していく。 「皆さん、こんにちわ。 本日の講師、有名マジシャンのナポレオンズです。 はいはい、 早々に淡白な拍手をありがとうございます。 ところで、 私がいつも不思議に思うことがあります。 それは、舞台なり高座なりに人が登場すると 拍手で迎えるという習慣です。 いったいいつの頃から、 手を叩いて人を迎えたりするように なったのでしょうか? 私なりにいろいろ調べはしたのですが、 未だ結論には至っていません。 ただ、 『こうではないかなぁ』 というような推測はしています。 以前から、指を動かすと 脳の活性化につながると言われています。 指だけでなく、手のひらには多くの ツボがあるとも言われています。 手のひらや指を刺激すると、 脳が活性化されるというのです。 皆さん、ちょっと手のひらをこすり合わせたり、 手を叩いてみてください。 どうでしょうか、確かに意識がはっきりするように 感じられるでしょう。 拍手をすることによって脳が活性化し、 様々な情報を記憶しやすくなる効果が あると思うのです。 そこで、 『拍手は人のためならず』。 つまり、拍手は舞台、 ステージに登場する人のためではなくて、 聞き手である皆さんのためになっていると思うのです。 登場人物を目にすると、拍手で迎えます。 すると、 皆さんの脳が活性化され、 私のありがたいお話が スムーズに脳に吸収されるという訳です。 ゆえに、皆さんの拍手は私のためではなく、 皆さんの脳のためなのです。 では、どのような拍手をすれば 脳の活性化につながるかと言えば、 先ほどのようなおざなりの拍手ではなく、 しっかりと音高く、リズム良くするのが より効果的と言えましょう。 今から、私がもう一度出直してきます。 私の姿が見えましたら、 どうか大きなしっかりした拍手で迎えてみてください。 私のためではなく、 皆さんの脳の活性化のためですからね」 私は大きな拍手のなか、 再びステージ中央の演台に立った。 「皆さん、やればできるのです。 どうか今後も、拍手はためらわず、 率先してやってみてください。 眠くなったら、とにかく拍手をしてみてください。 睡魔などたちまち消え去ってしまうでしょう」 そう熱弁を振るいながら ふとステージ袖を見ると、 出番を待ちくたびれた相方が大あくびをしていた。 |
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2009-09-27-SUN
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