magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『ダイエット・マジックの秘訣』


私はプロのマジシャンである。
ただ、プロ・マジシャンといっても
別に国家資格があるとか、
試験を通ったとかではない。

だから、自称プロ・マジシャンであると言った方が
正確かもしれない。

さて、自称プロ・マジシャンである私は、
北海道ツアーで美味しいものを食べ過ぎて
太ってしまった。

すると、体が浮くマジック、
人体浮遊術ができなくなった。
体が重くて浮かないのだ。

浮かない人体浮遊術は、ウケない。

そうなると、関係者から大きなブーイングが起き、
私はダイエットを余儀なくされてしまったのだ。

つくづく、私は肉体労働者なのだと思った。
これまで、浅はかにも
頭脳労働部門を担当していると思っていたが、
いやいや、頭脳労働はほんのちよいで、
頼るは肉体であったのだ。

そこでダイエットを決意し、まずは難しくなさそうな
『炭水化物、いつもの半分ダイエット』を始めた。

炭水化物を摂り過ぎないよう、
これまでの半分くらいにとどめることにしたのであった。

更に、体重を測ったり、
データを取ることも一切しなかった。

以前、ウォーキングで体重を減らそうと
1万歩歩いてデータを見たら、30g減と出ていて、
「おいおい、
 てことは3kg減らすには100万歩!」
めちゃガッカリした経験があったからだ。

テキトーな私には、テキトーな
『炭水化物、いつもの半分ダイエット』が
ピッタリだったようで、着実に痩せてきた。

ただ、秋田のきりたんぽ鍋、稲庭うどんを半分、
広島のお好み焼きも半分、長野の蕎麦も半分だけ
というのは寂しく、辛くもあった。

また、かつてはステーキ、マグロなどが
ご馳走だったのに、今じゃ茶碗に半分だけのごはんが
希少で美味しいご馳走だと感じる、
不思議な感覚も味わった。

あれこれ悩みつつのダイエットの結果、
人体浮遊術はほぼ全盛期の浮きを取り戻し、
袖で見ていた落語の師匠に、
「浮いてる、浮いてる。
 ブルブル足が震えてる、
 生まれたての羊じゃなくなったねぇ。
 いやぁ、けっこうけっこう、あっはっは」

という、ありがたい評価をいただいた。
私はついにプロの肉体労働型マジシャンに
返り咲いたのであった。
ふっふっふ、めでたし、めでたし。

ツイートするFacebookでシェアする

このページへの感想などは、メールの表題に
「マジックを読んで」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2016-11-13 -SUN
BACK
戻る