糸井 |
でも、俺、松本家はねぇ、意外とその代理店のシステムに
近いところにあるような気がするんですよ。
松本人志をボス的に呼んだりしてないじゃないですか。 |
松本 |
してないですねぇ。 |
糸井 |
あれはすごいと思うね。
で、松本人志のこと平気でほったらかしにしとくし、
コーヒー飲みたかったら、自分で取るじゃないですか。
あのシステムがものすごく後で効くと思うんだよ。
あれは効く。 |
松本 |
あ、そうですかねぇ。 |
糸井 |
そのかわり、こわいのは、へたすると、
2番手、3番手のやつが“殿様”になると思うんだよ。
で、そのなかで妙な上下関係ができて、
本当の松本はえばってないのに、2番目の人が、
「おーい、そんなんやったら松ちゃん怒るでぇ!」
っていう姿になったら、あぶない。 |
松本 |
いや……、糸井さんはすごいです。 |
糸井 |
そお? |
松本 |
(笑)そう思います。
というか、そうなりつつあります。
なるんですよねぇ。
これはどうなんでしょうねぇ。
だから、僕のやり方はまちがってるのかな? って
思うこともあるんですけどね。
もっと、えらそうにというか、
僕がもっと言ってもええんかなって
悩むこともあるんですよ。 |
糸井 |
わかる(笑)。 |
松本 |
怒るときはもっと怒らなアカンのやないかな
って思うときもあるんですけど。
でもこう来てしまったんでねぇ。
「最近、松本、えらい人に注意するようになったな」
となるのもねえ……。 |
糸井 |
今までも、小さい規模で言うと、
劇団とかぜんぶそうだったんですよ。
なるべくみんな平らにやろうぜ、って言っても、
その平ら同士のなかでのいさかいもあるし、
そのなかでの上下関係も、微妙にできるじゃない?
昔の小劇団はどうしたかっていうと、
たとえばの話、女の役者さんたちには、
座長が全部セックスするんですよ。ガマンして。
で、「みんなイイ子!」。
そういう苦労も聞いたことがある。
俺らの世界は、一緒に飲んだり、殴り合ったり……、
そんなことしてるヒマはないよね。
だから、その方法はダメなんですよ。
その方法で組織維持するだけでパンクするよね。
で、クリエイティブな時間がなくなる。
俺、ヒントはね、大きい意味で“宗教”だと思うんだよ。
で、「何さえ守ればいい」ということを
全員がわかってるチームがつくりたいんですよ。
あとは、金に走るやつがいてもいい。
エバりたいやつは、エバってもいい、となったときに、
「なんで?」って言ったら、
「何が幸せなの」というあたりの……宗教なんじゃないか。
そうすると「同じ宗教をもってたら、楽だよね」
ってとこに行っちゃうんで。
「みんな○○に入ろう!」って言ったら楽だよ。
でもそれはちがうんですよね。
微妙なバランスだと思うんですよ。
あとね、「辞めていい」っていうことが重要な気がする。
出入り自由。
ナンバー2がいなくなった、ごく自然に。
で、「新しいナンバー2でーす」っていうのが、たぶん、
次の会社のイメージかなあと思うんですよね。
会社というか組織の。 |
松本 |
いやあ、勉強になりますね。 |
糸井 |
俺も、いろいろ途中なのよ。
ウチのほうが松っちゃんとこよりビンボーだから、
もっとリアリズムなんだよ。
さっきだって、ほぼ日のスタッフに、
「夜起きてるとタクシー代かかるから、やめよう」
って言ってるんだもん、俺。
「これで30円もうかりました!」みたいな話がさあ、
深夜帰宅のタクシー代で消えたら、意味ないじゃん。 |
松本 |
(笑)。 |
糸井 |
まあそんなこと言うのもイヤだけど……、
でも「これでタクシー乗っちゃったらパアだよな」
ってわかる人と、一緒にいたいのよ。 |
松本 |
矢沢さんとこは、どうしてますかね。 |
糸井 |
永ちゃんとこは俺にも……、
こんど会ったらよく聞いてみようと思うんだけれど、
基本的に宗教ですよ、やっぱり。
永ちゃんが、絶対なんですよ。
で、ナンバー2にあたる人というのが、
すごく腰の低い人なんですよ(笑)。 |
松本 |
ほう……。 |
糸井 |
ぜんぜん偉くなりたくない人を、最初から呼んできたの。
おそらくね、俺、同じ立場だったら、
ほとんどの人が潰れると思うね。
Tさんっていう人なんだけれど、えらいと思うわ。
たとえば俺、今、綾戸智絵さんていうボーカリストの
ファンなんだけど、「ライヴ行きましょう!」って言ったら
Tさん、来てくれたんだけれど、
吉祥寺まで、バイクで来るのよ。
で、ライヴが終わって、俺は車で行ってたから、
「Tさん、帰る? どっちの道?」って言ったら、
「いや、僕、バイクなんで」って
ごく自然にバイクで帰るのよ。
外、雨ふってたのよ。
で、俺らは招待客なんだけど、ちゃんと予約してた客を、
ちゃんと座らせるんですよ。
綾戸さんのチームも手売りみたいなところから
スタートしてるから、お客さん大事にするところが
すごくしっかりしてるの。
で、俺らはドアのところに立って観てたんですよ。
ドアが閉じたり開いたりするたびにドアをよけて、
よーく観たいときにはドアの中に顔を入れたりして。
ウエイトレスが水割り運ぶときには、
「す、すいません」って通路つくりながら観たんだけれど、
その状態を「なんだよ!」って絶対に言わない人ですよ。
俺も言わないけれどTさんも言わないんですよ。
疲れたらただ自分でその場にしゃがむし、
Tさんのそういうところがカッコイイ。
でも、芸能って、それ許さないですよね。 |
松本 |
許さないですねえ……。
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