アルネの取材で糸井の写真を撮る大橋さん。 |
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写真も、インタビューも、文章も、 アルネは大橋さんがおひとりでつくる雑誌なのです。 |
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乗組員たちがはたらく様子も、ぱちり。 こうして大橋さんの取材はひとまず終了。 このあと、糸井とのおしゃべりがはじまりました。 |
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大橋 |
ありがとうございました。 |
糸井 |
あんなお話で大丈夫でしたか。 |
大橋 |
はい、もう、たのしかったです。 |
糸井 |
じゃあ、あとはまあ、 お菓子でも食べながらのんびり。 |
大橋 |
はい(笑)。 |
糸井 |
大橋さんの インタビューを受けながら思ったのは、 「大橋さん、いつかまた アルネをやりたくなっちゃうんじゃないかな」 っていうことで。 |
大橋 |
いや、それは(笑)。 問題は体力なんですよ。 ちょっとずつたいへんになってきて、 「これは責任もてないな」って 思うようになったんです。 アルネを年間購読してくださっている方も いらっしゃいますので。 |
糸井 |
体力については、ぼく自身もそうですね。 ちょっと無茶はできないぞ、になってます。 まあ、体力以外では よくなっている部分もたくさんあるんですけどね。 |
大橋 |
そうなんですよ。 べつにどこが悪いっていうわけじゃないんです。 でも、自分の健康に過信してたんですね。 階段なんかもすごく早くのぼりおりするし、 歩くのだって「早すぎる」って言われてました。 それがそうでもなくなってきて。 いつまでも体力があると思っちゃいけませんね。 |
糸井 |
アルネは終わるわけですけど、 大橋さんの、今の様子からすると、 今後も何かはつくられていくわけですよね? |
大橋 |
そうですね、 いろいろと考えてはいます。 果たしてそれが良いのかどうかは やってみないとわかんないんですけど。 |
糸井 |
そんなことばっかりですよね。 やってみないとわかんない。 で、いざやってみたら、思っていたこととは 違う成果が埋めてくれたりしますから。 それがおもしろいからやめられないんですよね。 |
大橋 |
ええ。 いつもそんな感じです。 |
糸井 |
何もやらないでいれば 「まあいいか」ってなっちゃいますから。 「いったいどうなるかはわかんないけど そこまで歩いて見渡してみる」っていうことは 億劫がらずにやったほうがいいんでしょうね。 |
大橋 |
糸井さんは やりたいことがたくさんありそうです。 |
糸井 |
「やりたいことがある」っていうよりは、 やりたくないことをさせられるのが ほんっとうに嫌いな人間なんです(笑)。 |
大橋 |
そうなんですか(笑)。 |
糸井 |
そっちが強いんです。 受け身なんです、わりと。 でも受け身なんだけど、 「おれが決める」っていう気持ちがあって。 それはずーっと、ちっちゃいころから そうだったのかもしれないですね。 |
大橋 |
それ、私にはない部分です。 |
糸井 |
そうですか。 まあ、女性と男性のちがいっていうのも あるんでしょうね。 やっぱりもろいんですよ、男の考えることって。 ぼくはそのもろさを逆に利用して、 「もろいんだからここは慎重に」とか、 「もろいんだからもっとスローに」とか、 ずいぶん女性の真似をしてやってますね。 |
大橋 |
もろいというよりは‥‥ 私は、すごい捨てばちなんです。 |
糸井 |
捨てばち(笑)。 |
大橋 |
平気。 「なくなっても平気」 みたいなところはすごくあるので、 それは逆に強いとこでもあるかなあ っていうのは自分でもちょっと思ってます。 |
糸井 |
それはあれですね、 ドキュメンタリーとかみてると 社長が倒産して自己破産するみたいなの あるじゃないですか。 危ないことをずーっと女房に隠して いろいろ頑張って、 ようやく新しい社長に仕事を受け渡して、 自己破産のことも終わって、 最後にやらなくちゃならないのは 「女房に言うこと」ってなって。 で、言ってみたら、 「だいたいわかってました」って(笑)。 |
大橋 |
あら(笑)。 |
糸井 |
その社長には離婚の覚悟もあったのに、 「わかってましたよ、 大丈夫ですよ、頑張りましょう」って。 だいたいの男女のパターンは、 こうなんじゃないでしょうか。 やっぱり深みが‥‥ 男って浅いなあと思うんですよ。 |
大橋 |
すごい、立派な奥さん。 |
糸井 |
ぜんぶがそうだとは言いませんけど、 「えらいこっちゃ!」ってなったときには だいたい女性の方が肝が据わってるんです。 |
大橋 |
「なるようになるわよ」って。 |
糸井 |
そうそう。 男の方は薄手の洋服でもいいから 着ようとするんですよ。ガーゼの服を。 ぼくもそうです。 服のサイズはちいさくするんですけど、 ちいさくするがゆえに意味が深まっちゃって‥‥。 うーん、だめですねえ(笑)。 生き物としての自信がないんでしょうね、 欠けた生物ですから、男は。 |
大橋 |
女性は生き物としてそういうものなんですよ。 |
糸井 |
ですよね、ゼロで安定できる。 |
大橋 |
「それはそれ」みたいな。 |
糸井 |
でも、 ガーゼの服のために男が「あがく」ことで 世界が変わっていくというのもあるわけで。 やっぱり生き物の論理にあってるんだなあ。 |
大橋 |
なるほど、そうですねえ。 |
糸井 |
そういえば大橋さん、 南の島はどうなったんですか。 (※大橋さんは与論島に移住する予定でした) |
大橋 |
それがもう、たいへんで。 |
糸井 |
なくなっちゃったという噂が。 |
大橋 |
たぶん、ご縁がないのかなあと思って。 |
糸井 |
あ、そうですか(笑)。 |
大橋 |
一度はオーケーになったんですよ。 飛行機を決めて契約に行かなきゃ というところまでいったんです。 そしたらば突然、電話かかってきて、 土地のことでいろいろややこしくなって。 |
糸井 |
ああー。 |
大橋 |
これはもう縁がないのかなあ、と。 |
糸井 |
ぼくが言うことじゃないんでしょうけど、 ジタバタしないほうがいいですよね(笑)。 |
大橋 |
もうジタバタしない。 もう、しょうがない、これは。 島が私を呼んでないんだと。 |
糸井 |
島に呼ばれなかったっていうのは、 ちょうどその、三重の展覧会があったり、 何か原点を見る時期なのかもしれないですね。 どこかに離れて行く時期じゃなくて、 戻る時期なのかもしれないですよね。 |
大橋 |
ああ‥‥あー! なるほど。 |
糸井 |
「私ってどこから来たんだっけ?」みたいな。 そういう季節なのかもしれないですね。 |
大橋 |
はい、そうかもしれないです。 |
(つづきます) |
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2009-11-13-FRI |