糸井 |
三宅さんは、
『ひょうきん族』や
『世紀のゴルフマッチ』以外では、
たけしさんと、
どういう番組をやられましたか? |
三宅 |
『タケちゃんの思わず笑ってしまいました』
という年二回の番組があったんですけど
(一九八三年~一九八六年)
あれはほんとに、
今でも、大爆笑できる番組だと思います。
あとは、さんまさんと一緒の
『有名人の集まる店』という……。 |
糸井 |
あれも、
とんでもなくおもしろい、
ものすごい番組でしたねぇ。 |
三宅 |
おもしろかったです。
たけしさんがほんとに酔っぱらって、
財前直見さんを
口説きにかかってしまったり……。
なんとか、さんまさんのことを
引きずり落とそうという、
たけしさんのキャラクターが、
おもしろかったんです。
「『HANA-BI』で
賞を取ったからって、なんでんの?」
「うるせぇな、この野郎!」
あの番組は、さんまさんとのバトルですから、
やっぱり、収録が、かなりかかるんです。
だいたい、ひとりのゲストに
一時間半ぐらいかけて、
二日にわけて、七~八人のかたを
招くんですけど……たけしさんが、
あるときに「疲れちゃうんだ」と
おっしゃったことがあったんです。
「じゃあ、生にしましょうか?
生だったら、ぜんぶで二時間ですから」
それでもう一回やることになって、
生の時間が取れなかったので、
生っぽい収録にしたんですけど、
そこで
「アイツ(さんまさん)は、もういいよ。
もう、アイツのしゃべりには勝てない(笑)」
と、いい意味で、
さんまさんのことを認めたときがあったんです。
それでは、
「鬼瓦権造」のキャラクターの
この番組は、もう成立しないなぁ、
ということになりまして……
それが、四~五年前になるんですかね。
「振り子のように、映画とテレビと、
両方やっていないと飽きてしまう」
と、かつてしきりにおっしゃっていたので、
たけしさんは、どこかで
映画に飽きるときが来るのかもしれません。
そうだとしたら、また、
たけしさんだからできるおもしろいことが、
テレビでやれると思うんです。
「ぼくらがつきあっているのは、
映画のたけしさんじゃなくて、
笑いのたけしさんなんです。
浅草の芸人で、コメディアンで……
というところでつきあってきたんだから」
そういう方向には、
一度、ちゃんと向かいたいとは考えています。
だからいまの状態は、
たけしさんにとって、
ほんとにやりたいことをやるための
前フリだ、と言うか……。 |
糸井 |
三宅さんは、
やっぱりしつこいですね。
大したもんだなぁ。
「たけしさんがやると
他の人がやるよりおもしろいもの」
って、たとえば、どういうところですか? |
三宅 |
たけしさんは
「ホステス講座」とか「料理教室」とか、
解説や評論のポジションに置くと、
いちばん力を発揮すると思います。
企画だとか考えかたが、特にすごいですから。 |
土屋 |
いまでもやっぱり、
さんまさんとたけしさんのユニットは、
とんでもなくおもしろいと思うんですよね。
とんでもなくおもしろいことは
まちがいないし、さんまさんは、
たぶんやってくれるだろうと予想しています。
ただ、たけしさんが
「いや、もういいよ、疲れるから」
と言ってしまうところが、
なんと言いますか……
「テレビというフレームのなかで、
オレ、そこまでやる義理もないし」
というふうに感じるんです。 |
三宅 |
そこは、
おっしゃるとおりだと思います。 |
土屋 |
そこは、やっぱり、すごいさびしい。
そういうふうに思われるように
さしむけたテレビというのが、残念なんです。
振り子のテレビ側が、
制作者の年が若くなってきたり、
話が通じていなかったりということで、
どうも、たけしさんからすると
「もう、あっちには振らないでいいよ」
というふうに思われてしまったとしたら、
ほんとうに残念なんです。 |
三宅 |
その気持ちは、すごくよくわかります。
前にテレ朝で、七時ぐらいから、
志村けんさんとふたりで
コント番組をやったんですよね……
あれで、たけしさんは、テレビにおける笑いを、
あきらめちゃったかなぁと思うんです。 |
土屋 |
やりました、やりました、
『タケシムケン』……あれはもう
「あのふたりを使って、そんなぁ!」
という感じでした。 |
三宅 |
あれで、
「もうテレビで、
自分の目指してる笑いは伝わらないなぁ」
と判断したのではないでしょうか。
制作側が、
焦って作りすぎたのかもしれません。
もう半年あとに、
練ってからやればいいのにと思いました……。
見ていて、やっぱり作り手が
追いついてない感じがしたので。
組むときには、制作側も
「たけしさんのスタッフで行くのか、
志村さんのスタッフで行くのか」
というところは、
とてもむずかしいところなんですよね。
それがうまくいかないと、俗に言う
「ショートしちゃう」
という話になってきます。
1+1を、3にするつもりが、
2にもならなくなるときもあるんですよね。 |
土屋 |
テレビマンが、
きちんと向かっていったら、
おもしろい番組が、じゅうぶんにできる
可能性があると思うんです。
ほんとに夢なんですけど
「こういう企画で、こうやりたいんです」
と、たけしさんに話したあとに、
「おもしろそうだな。やろうか」
と言われたいと言いますか……。
逆に言うと、
「たけしさん、何をやりましょうか?」
と御用聞きのようになっちゃうのが、
いちばんよくないと思うんです。
志村さんとやった番組って、
そうだったんじゃないかって想像するんです。
これは他局の悪口になってしまうから、
ほんとはあまり言いたくないんだけど、
たとえば、松本人志にしても、
かつて、テレ朝で、
土曜の七時の番組をやっていたんですよね。
だけど……やっぱり要するに
「なんでスタッフはこんなにわからんのだ?」
というふうになってしまったようだし、
もちろん視聴率もメタメタになっていました。
そうなると、出る側としては
「もう、知らんスタッフとはやりたくない」
というふうになっちゃうんです。
それぐらい、息が合うかどうかって重要で。 |
糸井 |
なるほどなぁ。 |
|
(次回に、つづきます) |