糸井 『Wii Fit』、やってます。
宮本 あ、そうですか(笑)。
ありがとうございます。

糸井 でね、いきなり、うまく行ってるんです。
宮本 「うまく行っている」?

糸井 うまく行っているんですよ。
いい感じで、ほめられるんです。『Wii Fit』に。
体重も、体脂肪も、問題ないと。
「あなたはなかなかいいんじゃないですか」
みたいなことを言われるんですね。
で、まぁ、うれしがっているんですが。
宮本 ああ、そうですか。それはよかった。
あの、しゃべる部分というか、
コメントするところ、評価するところについては、
どう受け取られるか、心配だったんですよ。
糸井 ああ。怒るわけにもいかないし、
ほめすぎてもいけないし。
宮本 そうそう。
本当はね、なくてもいいと思うんです。
やっている人が、日々、自分で
「お、いい感じ」とか感じてほしいので
あまり過剰にしゃべりすぎないように
してもらったんですが
やっぱり、無言だと寂しいので、
それらしくいろいろ言うようにしてます。
糸井 なるほどね。
ぼくの場合は、現在の体重がまったく問題なくて
BMI(身長と体重の比率から換算される肥満度)
も理想的だったので、そういう感じなんですけど。
だから、「何キロを目指す」っていう目標もなくて
「現状を維持してください」みたいになってる。
だから、まぁ、変な話ですけれども、
「あと3キロ痩せましょう」って言われたほうが
遊びとしてはおもしろいのかもしれない(笑)。

宮本 そこは、つくってて難しいところなんですよね。
やっぱり、ぼくらはどうしても
こういうものを日常的に
使ったほうがいい人のほうに
ウェイトを置いてつくることになるので。
だから、ちょっとメタボな人とか、
体重を管理したい人にとっては、
ものすごく都合がいいようにできているんですが、
たとえば、95歳のおじいちゃんがつかったときに、
体重が下がることがいいことなのかどうかは
断言できないですよね。
糸井 ああ、そうですね。
つまり、いろんな価値観の人が使うから。
宮本 そうなんです。
ですから、基本的な機能としては
事実をきちんと誠実に記録するもので、
評価みたいなところは使う人が
それぞれにやってもらえればと思うんです。
たとえば『脳トレ』というのは
出てくる数値にしても、その推移についても
けっこうリアルに扱ってるんですが、
『Wii Fit』では、そのときどきの数値を
「今日はよくできました」とだけ言うようにして、
「あなたの本当の肉体年齢は‥‥」みたいなことを
あんまり言わせないようにしてるんです。
そうじゃないと、幅広い年齢のいろんな体力の人に
均一のサービスをすることができないですから。
ですから、どちらかというと、毎日触る人が、
やってることに対して満足度が高いように
というふうに調整したんですけどね。

糸井 数値に一喜一憂するよりも、
人が自分のボディにかかわる時間を
きちんと持つことのほうが大事だと。
宮本 そうですね。
それは、本当にそうだと思うんです。
ぼく自身が『Wii Fit』をやるときもそうだし、
実際にジムに行って運動するときもそうで、
「毎日、自分の体と向き合う」ことが
いちばん重要だと思うんです。
糸井 うん、そうですね。
それはゲーム以前の問題として。
宮本 はい。
だから、ちょっと大胆な仕様として、
『Wii Fit』には「運動メモ」というものを
取り入れたんですよ。
これは要するに、外で運動してきたら、
それを『Wii Fit』のなかに
メモとして記録できるもので、
ゲームの中の運動貯金といっしょに
日々のグラフなんかにも反映されるんですね。
糸井 つまり、『Wii Fit』以外のところでも
運動していいというか、運動してほしいというか。
宮本 そういうことですね。
だから、これまでのゲームソフトというのは、
そのソフトのなかで
どれだけおもしろい遊びができるか、
っていうところで完結してたんですけど、
『Wii Fit』という商品は特殊で、
日常の運動も『Wii Fit』のなかのトレーニングと
同等に扱うようになっているんです。
それは、当然といえば当然のことで、
毎日の生活のなかで運動する機会というのは、
『Wii Fit』以外のほうが多いんです。
糸井 そうですね。
宮本 だから、そういった運動や体重を
「計測して、記録する」ということで
『Wii Fit』は日常の運動の「核」になる。
糸井 ハブのような役割をするわけですね。
宮本 ああ、そうですね。だから、ある意味で、
『Wii Fit』のなかでのトレーニングというのは
サプリメントのようなものなんです。
核はというと「計測して、記録する」こと。
糸井 極端にいえば、体重を量るだけでもいいというか。
宮本 そうです、そうです。
忙しいときには、
「今日は量るだけ量って寝よう」というので
まったくかまわないと思います。
だから、いままでのビデオゲームとくらべると、
ずいぶん変わったことをやっているというか、
新しいことをしていると思いますね。



(続きます)
2008-01-25-FRI