MORIKAWA

森川くん、人工知能の本をここで再編集。

脳の構造と働きをモデルとしたAI


全くAIについて知識のない人は、驚くかもしれませんが、
AIにはいろいろなモデルがあるんです。
流派といってもイイかもしれません。
実にたくさんのモデルが考案されています。
ぼくも一つ考案しているくらいですから、
細かな違いまで考慮すれば、
星の数ほどあるんじゃないでしょうか。

どのモデルがイイか悪いかは、簡単には言えません。
どれも完璧ではない。
一長一短、得意不得意がある、
という当たり前の事情となっています。
しかし、人が最初、空を飛びたいと思ったとき
鳥の姿や羽ばたきをマネしたように、
どのAIのモデルも神様のアイデア、
つまり、神の創造物である我々生き物の振る舞いを
マネしているという点では共通しています。
ボク的な解釈では、人工知能のモデルは大きく分けると、
遺伝子の仕組みをまねたモデル、
脳の仕組みをまねたモデル、
(人の)考え方をまねたモデル、
(虫たちの)考え方?をまねたモデル
と分けられる気がします。

それぞれのモデルがマネしようとした対象を見てみると、
「知能とは、そもそも何なのか?」
という哲学めいた問いかけが、ベースになっているようで、
感慨深いモノがありますね。
余談。

いずれ詳しく書くことになると思いますが、
今日、古き良き時代の人工知能モデル
(Good Old Fashioned AI
 略してGOFAIと呼ばれています)
が、いきずまってしまっている原因の一つに、この
「知能とは、そもそも何なのか?」
という考え方に間違いがあったのではないか?
AIのIであるinterigenceを
「知能」と訳してしまったことが誤りではないか?
といった指摘すらあります。

ということで、また長い前置きになってしまいましたが、
まずは、我々の脳の仕組みをまねたモデル、
専門用語で言えば、
神経回路網モデル
(Neural Network Model)
から話を進めたいと思います。


以下、
「マッチ箱の脳」の「ニューラルネットワーク」より抜粋



■ニューラルネットワーク<1回目>


これからお話ししようと思っているAI、
ニューラルネットワークモデル
(以後、Neural Network=NNと呼ぶ)
は、我々人間や動物の脳の
構造と働きをモデルとしたAIです。
NNは、先のGAと並ぶ、AI御三家の一つです。
このモデルは、まず我々が先生となって、
例題とそれに対する模範解答を用意しておき、
NNに教えてやります。
すると、その後は教えたことはもちろん、
教えていないことについても、
自分で判断したり推理できるようになっていく、
という特技を持ったAIです。
我々の脳の仕組みをざっくりまねただけで、
我々のような学習や判断や推理ができるんかいな
と思ったら、案外できたというモデルです。
実際、NNは、すでに多くの現場で使われています。

ということで、
さっそく、NNの仕組みのお話を始めたいと思います。



●脳細胞はつながっている


NNは、名前を直訳すれば
「神経回路網モデル」
となることからおわかりのように、
我々の脳の、脳細胞とそのつながり=ネットワーク
をモデルにしたAIです。
といっても、脳細胞のつながりなんてピンときませんね。

まずは、我々の脳がどのような仕組みになっているか、
ざっとおさらいしてみましょう。



●脳内バケツリレーの仕組み


我々の脳細胞は、互いにつながっています。
1つの細胞は、なんと1000から1万もの他の細胞と
つながっているといわれています。
しかし、逆に言えば、
脳全体では200億個もの脳細胞がありますから、
1000個〜1万個の細胞と「だけ」
つながっているとも言えます。
実は、個々の脳細胞の働きより、
どの細胞とどの細胞がつながっているかといった、
ネットワークの仕組みの方が重要なのです。
おのおのの脳細胞は、
ネットワークでつながっている他の脳細胞から、
ある種の信号を受け取ります
(ここではイメージしやすいように
 電気信号という言い方をしましょう)。




さて、脳細胞は、他の脳細胞から受け取った
電気信号の量がある一定以上だと興奮します。
それ以下だと興奮しません。
興奮すると、電気信号を次の細胞に送ります。
興奮しなければ、次の細胞に電気信号を送りません。
各脳細胞の仕事はただこれだけです。
一つ一つの脳細胞は
自分がかかわっている「仕事内容」は知りません。
食べ物の好き嫌いについての役割をになっているのか?
恋愛について考えているのか?
ボールを投げる運動にかかわっているのか?
そんなことは全く知りません。
ただ、興奮する、しないだけの働きを
粛々と行っているだけです。
ちなみに、 どのくらいの量を受け取ったら興奮するかは、
細胞ごとに違います。

さて、脳細胞と脳細胞は、
バケツリレーのような関係になっています。
1000人〜1万人の前の走者=脳細胞が、
次から次へと水(電気信号)を受け渡していくような
イメージです。
昔の人が「血の巡り」なんて言っていたのも、
このバケツリレーをうまく言い表していますね。
ただし、普通のバケツリレーと違って、
全員が一列に並んで1人から1人へと
順に水を送っていくわけではありません。
ある人は、100人から水を受け取ることもありますし、
ある人は、100人に水を渡すことがあります。
バケツリレーのルールは簡単です。
水(電気信号)を受け取って、
受け取った水の総量がある量以上だったら、
後の走者に水を渡し、ある量以下だったら水を渡さない。
それだけのルールです。

●興奮する細胞たち


脳細胞は、たくさんの脳細胞とつながっていますから、
大概の場合、同時にたくさんの脳細胞から
電気信号を受け取ります。
ですから、
ある一定以上の量になったら興奮するといった場合、
1つの脳細胞から受け取る信号が少しずつでも、
たくさんの脳細胞から送られるため、
合計するとある一定以上になる場合もありますし、
たった1つの脳細胞から送られただけでも、
すごい量の電気信号を受け取ったら、
それだけで一定以上になる場合もあります。




2001-02-20-TUE

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