
別れのときには、
あまりいろいろなことを考えてはいけない。
最後にこの風景を刻みつけておこうとか、
ここではあんなことがあったとか、
もう二度とここへ来ることはないのではないかとか、
そういうことを考えはじめるとほんとうにキリがなくて、
足がとまってしまうからだ。
だから、ついにその地を離れるという間際では、
あまりいろいろなことを考えてはいけない。
あえて、慌ただしく立ち去るべきだ。
何気なく、さり気なく、自動改札を抜けるみたいに。

11月某日。引っ越し当日。
乗組員たちは、朝から自分の荷物の梱包をはじめる。
もう、まもなく、引っ越し業者さんがやってくる。

いろんなプロジェクトのいろんな資料を整理。
捨てるものあり、保存するものあり。

棚に残った機材の最終確認と、梱包作業。

ダンボール2つでまとまる人もいれば、
5つあっても足りない、という人もいる。

冷蔵庫のなかに、ハンパに残ったものを処分。

そうこうするうちに引っ越し業者の人たちが登場。

たくさんあるねえ、と、あきれ顔?

そんなさなか、外部の人と打ち合わせする人もいて。

ああ、でも、ほんとうに‥‥。

片づいてきたなあ。いよいよなんだなあ。

引っ越し大臣、中林が棚に運搬用のシールを貼っていく。
身内ながら、ご苦労さま。

奥の会議室でも、梱包がはじまった。

あとはもう、個人の手荷物を残すのみ。

まさにその地を離れるという間際では‥‥。

あまりいろいろなことを考えてはいけない。

屋上からの風景も見納め‥‥というようなことは、
考えてはいけないのである。

ありがとう、魚籃坂。
さよなら、明るいビル。
(つづく‥‥)
2005-11-28-MON
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