震災から1年9ヶ月ほど経ちますが、
もうすっかり、
本来のスタンスに戻られてますよね。

NHK_PR1号 もちろん、緊急地震速報などは
これからもツイートしていきますけれど
このアカウントは
日常的であることを大切にしたいので。

それは、どうしてですか?

NHK_PR1号 「PRの仕事」というのは
「お客さまと
 コミュニケーションを重ねること」です。

そのためには、
やはり、日常的である必要があるんです。

震災対応は、特殊なケースだったんですね。

NHK_PR1号 たまたま自分の席にいて
いつでもツイートできる状況だったときに
地震が起きましたから。

当然、緊急地震速報をツイートしたら、
もう、やめられなくなって。

やめる気も、なく。

NHK_PR1号 はい。
ある意味「たまたま、そうなった」と。

NHK_PR1号 そうです。
このことは、本でも触れられていたのですが、
少しだけ、お聞かせください。

「NHK_PR1号」という
この、ものすごく個性的なアカウントは
当初から「人格」を前面に出していこうと?

NHK_PR1号 はい。
それは、なぜでしょう?

NHK_PR1号 「法人対視聴者」という抽象概念同士では
コミュニケーションは成立しないと
思っているからです。

それは、広報の専門家としての
「職業的信念」ですね。

NHK_PR1号 この世の中に
「視聴者」という人は存在しません。

あくまでも、一人ひとりのお客さまが
たくさん存在しているだけで。

「視聴者」という
「正体不明の集団」がいるんじゃないかと
考えがちですが、
本当は、そんな人はどこにもいない‥‥と。

NHK_PR1号 同じように「NHK」という組織も
さまざまに異なった考えを持った個々人が
寄り集まって、成り立っています。

ええ。

NHK_PR1号 だから、世間一般の「NHK的なるイメージ」は
その結果として、できあがっているんです。

そして私は、ずっと、「NHK」という法人に
「人間味」のようなものを
感じてもらいたいなあと、思っていたんです。

人間味、ですか。

NHK_PR1号 あるんですよ、「人間味」が。
一般的に「NHK」といいますと
「お堅い」とか
「マジメ」みたいなイメージが‥‥。

NHK_PR1号 ありますよね?

でも、堅くてマジメなだけの放送局が
「あんなにもシュールな子ども向け番組」を
つくれるはずないと思うんです。

‥‥なるほど。「しゃべるイス」の物語とか。

NHK_PR1号 あたまのお花が咲くと
オネェ化するサボテンみたいな人‥‥とか。
お風呂が好きな、ピンクの牛みたいな人とか。

NHK_PR1号 ‥‥よく、ごらんになってくださって。
ちょうど、ちいさい子どもがおりまして。

NHK_PR1号 これまで、「NHK」というと
まずは「ニュース番組」だったと思うんです。

でも、じつはみなさん、多かれ少なかれ、
そういう、
一筋縄で行かない子ども番組をごらんになって
育ってきたはずなんです。

そうですね‥‥言われてみれば。

NHK_PR1号 だから、
「NHK_PR1号」というアカウントを通じては
今までの「堅い」「マジメ」というイメージを
少しずつでも、
変えていけたらいいなあと思っているんです。

なるほど。

NHK_PR1号 ただ、私にも「本業」がありますので
ツイッターは
「コミュニケーション」を補完するための
ひとつの実験と位置づけています。

つまり、これを使って
「視聴率を上げてやろう」という気などは
毛頭なくって。

「毛頭ない」とまで言って平気ですか(笑)。

NHK_PR1号 大丈夫でしょう、いまさら。

そんなことよりも
「へぇー、堅い堅いとばかり思っていた
 NHKにも
 こんな人がいるんだな」ということが
わかってもらえたら、いいなあと。

それ、すっごく伝わっていると思います。

「PRさんのような人が
 NHKにも、いるんだな」というか‥‥
「いられるんだな」という感じは(笑)。

NHK_PR1号 だったら、いいんですけどね(笑)。
ひとつ、PRさんのフォロワー数って
震災の日を境に急増したと思うんですが‥‥。

NHK_PR1号 そうですね。震災の前までは、
たしか、12万人くらいだったと思いますので。
ちょっと、ログで確認してみましょうか。

ああ、やっぱり、
震災の後には一気に「倍」近くまで増えてます。

NHK_PR1号 ええ。
ここまでフォロワーが急増するって
なかなか、まれなご経験だと思うんですけど、
それまでと、何かが変わりましたか?

コミュニケーションのやり方というか、
「わかられ方」みたなこととか。

NHK_PR1号 そうですね‥‥それまで、時間をかけて
このアカウントのことを
徐々にわかってくださったみなさんとは
別の人たちが、
どんどん、次々と、フォローして下さいました。

はい。

NHK_PR1号 そういう人たちとコミュニケーションする場合は
たしかに、
これまでの方法に甘えられないことは、あります。

どうやったら、なかよくなれるかなあ‥‥とは、
ものすごく考えましたね。

なかよく。

NHK_PR1号 とはいえ、先ほども申し上げましたけど、
このアカウントでは
基本的に、宣伝をする気がまったくないんです。

ええ。

NHK_PR1号 NHKのことを
「もうちょっとだけ知ってもらいたいな」
ということと、
「できれば、好きになってもらいたいな」
ということだけで。

はい。

NHK_PR1号 そのために、フォロワーのみなさんと
できるだけ楽しいやり取りをして
お友だちになる。

つまり「なかよくなる」ということを目指して
やってきたんです。

なるほど。

NHK_PR1号 そのやり方は、フォロワーが50万人になろうが
変わらないとは思います。
そうなんでしょうね、きっと。

今日あらためて、PRさんのお話を聞いたら
あのとき、PRさんみたいに
寝ないで、ご飯も食べないで
自分のフィールドで、自分のできることをした人が
世の中に、
たくさんいたんだろうなって想像できました。

NHK_PR1号 うん、そうですね‥‥私も、そう思います。
これからも、ユルいPRさんで、いてください。

NHK_PR1号 たぶん、それは大丈夫です(笑)。
今日は、ありがとうございました。

NHK_PR1号 こちらこそ、ありがとうございました。
‥‥しかし、フォロワー「50万人」ですか。
NHK_PR1号 そうですね、気づけば。
いかがですか、その数については。
ご本人としては。

NHK_PR1号 正直、かなりの「とまどい」がありますね。
それは、どういった?

NHK_PR1号 たとえば、震災以降は
リツイートされる数が急に増えたんですよ。
ははあ。反応がビビッドになったんですね。

NHK_PR1号 それまでは、ダジャレを言っても
たいしてリツイートしてもらえなかったんですが、
震災後は、同じようなダジャレでも
100回くらい、リツイートされたりとか‥‥。

100回って‥‥そりゃまた、極端な。

NHK_PR1号 ‥‥しかも「ダジャレを」ですよ?
100回も。

NHK_PR1号 そういう意味で、すごく「とまどい」があります。
‥‥ダジャレのレベルが上がった、という説は?

NHK_PR1号 ないですね。そう信じたいところですが。
ダジャレのレベルが上がったわけでは、ないと。

NHK_PR1号 残念ながら、おそらくは。
‥‥わかりました。
本日は、まことにありがとうございました。

NHK_PR1号 こちらこそ、ありがとうございました。
<終わります>

2012-12-21-FRI


 





新潮社の担当編集者・岡倉千奈美さんによれば
「ふだん、ほとんど本を読まないんだけど
 この本は、最後までツルッと読めた」
という趣旨の感想ツイートが目立ったそうです。
たしかに、240ページある本ですが
NHK_PR1号さんのタイムラインのごとく、
サクサク、一気に読めてしまいます。
広報という「本業」の視点から
ツイッターを冷静にとらえていたりするなど
ふむふむと示唆的である一方、
「ボット」に一生懸命話しかけていたという
悪いけど笑っちゃう失敗談など、
NHK_PRさんのことを
もっと好きになってしまう本だと思いました。
東日本大震災のことを書き綴った章は、
本の後半に。
ここで「涙した」という人も、やっぱり多数。

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『中の人などいない』
NHK_PR1号 著
新潮社