「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」 〜新しいゼルダを、とことん語ろう〜 宮本茂+青沼英二+小泉歓晃インタビュー その1 いつも新しいことをするのが、 ゼルダなんだ。 |
発売ほやほやのNINTENDO64ソフト 「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」。 いよいよ今回から登場です。 まずは、プロデューサーである宮本茂さんと、 このゲームの6人のディレクターのなかから 青沼英二さん、小泉歓晃さんに集まっていただき お話をお聞きしましたよ。 今回は、その1回目。 どんなチームがゼルダをつくったのかを 語っていただきます! |
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──まず、みなさんが何をなさったかたか ということを教えてください。 小泉: 前作『時のオカリナ』から同じなんですけれども、 プレーヤーがコントロールする、 あのキャラクターがありますね。 あのキャラクターを、前作プラスいくつか、 設計をしたのがひとつ、 それから、スケジュールイベント、 これはメインのイベントとは別に進行する サブの部分をつくりました。 |
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宮本: 今回のゼルダは、ゲームデザインだけで、 ディレクターが6人いるんですよ。 ほかの仕事も考えると もっとたくさんのディレクターがいるんだけれど、 ゲームの中枢に関わったのが6人ということですね。 統括のディレクターが青沼で、 サブイベントとかプレイヤーが小泉、 スクリプトが高野、ダンジョンに臼井、 システム管理に山田。 それからデモのディレクターに河越。 青沼: これを我々は多重構造ディレクター制度と呼んでます(笑)。 宮本: 青沼は、『時のオカリナ』のときは ダンジョンを中心にやっていたし その前の『マーヴェラス〜もうひとつの宝島〜』のときも ディレクターをやっていたんですけれど、 今回は、地上全体と、統括のディレクターということで。 青沼: わかりやすく言いますと、 僕が担当したのはわりと「おとぎ話」的なところなんですよ。 小泉が担当したのは、リアルな……町の中にいる人々の、 リアルな生活を描くという部分ですね。 僕は前作同様、ファンタジーな感じを踏襲したんですが、 そこに今回は……。 小泉: リアルな生活を持ち込んだわけです。 青沼: いま小泉が持っている人生観を そこにたたきつけた、と(笑)。 小泉: 三十何年かで、見てきたことを、 すべて放り込みましたよ。 |
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宮本: こりゃあ、重いゲームですよ(笑)。 小泉: 僕が担当している「町」では重いものを見て、 青沼が担当している「外」では 気持ち良くなってもらうようになってるんです。 ──こういうことは、皆さんで 話し合いをしていくなかで決めていくんですか? 青沼: いや、そういうことはあまり話さないですね。 つまり「小泉が考える何か」だったら、 それでオーケーでしょうというところでつくっているんです。 ずっと同じスタッフでやってきているので、 言わなくても、どんなものができてくるかは わかっているよ、と。 逆に期待して待っている、という感じですね。 ディレクターが何人もいて、それぞれがつくって、 最後にガチッとつじつま合わせをする、 というような作り方をしていますね。 宮本: 不安な人は混ぜないようにしていますね。 割と安心できる人でチームをつくっているので。 青沼: そうですね。 宮本: 全体の仕様についてはみんなで集まって話をするんですよ。 それが当初、2〜3ヶ月は、二転三転して。 それが過ぎて、ほぼ固まったな、というところで、 解散して、各自各パートをつくる、ということになるんです。 |
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青沼: 共通の意識があれば、それぞれがそれに向かって つくっていけばいい、ということですね。 それは、『時のオカリナ』があったからこそ できたことなんですけれど。 ──ほとんど前作からのスタッフですか? 小泉: そうですね。あと、新人が参加しています。 宮本: 実は、最初、前作からのスタッフは半分にして、 新人を入れたんですけれど、 やっぱりムリだって事で無理やり呼び戻して、 結局7割方同じメンバーになりました。 僕は、全体のプロデューサーということで、 最後の責任はとる、という立場なんですが、 それはつまり「でき上がらない」ということの 責任をとることになるんですよ。 だからいつもは自分で入っていって 現場の仕事をしたりするんですが、今回は 「できあがらなかったら、出さへんからな」 ということで、ただただでき上がるのを待っていた。 序盤の打ち合わせが終わった後は、 ほんとうに何もせずにいました。 後半、ちょっと、ブツブツ物言いしましたけど。 モニターとしてね。 「僕はマリオクラブの一スタッフとして言うんですが」 なんてね(笑)。 小泉: 僕らも「宮本さん何も言ってこないねえ」と噂してて。 「あとでひっくり返されるよなあ?」とか。 宮本: ラクしました。楽しかったですよ、今回は。 ──それは信頼関係があってのことですね。 宮本: ええ、もう青沼から後光が差して見えた(笑)。 毎日その後光を見ながら「お先!」って帰る。 ──時間は、どれくらいかかったんでしょう。 青沼: それ調べたんですよ。昨年の2月1日からでした。 プログラムスタートが。 宮本: その前に1ヶ月ちょっといろんな話をしていたわけですね。 だからちょうど1年かかったわけだ。 ──その1年というのは、小泉さんも青沼さんも それにかかりきりという生活になるわけですか? 小泉: 実は僕は立ち上げのとき、 違うゲームを企画してやってたんですよ。 僕はものすごくやる気でね。そしたら、横で、宮本が……。 宮本: 呼び戻したんだよな。 |
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小泉: 「ゼルダ……ゼルダ……ゼルダ……!」 って、ささやくんですよ。 で、僕のゲームはツブされたんです! 宮本: (笑)。 小泉: ショックでしたねー(笑)。 宮本: いつもだったらね、7月8月になって、 にっちもさっちもいかなくなってから呼び戻すんですけど、 このケースでは、開始数ヶ月の間に 「やっぱりムリやから、ちょっと戻ってくれへんか?」って。 青沼: 僕もひとりでいろいろやろうとしたんですけどね、 どうしようもなくなって、小泉を戻してほしいと お願いしたんですよ。僕一人ではどうしようもなくなって。 宮本: 企画はどんどん膨らんでいくしね。 最初はダンジョンを変えるだけでいいから、 なんて言ってたんだけど、そうはいかないでしょ(笑)。 デモディレクターをやっていた河越も、 小泉といっしょに仕事していたのを引き抜いて。 ──6人のディレクターというのは、 最初からのチームじゃないんですね? 宮本: そうなんですけど、呼び戻したところから 本格スタートしたわけだから、 ほとんど最初からと言っていいでしょう。 試行錯誤の期間があった、ってことで。 |
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小泉: 最後に自分の企画書を閉じたのが 5月下旬くらいだと思うから……。 宮本: 3年かかるといわれるのが悔しくて。 じゃあ1年でやってやろうって。 「つくれるんだよ、僕らでも!」って言いたかった。 1年というのは、前にあるエンジンを そのまま使ってシナリオだけ乗せ変えるということだったら、 そこそこの大きさのゲームであれば、できるんです。 ゼルダの場合、同じシリーズが一ランク成長するように つくっているというのを繰り返しているので、 2年かかるというのがふつうなんです。 しかも序盤、新しい実験をするために 少人数で立ち上げるので、それに1年、 トータルで3年ですね。さらに、ハードが変わるときは、 新しいハードを勉強するのに1年かかったり。 でも、ほんとうにゲームをつくっている期間というのは 1年くらいなんです。今回は、立ち上げのときから 30人とか50人とかいうメンバーでどーんと作りましたから。 ゼルダという物量から言うと、みんなかなり残業もしました。 毎回新しいものを目指す、というところでは、 けっこう厳しいものがある。 今回、なんだかんだ言いながら新しくなりましたからね。 そういう意味では、1年というのは厳しい期間だと 言えますね。 ──今回のゼルダというのは、 雰囲気も非常に新しいと思うんです。 宮本: ゼルダらしいといえばゼルダらしいんですが。 「ゼルダらしい」というのは、ゼルダというのはいつも ハードとともに出てきて、そこで新しい事をするのが ゼルダらしいってことなんですよ。 ──64で、この短期間でソフトが出る、 ということじたいも、ひじょうに珍しいですよね。 前作からどう変えてくるのかな? ということを、みんな期待していたと思うんです。 それが、「全然違うことをやってる!」というのを 感じました。 |
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小泉: 僕が企画が潰されてチームに参加したとき(笑)、 「何したらいいんですか?」って宮本に聞いた答え、 いまでも覚えているんです。 「できることは、なんでもやれ!」 って。 宮本: (笑)。 小泉: そういうことを言われたんですよー。 それって何も指示になってないなと 思いながら聞いてた(笑)。 その、先にやっていた企画というのは、ボードゲームで、 泥棒と警官みたいな話だったんです。 一週間という期限内につかまえる、というもので、 実際は一時間でプレイできるゲームにしたかった。 僕はそれをゼルダにねじ込んでやれ、と思ったんです。 宮本: ちょうど、それが、かみ合ったんです。 サイズをね、「全8巻」とか「第何章」とか いうものではなくて、コンパクトなサイズのなかに、 何度も繰り返して遊ぶ、という仕組みをつくって、 何度も遊んでいるうちに深みが出てくる、というものを、 ゼルダに入れたかった。 というのは、僕らがつくったものをね、 映画のようにさっと見飛ばしてもらうのは、 やっぱり、作り甲斐がない。 作ったものを何度も何度も見てもらっているうちに、 作り込んだものが現れてきて、 それが味わいを出していく。 そういうもののほうが、ぼくらには向いている。 そういうシステムをずっと求めていたんです。 小泉: ずっと宮本が「短いゼルダを作りたい」と 言っていたのを知っていたから。 |
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宮本: 「ダンジョンは4つくらいにしようか」とか 「同じボスとは2回くらい戦いたいしな」とか、 密度を濃く作っていきたかった。 そのほうが、総身に知恵が回る。細かい部分がね。 小泉: たくさんつくるとたいへんだ、ということが、 前作にかけた3年間でわかった。 だから今回は、あるもので何回も遊べるような 仕組みにしよう、と。 宮本: ラクした部分もあってね。 お化粧でいうとファウンデーション(下地)の部分は つくってあるわけ。だから、上に塗る部分だけをやる、 というような。つまり、名前登録とかメニュー画面とか、 前作から引き継いで使える部分は使う。 青沼: それは変えなくていいだろう、というか、むしろ、 それがあったほうがいい、という思いで、残しました。 宮本: それよりも、ゲームとして進化していく、 なにか新しい事をやろう、ということでしたね。 けっこう、志が高かったんですよ。 |
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さて、今回のゼルダはどんな点が新しいのか!? 次回をお楽しみに! |
2000-05-17-WED