(高橋さん)
出来上がりにはけっこう満足してますよ。
(吉川さん)
オレって天才!?って感じ?(爆笑)
(高橋さん)
そこまで言うかな。
(吉川さん)
しいて難を言えば、女キャラがいないことね。
色気がないのが、ちょっと・・・。
(高橋さん)
けど、なんか、ツール上で見てたやつが、
実際ゲームで動くとやっぱ、ね。
(吉川さん)
うん、いいよね。
(高橋さん)
うぉぉ、動いてる動いてるって。
(吉川さん)
そ、やったあって思う。
そいで、見ると、ここ、もうちょっとこうしたかったな、
って思って、直す。
(高橋さん)
フォックスを先につくって、
その次にカービィをやってるときに、
ああ、フォックス直したいとかっていうことあるんですよ。
前につくったものがどうしても気になって、
実はみんなに内緒でこっそり直したりしてました。
自分も慣れてくると、
前のほうで全然やれてなかったところを、
ああ、こういうことやればよかった、ってのがあって。
ああ直してぇ、っつって。
(桜井さん)
モーションデザイナーにすごく苦労してもらわないと
いけないこととしては、ひとつ動きが出来たとしても、
バランスを調整するバランス取りの時に直しが入るんです。
それはもう、山ほどね。
モーションって、実際に完成したあとにも、攻撃力などを
調整する時点で、少しずつスピードやタイミングを
調整してもらう必要があるんですよね。
地道さが要求される仕事だと思います。
例えば、「はじく攻撃」をしたときに、
「ペンッ」とかって弱々しいパンチしか出せなかったら
いやですよね。
そこはグーッとためてから、バン!と攻撃したいとか。
同じようにためる時間にしても、
思いっきりためすぎて攻撃したりすると
一体感がなくなるとか。
そういうようなところが、このゲームは
わりとちゃんと出来てるほうだと思います。
キャラ全体の持っているものっていうものもあるし、
個体でこの技はどうか、ということもあるので。
例えば、弱い技もあってもいいんですよ、
そのかわりに強い技も持っていれば、いいわけですから。
そのなかで、例えばヨッシーの「あたり判定」を
すべて入れてみて、そして全体的にチェックをして、
この技とこの技は操作感が悪いからちょっと調整して、
この技とこの技は誰とのかねあいが悪いから
あたりだけ変えるとか、もう、それは
もっともこまごまと動かなきゃいけないポジションですね。
(編集部:カービィのような球体のモーションって
どうつけるの?)
(高橋さん)
やっぱり、いちお身体の中は人に近いような構造があって、
外側に球体をかぶっていると考えますよ。
ようはカービィも、結局は、関節とかひじとか、
肩のつけねとかが、あるんですよ。
それが露骨にはちょっとみえにくいだけで。
ちょっとくらい曲げてもあんまりはっきりしないけども。
骨格はあります。
このなかに登場するキャラには、全部骨格があります。
(吉川さん)
それはプログラムのうえで、必要なことで。
骨は全部同じ構造にしといて、骨の太さを変えたりして
例えばちゃんとした人間の骨があったら、
それをカービィサイズにぐっと縮めるんです。
(桜井さん)
形状がどうであれ、最終的に重要なのは
モニターに出たときの動きですから。
(高橋さん)
あと、モーションとモーションのつなぎっていうと、
例えば「歩いてきて、パンチ」っていうのは、
歩くのとパンチがつながるんですけど、
それが入ったときにうまくつながってなかったりとかって
あるんですよね。たまに。
あれ、なんかまずいことしてるな、ってデータを調べると
案のじょう、変な設定してるとこがあったり。
プログラムって、目で見てもわかんないじゃないですか。
内部がどのようになっているかっていうのは。
絵的なものって、目でみて、あ、ここちょっと
変なんじゃないの?ってすぐわかるんで。
プログラムは、処理がちょっと遅くなる程度ならば
手を抜こうと思えば抜けますよね。
そういうふうには抜けなかったですね、これは。
別に抜きたいと思ったって訳じゃないんですけどね(笑)、
しっかりやんなきゃ、って思いましたね。
(吉川さん)
12月にはゲームの上で動いてるのが見られたんだよね。
それからはもう手慣れたもので、
ひとつモーションつくってプログラマーさんに渡すと、
すぐ画面に出してもらえたですから。
やってるやってる、って。
(桜井さん)
そのころ、任天堂さんにモーションキャプチャーを
使わせてもらってたんですよね。
でも実際のゲーム上ではもっともっと速い動きで
見せなきゃいけないんで、合わなかったんです。
最終的にはキャプチャーは使わなかったですね。
(吉川さん)
うん。
マリオに、ほんと、ちょっと匂いが窺えるくらい(笑)。
(高橋さん)
フォックスもほんのちょっと。
微速のときの歩きとか、
あれはモーションキャプチャーしたデータを
カットして短くして使っているんですけど、
それくらいかなあ。
キャプチャーはさ、やってたときにモデルの手とか足が
いきなりビヨ〜〜〜〜ンって伸びておかしかったよね。
テストプレイで見せてもらったときにびびったもん。
歩いてきたかなって思ったら顔がドヨ〜〜〜〜ンって。
カメラが追ってる点が、途中でフレームから
消えちゃうんですよ。
そうするとその座標が割り出せなくて、
それまでの移動から予想して計算した値になっちゃうんで。
今までの動きが途中のあるところから追えなくなると、
コンピューターが、そこからの動きをなんとなく予測して
勝手に読み込んじゃって。
へんなふうに編集されるのを、いちいち手で直すんですよ。
(吉川さん)
傍目には面白かったよね(笑)。
(高橋さん)
バタンと倒れるシーンとかでは、バターンって倒れた瞬間に
手がブワ〜〜〜〜ってでかくなっていって、
首がガ〜〜〜〜って伸びちゃったりとかして、
うわぁ〜、恐ぇ〜〜〜〜って、大騒ぎ。
クルマのテストなんかで使うダミー人形って
あるじゃないですか。
あんなようなものでコンピューター上のデータを
つくってたんですけれども、光沢があって凹凸があって、
それなりにリアルなんですよ。
その頭が背中にめりこんだりして、気味悪かったですよ。
高橋功さん
「自分でするときはカービィを選びます。
戻ってこられるから。コピーできるのもいい」
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(編集部:オリジナルがあることの制約はありましたか?)
(吉川さん)
それはね、宮本さんになんて謝ろうかと(笑)。
ここだけの話(笑)。
最初、この企画が出来たときには、
ある程度先に作ってからぱっと見せよう、
それでOKをもらおうとして、作っていたでしょう。
だから任天堂さんから資料ももらわずに、
「マリオ64」を見ながらマリオを作ったんです。
それで、無事にOKが出て、
さ、これで本物のマリオのデータが借りられますよって
なったときに、ふたつを並べたら微妙に違うんですよ。
頭でかいんですよ。こっちが(笑)。
「マリオ64」は3Dの画面を斜め上から見てるから。
おれ、ゲームの画面みながら作ったから、
自然と下半身がつまってて頭でっかちになってるんですよ。
うわぁ、どうしよっかなあって。
でも、ま、こっちのほうが可愛いからいっかな、って思って
そのまま使ってるんです。このくらいはいいかなって。
(桜井さん)
宮本さん、マリオよう出来てるなあ、って言ってましたよ。
(吉川さん)
やったあ!宮本さ〜ん!!(笑)
(桜井さん)
やっぱ、宮本さんも、マリオがいろんなひとに
使われるようになって、ある部分は寛容なんですよね。
でも、締めるところは、その、ちゃんと、ね。
(吉川さん)
え!?(爆笑)
(桜井さん)
絶対に守っていただきたいところがある、とは
おっしゃっていて。
でもそれがこのゲームで守れたからこそ、
この企画が成り立ったんだと思うんですけれども。
(編集部註:桜井さんもカービィの原作者である。
他のひとが描いててすっごくよく出来てても、
これ、なんかカービィじゃないや、偽カービィや、
っていうことありますか?)
(吉川さん)
ドキッ!「偽カービィ」。
じゃオレのは「偽マリオ」ですか?
でも、担当すると、なんか愛着が沸いてきますよね。
マリオもそうだし、ルイージも担当したんです。
ルイージは、基本的にマリオと同じキャラクターなので。
このゲームのなかのルイージは、
ちょっといい味出してるキャラになってますよね。
キャラ選択画面のなかでも、
妙なおとぼけポーズをしたりするんで。
こういうちょっとしたところにちょっと遊びがほしいなあ、
って思ってたもんで、楽しみながら作りました。
ルイージの「ダッシュ攻撃」は、
「駄々っ子パンチにしようぜ」とかいって(笑)。
(桜井さん、モニターをプレイしながら)
マリオとルイージ、細かいところがちょっとずつ違います。
マリオのダッシュ攻撃はあたりさわりなく、ふつうに。
で、ルイージは、こんな表情。
(モニターのルイージ、駄々っ子パ〜ンチッ!)
マリオはアピールのときにこんな顔をしてるんですが、
ルイージは「ちぇっ」っていう、ね。
ルイージのほうが急ブレーキのときに足がすべりやすい。
下段の足払い攻撃もちょっと違います。
かなり、いろんな違いはあるにはありますね
表情なんかもマリオとは傾向がちょっと違うんです。
ジャンプ力もちがうし、フワリと落ちるのも、ルイージ。
(高橋さん)
ひとつのキャラクターで動きが200くらいあるんだっけ?
(桜井さん)
140くらいです。いちお。
(編集部:それは多いのでしょうか?)
(桜井さん)
対戦格闘のゲームとしてはちょっと少ないくらいです。
ただ、140という数は、単純な比較にはなりませんよ。
ふつうなら使い回せるダメージモーションなんかも
全キャラ分にひとつひとつ作ったりしての140ですから、
密度の濃い140、と言えると思います。
(高橋さん)
そうだよね。
ABボタンとZトリガーとスティック1つだけにしちゃ、多いよね。
ふつうの格闘ゲームだと、4つ、6つとかボタンがあって
スティックも「前・下・斜め下」とか、複雑な操作ですよ。
これはそうじゃなくて、比較的シンプルに、
「ちょい入れ」とかで出ちゃうんで。
どうやって割り振ったんだろう?って思うよ。
(吉川さん)
お手軽ですよ。操作が。
(高橋さん)
このキャラクターで遊ぶゲームっていったら、
大人向けっていうよりも子供向けじゃないですか。
そうすると、操作が複雑だと出来ないし、
っていうことも考えてあるから。
ワイワイと家でやるっていったら、やっぱり簡単で
それなりにテンポがいいっていうのは大事なことだから。
(桜井さん)
アクションを考えようとするときには、
操作が基本的にまず簡単でっていうところが大前提ですね。
(高橋さん)
技の出し方がどうっていうよりも、復帰のしかたとか、
アイテムの使いこなしとかが大事なゲームなんだよね、
これは。
(桜井さん)
身体感覚を大切にしてるからだろうと思うんですよ。
例えば、Zトリガーをギュウッと引くことと、
身体をきゅっと縮こめて身を固めるっていうのは、
自然な一体感があるじゃないですか。
そういう自然さを、大事にしていると思います。
(編集部:スマブラやってる読者の皆さんにメッセージを)
(吉川さん)
対戦プレイ、やってくれい!(笑)
お願いだから。やって(笑)。
(高橋さん)
やっぱ、仮想の世界でもケンカですからね。
これほんと。
汚ねぇこの野郎!っていうのが面白いんで。
こいつ、腹立つなぁ、っていうのが。
(吉川さん)
そいでもって、上手なひとはあんまり他をいじめずに、ね。
寛容な心で、ハンディつけるとか、プリンつかうとか、
そういうことで楽しんでほしいですね。
(高橋さん)
「スマブラ2」で会いましょう(笑)。
(吉川さん)
やんのかい?
(高橋さん)
やりまっせ!
モーション増やして、キャラも増やして。
(桜井さん)
いやいや、そんな話はまったくありませんよ(笑)。
でも仮に「スマブラ2」を作ることになって
キャラ増やすとしたら、何がいいですかね?
(吉川さん)
そりゃもちろん、女性キャラ!
(インタビュー終わって)
とにかく楽しいお話が終始交わされたモーションチームの
お二人でした。決して楽な作業ではなかったはずなのに、
終わってからこんなに明るく語れるなんて、いいなぁ。
次回はデザインチームのスタッフに伺います。お楽しみに。
「スマブラ大攻略!もっと教えて 桜井さん!」
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