第0回 明日から始まるこのコンテンツについて。
こんにちは、今日は明日から始まるコンテンツ
「写真がもっと好きになる。」の
お知らせをしたいと思います。
僕は、このコンテンツを
「ほぼ日」さんと共に進めてまいります、
“I LIKE TODAY”(という会社です)の
清野章宏といいます。セイノと呼んでください。
どうぞよろしくお願い致します!
僕の友人にひとりの写真家がいます。
名前を菅原一剛(スガワラ・イチゴウ)と言います。
1960年生まれ、45歳の写真家です。
僕と彼が知り合ったのは、彼が「湿板写真」という
140年前の技法で撮影を試みていた頃でした。
僕が「なぜ今、古典技法なのですか?」と質問をすると、
彼はこう答えました。
「今のデジカメやフイルムだと
光を撮っても眩しく感じないからなんです」
と。
‥‥ん? 写真を見て、眩しいと感じるって?
写真そのものは発光しないわけですから、
そもそもそんなことはありえない、
と思っている僕に、彼はこう続けました。
「セイノさん、『羅生門』という映画を
見たことがありますか?
あの映画の中で森の木漏れ日が
映るシーンがあるのですが、
僕はそれをとても眩しく感じるんですよ。
あんなふうに光をつかまえたい、
あの眩しい感じを写真に撮りたい、
と思った僕は、いろいろと工夫をしてみました。
けれど、どうしても撮ることができなかったんです。
それは多分、今のデジカメやフイルムが
可視光域‥‥つまり、数値に置き換えて
見える範囲内で作られているからで、
その範囲外はカットされているせいだと思いました。
レコードとCDの関係のようなものですね。
だけど人間には単純に数値で置き換えられないものを
“感じる”という能力がある。
だからそんなデータも技術も全くない頃の写真技法で
撮ってみているんです」
そして湿板という技法で撮った、
ガラスにプリントされた「木漏れ日」の写真を
見せてくれました。
驚いた事に──僕はその写真を見て目を細めました。
眩しい、と感じたのです‥‥。
それはほんとうに“あかるい”写真でした。
(クリックで拡大します)
彼は今年、その湿板写真を持って
ニューヨークに行きました。
彼の写真は認められ、
そして念願のPACE/MACGILLという
Robert
FrankやIrving
Pennも所属するギャラリーから
デビューする事が出来ました。 ギャラリーからデビューする事が出来ました。
写真家にとってそれは
とてもとても名誉なことだそうです。
でも彼はそれが嬉しい事ではあるけれども、
最終目標ではないんだ、とも言うのです。
ほんとうにやりたいことは、
もっと「写真」というものを通じて
たくさんの人とコミュニケーションを図ることなんだ、
と。
(クリックで拡大します)
明日から始まるこのコンテンツは、
そんな菅原さんを先生として、毎週金曜日に
「毎日がちょっと楽しくなるような、写真との付き合い方」
を教えてもらおうという内容になります。
それに合わせて菅原さんの作品も毎回紹介していきますので、
楽しみにしていて下さいね。
それから僕の方も、たまに、
コラムや撮影レポートを担当する予定ですので、
そちらもよろしくお願いします。
ちなみに僕は、菅原さんにさそわれて
生まれて初めてカメラを買いました。
ちょっと古いものなんですが、
HEXARという、コニカの出したフィルムカメラです。
つまりは、僕も、これから写真を一緒に勉強していきます。
さてそれでは、今回は「連載のはじめに」ということなので、
菅原さんの人柄を表すエピソードを
ひとつご紹介したいと思います。
今から3年ほど前、当時僕には小学生の子供がいて、
菅原さんは「子供の進級祝いに百科事典をプレゼントしたい」
と言ってくれました。僕は「有難いけど、
このインターネットが普及した時代に
なぜ百科事典なんだろう?」と思い、
彼にそのことを訊いてみました。
すると彼はこう答えました。
「百科事典は調べたいことがあると、
当然ページを捲っていくよね。
でも子供はね、大抵調べたいことに辿り着く前に、
途中のページで興味深いものを発見して、
そこで寄り道をしちゃうんだよ。
そして、なかなか目的のページに辿り着かない。
でもそれは悪いことじゃない。
その寄り道こそが、
実は感性を育ててくれるんだと思うよ。
だからこそセイノさんの子供には、
百科事典をプレゼントしたいんだ」と。
そしてその言葉は、彼が小学生の頃の
実体験をもとに言ってくれていたことだと知り、
書物から得た知識をひけらかすわけではなく、
自分の体験を元に自然に話してくれる彼を
僕は信用できると人だ思いました。
そんな彼が、写真のゼロからしてくれることに、
僕はとても期待と楽しみを感じているのです。
ではおしまいにちょっとだけ、
このコンテンツのプログラムをご紹介しますね!
まずは「写真の始まりは、いつもお散歩」
次は「びくびくしながらも、真正面」
そして「本当に正しいカメラの選び方」
くわえて「何が何でも、失敗は成功のもと」
本当か?「誰でも10分で写真集を作れる方法」
‥‥などなど、タイトルを並べてみただけでも
ユニークな写真教室となりそうです。
でもこれだけではなく、ほかにもまだまだ
教えてくれることが沢山ありそうです!
ということで、明日からの連載を
どうぞ楽しみにしていて下さいね。
これを読んでいくうちに、
あなたの写真もきっと変わってくると思いますよ!
(もちろん、僕のも!)
I LIKE TODAY 主宰
清野 章宏 |