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第21回 光の色を意識しながら、
     撮ってみよう。



30/04/2006 07:15 at Daikanyama,Tokyo
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つい先日まで、美しい花を咲かせていた桜の樹も、
今ではすっかり青々と、新緑の葉で覆われています。

この桜の新しい葉というのは、薄くて光を通すので、
重なり合う様もなかなかきれいですよね。
特にその樹の下の、木漏れ日の中は、
とてもあたたかくて、やわらかい光があって、
ぼくはその感じが大好きです。

一枚目の写真は、
先日、たまたま早起きしたら天気が良かったので、
気持ちよさそうだなーと、思わず外に出て、
フラフラと近所を散歩したときに撮影したものです。

第14回「写真のために、まわり道をしてみよう。」
でもお話ししましたように、
春の光は、キラキラとしていてとてもきれいです。
その上、特にこの日は、
その光が「金色」に見えるほどに
光そのものが、輝いていました。

光というのは、反射したり、通過したり、
しみ込んだりするものですよね。
だから、ぼくたちの目に実際に見えている光だって、
同じ晴れの日でも
大気の状態や、ちょっとした角度の違いによって、
「まったく同じ」に見えることはありません。
自然光のもとでは「まったく同じ光」というのはなく、
つまり、光には「いろんな種類」がある。
そして、その色にしても、同じように、
「いろんな色」があるのです。

きっと皆さんも、何となくであったとしても、
その違いみたいなものは、
今まで何度も、感じたことがあるのではないでしょうか。
そこで今回は、
そんな“光の色”を意識しながら、
写真を撮ってみましょう、というお話です。

感じた光を、そのまま写すには‥‥?

ではまず最初に、写真でその光の色をとらえる上での
ちょっとした決まり事を、
簡単に、お話ししておきますね。
(とは言っても、これは特に覚える必要はありませんので
 さらっと読み流して下さい。)

まず最初に、フイルムカメラの場合。
最近ではあまり知られていないのですが、
市販されているフイルムには、2種類のタイプがあります。
ひとつは、皆さんが一般的に使っているフイルムで、
「デイライトタイプ」というものです。
これは、読んで字のごとく、
基本的には、デイライト(太陽光)の下で
使用するために作られたものです。
そしてもうひとつは、「タングステンタイプ」。
フイルムを使って、電球の下で写真を撮ったときに、
自分が実際に感じていた以上に、
赤く写ってしまった経験があるひとも多いかと思いますが、
こちらは、その電球の下で
使用するよう作られたフイルムです。
なぜ2種類のフイルムがあるのかと言いますと、
太陽光と電球という、2つの異なった種類の光を、
ひとつのフイルムでは、対応しきれないからなのです。

これは光源が明らかに違う顕著な例ですが、
それだけではなくて、特に太陽光の場合は、
例えば、朝と夕方では、何となく光の色が違いますよね。
‥‥ここから、その違いについて詳しく話すと、
とても専門的な話になってしまいますので、省きますが、
とにかく、同じ光でもそれほどに大きな差があるということを、
何となくで構わないので、
ちょっとだけ、知っておいてくださいね。

一方、デジタルカメラの場合は、
通常の「オート」の設定にしておけば、
カメラ側でその場の光に合わせてくれます。
だからフイルムを使用する時のように、
いろいろと光の違いみたいなことに
気を配らなくてもよかったりします。
しかし、それでも時には、
そのカメラが、自動的に合わせてくれる光の色の感じが
その時に感じた、自分の印象と少し違うな、
ということがありますよね。
目に見えている光と、液晶モニタに写っている光が、
なんとなく、そぐわない感じがすることが。

そのように“光の色”に対して違和感を感じてしまった場合、
デジタルカメラの場合はどうすればよいのでしょうか。
もちろんパソコンに詳しい人は、それこそ後で、
自由自在に、その色さえも変えることが出来るのでしょうが、
それ程パソコンに詳しいわけではない場合は、
どうしたらいいのでしょう?
これもそんなに難しくはありません。
デジカメの設定を、
自分ですこしだけ変えてみればよいのです。

どんなデジカメにも、オート以外に、
晴れマークだったり、曇りマークだったりというように、
その時々の撮影状況を設定することが出来るようになっています。
何となく、色の感じが違うなーと思ったときは、
まず、そこを少し変えてみて下さい。
そして、その時あなたが感じている色に
最も近い設定で、撮ってみて下さい。

そうやって、光の色に気を付けて撮られた写真は
どういうふうな仕上がりになるでしょう?
まず、そうすることで、今まで写らなかった
「光の色」みたいなものが、
少しずつ写ってくるはずです。
そして、その写真は、
より一層の臨場感を持ってくるはずです。

気持ちと、光の、両方を意識してみよう。

ぼくがいつも、写真を撮っていて面白いなーと思うのは、
この光に対する印象というものが、
いまお話しした具体的な事柄だけではなく、
実はこちら側の、気分によっても
かなりの差があるということです。

例えば、一枚目の写真を撮ったとき、
ぼくは「気持ちのいい朝だなぁ」
と思って撮っているわけです。
だから余計に、その光も金色に見えたのかもしれません。
逆さまに、「何となく、気の乗らない朝だなぁ」
と思っているときは、
そこに、同じ光があったとしても、
同じように感じることは、出来なかったはずです。

これまでにぼくは、この連載を通して、
思いというものは写真にあわられるし、
あなたが被写体を見ている気持ちが、
あなたらしい写真をつくるということを
くりかえしお伝えしてきました。
でも‥‥ときにはそんな気分になれないときもあります。
そんなときは、少しだけ光の色を意識してみてください。
すると、気分さえも、驚くほどに、変わることがあります。
そして、光の色を感じることで、
ものの見え方だって、大きく変わってくるのです。

そんな風にして写真を撮ってみて、
もしも、自分なりに感じている色が写ったりすると、
うれしいし、楽しいものですから。
よく言う「写った!」というのは、
そういうことも、関係しているのかもしれませんね。。



虹は7色と言いますが、
実際の光の色は、7色どころの話ではありません。
おそらく、区分することが出来ないほどに多種多様です。

ということは、あなたが感じた分だけ、
色の種類は、あるということです。
そう考えると、写真を撮ることだって、
それだけでも、ちょっと楽しみになってきませんか。

外は、まだまだキラキラとした光が続きそうです。
暖かくなってきたことですし、
カメラを持って、光の色を楽しんでみましょう。



この写真は、先日の東京観光写真倶楽部の撮影会の時に
築地で撮影した一枚です。日本は電球というよりも
蛍光灯が多いので、その下でフイルムで普通に撮ると、
このように、少しグリーンっぽく写ります。
でもぼくは、このグリーンっぽさが、
かえって、アジアな感じで、いいかなと思っています。
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次回は
「デジカメなんて嫌い、でもデジカメも好き」
というお話をします。お楽しみに。


2006-05-12-FRI
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