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富澤先生、ありがとうございました。
ひとまずこれで、
「六度法」の基本を教えていただいたと、
そのように考えてもよろしいでしょうか。
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富澤先生 |
そうですね、細かい部分は抜きにしまして、
3つのルールを踏まえていただければ、
まずはきれいな字の領域に入っていけると思います。
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なるほど、わかりました。
それでは、生徒のおふたりにはですね、
本日の授業を振り返って、
基本編の卒業試験のようなことを
やっていただこうと、思います。
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西田 |
卒業試験?
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ナカバヤシ |
な、なにをやるんですか?
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目の前のホワイトボードに、
「ほぼ日刊イトイ新聞」と書いてください。
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西田 |
ああーー、それはきつい。
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それを先生に採点していただきます。
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ふたり |
ええーーー(笑)。
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富澤先生 |
採点しましょう(笑)。
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ナカバヤシ |
すごい、困った、ドキドキする(笑)。
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ちなみに、
「ほぼ日刊イトイ新聞」の中には、
漢字、ひらがな、カタカナがぜんぶ入ってます。
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西田 |
はあー、そうかあ、そうですね。
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ナカバヤシ |
ホワイトボードに書く前に、
ちょっと練習させてください。
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西田 |
自主練させてください。
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わかりました。
でも、ちょっとだけですよ。
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ナカバヤシ |
ひゃー(練習する)。
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西田 |
うわぁ(練習する)。
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‥‥ん?
西田くん、その字は‥‥。
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西田 |
え? なんですか?
‥‥あ、まずい、これはまずい、ほんとにまずい。
(書いた字を塗りつぶす)
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まさかの、誤字。
新聞の「新」の字を間違えました。
「親」と書いてしまいました。
「ほぼ日刊イトイおやぶん」(笑)。
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西田 |
き、緊張してるので。
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ターイム・アーーップ!
練習終了ー。
では、ホワイトボードに書いてください。
どちらからいきます?
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ナカバヤシ |
‥‥‥‥‥‥。
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西田 |
‥‥‥‥‥‥。
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ふたり |
‥‥さいしょはグー、
ジャンケン、ポン!
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ナカバヤシ |
勝った。
‥‥先に行きます(立つ)。
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西田 |
先ですか。
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ナカバヤシ |
当然です、
進んで先に行くべきでしょう(前に出る)。
‥‥自分の名前も書くんですか。
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もちろんです。
テストは、名前書かないと零点です。
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ナカバヤシ |
わかりました。
じゃあ、書きます。
‥‥ひゃあーーー、緊張(笑)。
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西田 |
ナカバヤシさん、がんばって。
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ナカバヤシ |
‥‥(集中)。
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西田 |
‥‥‥‥あ、きれい。
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ナカバヤシ |
(書きながら)このホワイトボード、
薄くマス目が書いてあるんですよ、
だから右上がり六度で書きやすい。
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西田 |
それはほぼ日手帳といっしょですね。
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ナカバヤシ |
‥‥(書いている)‥‥よいしょ。
こうやって‥‥こんな感じでどうでしょう。
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西田 |
すごい、きれいです。
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ナカバヤシ |
じゃあ、次、西田くんも。
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西田 |
‥‥はい(ボードの前に立つ)。
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ナカバヤシ |
リラックス。
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西田 |
‥‥よし。
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ナカバヤシ |
すごい集中力(笑)。
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西田 |
‥‥(集中)。
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富澤先生 |
‥‥‥‥。
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西田 |
‥‥‥‥イトイ‥‥新‥‥
親じゃなくて‥‥新‥‥聞‥‥と。
はい‥‥書けました。
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お疲れさまです。
ありがとうございました。
じっくり眺めてみましょう。
これがふたりの作品です‥‥。
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ナカバヤシ |
‥‥どうなんでしょう?
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西田 |
恥ずかしいものですね(笑)。
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では、富澤先生、
お願いいたします。
遠慮なく点数を付けてください。
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富澤先生 |
‥‥(ホワイトボードに歩み寄り)わたくし、
感心して拝見していました。
中林さん、93点。
西田さん、87点。
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一同 |
おおおーーーーー!(拍手)
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ナカバヤシ |
すごい高得点。
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西田 |
よかったぁ、やさしい先生で。
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一同 |
(笑)
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富澤先生 |
おふたりとも、右上がり六度を
十分に意識されていましたので、
それだけでかなり合格点なんです。
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ナカバヤシ |
右上がり、気をつけました。
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富澤先生 |
中林さんは、最初のこれですね。
「中」の角度から、もう、すばらしいです。
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ナカバヤシ |
ありがとうございます。
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富澤先生 |
西田さんも、いいですね、この角度。
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西田 |
ありがとうございます。
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富澤先生 |
「日刊」という漢字も、右上がりで、
右下に重心をしっかりかけてくださいました。
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富澤先生 |
西田さんも、ここはいいですね。
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ナカバヤシ |
カタカナでちょっと迷ったんですよ。
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西田 |
そうそう、右上に六度が‥‥。
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富澤先生 |
それは先ほども言いましたが、
「イ、ト、ノ、ヘ、ム、メ、レ」の
7文字だけは例外で、
六度法に当てはまらないんです。
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ナカバヤシ |
あ、そうでした、うかがいましたね。
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西田 |
「イトイ」は六度法ではなく、
ふつうにていねいに書けばいい。
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富澤先生 |
そうです。
あとはそうですね、
惜しかったのは「新」の字です。
右側の書き出しを、
もうすこし上から、
六度上から書けばもっと落ち着きます。
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ナカバヤシ |
あーーー。
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富澤先生 |
すこし細かいことを言いますと、
中林さんの「林」という字は、
このようなバランスでお書きになりますと、
また安定してまいります。
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ナカバヤシ |
ほんとですね‥‥。
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富澤先生 |
さらに、書いているところを拝見してまして、
お名前の書き順が違うようで。
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ナカバヤシ |
え。
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富澤先生 |
「華」と「恵」という字はですね‥‥(書く)、
このような書き順になります。
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ナカバヤシ |
‥‥どうしよう、わたし、
ずーっと書き順を間違えてました。
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西田 |
えー(笑)。
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富澤先生 |
正しい書き順のほうが書きやすくもありますし、
理にかなった動きで整って仕上がります。
ですので、ご自分のお名前の書き順は
覚えておいたほうがよろしいかと。
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ナカバヤシ |
ありがとうございます、そうします。
いやぁ、ずっと正しいと思ってました。
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さて、いかがでしたでしょうか、
今日の授業は。
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ナカバヤシ |
はい、たのしかったです。
この短時間で簡単なルールを教えていただいて、
こんなに効果があるんですね。
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西田 |
ちょっと、やっぱりびっくりしました。
ぼくはもう、もともとがほんとに
きたない字だったので、
はっきりときれいになったと自覚してます。
あとは、このていねいさを維持したいです。
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最後に、先生に質問があれば。
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ナカバヤシ |
左利きの人は、どうなるのでしょう?
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富澤先生 |
左利きのかたの場合も、何も変わりません。
3つのルールは、まったく同じです。
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ナカバヤシ |
右上がり、六度で書いて。
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西田 |
文字の右下に重心をかける。
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富澤先生 |
そう。
点や線の間隔を等しくするというのは、
わりと自然にできますので、
重要なのは、第1第2のルールで、
それはまったく左利きの方も同じです。
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西田 |
筆記具の持ち方は、どのように?
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富澤先生 |
それについて私はですね、
「お好きなように」って言ってるんです。
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西田 |
あ、そうなんですか。
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富澤先生 |
どんな持ち方でも構いません。
極端なことを言えば、
グーで握って書いたって構わない。
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ナカバヤシ |
へええーー、自由なメソッドですねぇ。
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富澤先生 |
例えば、申し分ない持ち方をしても、
「川」という字を非等間隔で書いたら
きれいな字にはなりません。
つまり、どんなふうに持とうが、
3つのルールを使うことが
カギになるということですね。
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西田 |
3つのルール、すごいな‥‥。
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ナカバヤシ |
いやぁーー、おもしろかったぁ。
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西田 |
おもしろかったです。
この時間ですごく自分が成長したような。
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富澤先生 |
よかった(笑)。
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ナカバヤシ |
富澤先生、
きょうはほんとうにありがとうございました!
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西田 |
ありがとうございました!
来年の手帳は、積極的に使えそうです。
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(この連載は、これでおわります) |
※最後に、富澤先生から
メッセージをいただきました。 |
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