東京と岩手、東京とエチオピア。

──
いつもおふたりで、
お酒を飲んでらっしゃるとのことですので、
本日は、その雰囲気でお願いします。
酒井
わかりました。
鮫島
いやいやいや、ダメでしょうアレは(笑)。
──
はい、ぜひ、今みたいな楽しい感じで、
麦茶ですみませんが、
どうぞ、よろしくお願いします(笑)。
鮫島酒井
はい、よろしくお願いします(笑)。
──
まず、鮫島さんがエチオピアで立ち上げた
上質なエチオピアシープスキンのブランド、
アンドゥアメット(andu amet)のカバンが、
個人的に、ずっと気になっていました。
鮫島
わあ、ありがとうございます。
──
日本の製品にはない色遣いとデザインで、
素敵だなあと思っていたんです。

女性ものだけなのかなあと思っていたら、
最近、メンズも出たんですね。
鮫島
ええ、以前から、男性向けのバッグを
つくってほしいというご要望を
いただいていたので、
男性にも女性にもお使いいただける
ユニセックスのバックパックやトートバッグ、
お財布なんかをリリースしました。

おかげさまで、なかなか好評です。
──
一方で酒井さんとは、
震災直後の東北まわりで知り合いました。

東京でご家族と暮らしながら、
お米からエタノールを抽出する事業を、
岩手の奥州市で立ち上げて、
毎週のように通いはじめられたころで。
酒井
はい、そうでした。
──
当時の仕事場にも、
いちど遊びに行かせていただきました。
酒井
そうですね‥‥あの、古くて寒い‥‥。
──
ええ、廃業された酒蔵をラボとして、
お米からエタノールを抽出されてました。

こう言ったら何ですが、
当時は、立ち上げたばかりだったからか、
抽出のための設備なども、
非常にハンドメイドな雰囲気でしたよね。
酒井
ええ、そのとおりです。半ば手づくりで。

あの蔵に愛着はあったんですけど、
なにせ古くて、窓ガラスも割れていたし。
──
訪問当日、その割れたガラスの隙間から、
蔵の中に雪が舞っていたんです。

その光景が、射し込む光とも相まって、
とても幻想的だったことを覚えています。
酒井
そんな、いいふうに言ってくださって。

あのときも、まるで
紅白の北島三郎のステージのようだと、
おっしゃってくださったんですよ。
──
え、そうでしたっけ‥‥。

すみません、
あんまり覚えていないのですが(笑)。
酒井
あの時期は、岩手県奥州市の事業として、
実証実験をしていたんです。

いろいろ試行錯誤していましたが、
その後、一帯を再開発するということで、
今の場所に引っ越しました。
──
じゃあ、あの蔵には、もう?
酒井
はい、いません。

ご存知のように、冬には底冷えがして、
身体が凍えきってしまうので、
同じ奥州市内に、
狭いけど、いい場所を見つけたんです。
──
では、今はそこで、
お米から抽出したエタノールを使った
洗顔石鹸とか消臭スプレーを、
開発してらっしゃるというわけですか。
酒井
はい、そうです。ボディミルクとか。
──
一方、エチオピアは暑いわけですが‥‥。
鮫島
いえ、エチオピアは「寒い」です。
──
え。
酒井
へぇ!
鮫島
アフリカは暑いところというイメージが
ありますけど、
わたしが住んでいるところは、
標高2400mくらいあって、寒いんです。
──
それは、ものすごく意外でした!
でも、寒いと言っても、どれくらい‥‥?
鮫島
朝晩は10度を切ります。

とくに、雨季にはけっこう冷え込むので、
レザー製品がよく売れるんです。
──
そうだったんですか‥‥知らなかった。
アフリカが「寒い」だなんて。
鮫島
日本の秋冬商戦を狙うとなると、
夏の時期に生産の追い込みをしますから、
日本の春と夏は、絶対に、
エチオピアにいないといけないんです。

わたし、昔から寒いのが大の苦手なので、
春と夏を日本で暮らして、
秋冬になったら、
どこか暖かい‥‥南の国で過ごす生活に、
ずっと憧れていたんです。
──
一年中暖かいところへ、渡り鳥のように。
鮫島
それなのに‥‥
今は、日本が暖かい春と夏には
寒いエチオピアにいて、
エチオピアが暖かい秋と冬の時期には、
寒い日本にいるという‥‥。
──
つまり「一年中、寒い」と。
憧れとは、つねに現実と裏腹ですね。
鮫島
そうなんです。
──
そんなおふたりが、
以前から仲良しだったということを知り、
ぜひ一緒にお話を、と思いました。

それぞれ、東京とエチオピア、
東京と岩手を行ったり来たりしながら、
活躍されている起業家として、
いろいろお話をおうかがいできたらと。
酒井
えー、そんな、ちゃんとしたテーマが!
──
はい、いや、いいえ(笑)、
ふだんどおりの雑談をしていただければ、
きっと大丈夫だと思います。
酒井
きっと、居酒屋のノリになっちゃう‥‥。
──
いいと思います。
鮫島
いやいやいや、ダメですよアレは(笑)。

<つづきます>

2017-05-15-MON