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すみません、こんなお忙しいときに。
よろしくお願いいたします。
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柴田 |
こちらこそ、よろしくお願いします。
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ゾーヴァさんの展覧会のお話を
いろいろとうかがっている中で、
「図録の編集者さん」
ということばを耳にしまして。
ぜひそういうご職業のかたにお会いしたくて、
ここまでお邪魔してしまいました。
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柴田 |
私は図録専門というわけではないので、
くわしいお話ができますかどうか‥‥。
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── |
あ、ご専門ではないのですね。
ふだんはどのようなお仕事を?
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柴田 |
絵本関係の編集です。
あとは絵本に関する取材や執筆などを。
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── |
なるほど。
図録の編集は、今回が何冊目になるのですか?
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柴田 |
図録は‥‥ええと、
これで6冊目になります。
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── |
ご専門ではないとはいえ、6冊も。
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柴田 |
ええ、そうですね。
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── |
あの、図録というのは、
展示されている原画を観たすぐそのあとで、
手にするものですよね。
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柴田 |
はい、基本的には、
会場で購入するものですから。
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── |
ということは、
印刷物に原画との違いがあれば、
最も気づかれやすいといいますか‥‥。
やはり色の調整には
そうとう神経をつかわれるのでしょうか。
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柴田 |
そうですね‥‥。
ですが、毎回こうして
原画をみながら校正できるわけではないんです。
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── |
そうなんですか。
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柴田 |
画集と同じだと思っていただければ
わかりやすいと思うのですが、
原画をみられない状態で
編集を進めるケースも多いんです。
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── |
そうでしたか。
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柴田 |
昔は画集をつくるために
ルーブル美術館まで色校正をしにいくとか、
そういう方もいらっしゃったと
印刷会社の方から聞いたことがあります。
でもさすがに、
今の時代そこまではできないですから。
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── |
なるほどぉ。
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柴田 |
展覧会の場合でも進行上の都合で、
原画をみながらの色校正というのは
なかなかできないことなんです。
私は初めてですね。
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── |
はぁ~、そういうものなのですね。
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柴田 |
今回はたまたま偶然、
時間的にそれが可能になりました。
でも図録の進行としては遅くて、
もう、ぎりぎりなんです。
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── |
ぎりぎり。
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柴田 |
通常の進行だと校正が終わったころに
原画が到着するんです。
なので、到着した絵と図案をくらべてみて、
「あ、色が違う」ということも結構あります。
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── |
ああー。
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柴田 |
たぶん海外から作品が来る場合は、
そういうことが多いと思います。
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── |
ということは、編集作業としては
ぎりぎりでたいへんかもしれませんが、
いま、この作業、
これをやれているのは、柴田さん、
すごく楽しいのではないでしょうか?
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柴田 |
はい、そうですね(笑)。
ぎりぎりなんですけど、
こんなふうにじっくりと原画を観られるなんて
ほんとうに珍しい機会なので。
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── |
実物があるわけですから、
かなり厳密なチューニングができるし。
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柴田 |
はい。
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── |
クオリティの高い図録ができそうですね。
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柴田 |
だといいんですけど‥‥そうですね。
原画に忠実に、と思いながら進めています。
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── |
それでは最後に、
平凡な質問になってしまうのですが、
今回の展覧会のみどころを
うかがってもよろしいでしょうか。
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柴田 |
わかりました。
やはり、あの、原画を観ていただきたいですね。
すごい絵だと思います。
印刷物でみていたときは、
もっと大胆に描いていると思ってたんですが、
原画はすごく精緻で、
筆の跡がぜんぜんわからない絵もあるんです。
人の手で描かれたことが信じられないような
なめらかなタッチで。
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── |
海の表現とか、すごいですよね。
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柴田 |
はい、海もそうですね。
そうとうな集中力と、
時間をかけて描かれたんだと思います。
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── |
原画を観ると、
そういうこともすごく伝わってきますよね。
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柴田 |
それと、ゾーヴァさんは
長い年月に渡って描いてらっしゃるので、
色づかいの好みが変わってくるんですよ。
図録を作りながら、それがよくわかりました。
ページの前半はダークな色が多くて、
後半にいくにしたがって赤が入ってきたりして
あかるくなっていったり。
展覧会場でもそれはわかると思うんですけど、
観たあとで「ああ変わっていくんだ」
というのを感じられると思うので、
あわせて図録を手に入れていただけると
うれしいですね。
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── |
わかりました、ありがとうございます。
楽しい色校正を中断させてしまって、
すみませんでした。
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柴田 |
いえ、こちらこそ、ありがとうございました。
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柴田さんが編集された、
「ミヒャエル・ゾーヴァ展」はもちろん完成しています。
このようなかわいい表紙で。

税込価格1890円
展覧会場にて限定販売されていますので、
お出かけになられた方は、ぜひ。
さて、3回に渡ってお届けしてきた
このコンテンツも、今回で終了となります。
お話を聞かせてくださった、
3名の関係者のみなさん、ありがとうございました!
東京での「ミヒャエル・ゾーヴァ展」は、
5月11日まで開催されています。
そして6月には京都へ、
9月は横浜へと巡回してまいります。
お近くの方は、この貴重な機会に、
ゾーヴァさんの絵を観にいってみませんか?
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(おわります) |