ほぼ日手帳のあらたなる形「ほぼ日手帳ジッパーズ」。
大容量を実現すべく、ジッパーを採用した
これまでのカバーとは形が大きく異なるカバーです。
でも、それ以外にも
これまでのカバーと違う部分があります。
それは素材。
ジッパーズは帆布素材を使った初めてのカバーなんです。
しかもその帆布素材には
謎の「パラフィン加工」が施されています。
この「パラフィン加工の帆布」という素材は
実際のところどういうものなのかを知るために
今回のジッパーズの生地をご担当してくださった
仙田株式会社の静谷功さんにお話をうかがいました。
同席したのは、ジッパーズの製造に携わった
株式会社ケンツーの篠原規良さんです。

ほぼ日 今回、ほぼ日手帳ジッパーズには
「帆布」を採用しましたが、
そもそもこの「帆布」というのは
どういう素材なんですか?
静谷 帆布というのは、綿や麻を使って
平織りで織られているの生地のことです。
主な用途としては、
トラックの荷台にある荷物を
雨風やほこりから防ぐためにかけておく幌(ほろ)や
帆船の帆などの工業用製品で使われています。
最近だとバッグなんかの「袋もの」など
ファッショアイテムにも
よく使われてますね。
ほぼ日 用途として幅が広いですね。
静谷 やっぱり厚手で丈夫というのは大きいと思います。
トラックの荷台で荷を守ったり、
帆船の命ともいえる帆となる生地ですからね。
いま、厚みと言いましたが、帆布は厚みによって
「号」という段階に分けられます。
0号から11号まであって、0号が一番厚くて重く、
11号が一番薄くて軽いというわけです。
ちなみに0号と11号を1平方メートル分で比較すると
約3倍の重さになります。
ほぼ日 ひゃー、重い!
ちなみにこのほぼ日ジッパーズで使っているのは?
静谷 いちばん軽い11号ですね。
一般的にファッションアイテムとして使われるのには
このくらいのものが多いです。
ほぼ日 でも、このジッパーズに使われている帆布は
ただの帆布じゃないんですよね?
静谷 えぇ、このジッパーズの帆布もそうなんですが、
一般的な帆布には「パラフィン加工」なる
加工が施されているものが多いんです。
ほぼ日 パラフィン加工?
静谷 帆布は綿や麻を使うので
そのままでは水を吸ってしまいます。
パラフィン加工っていうのは
それを防ぐ「撥水」のための加工なんです。
ほぼ日 どういう加工なんですか?
静谷 生地を「ロウ」に漬けたりするんです。
ほぼ日 ロウ? ロウって
「ロウソク」のロウを?
静谷 そうです。
生地の表面をコーティングするんです。
ほぼ日 ロウで表面を?
じゃあ表面は固くなるんですか?
静谷 そうですね、使い始めのうちは
固さを感じるかと思いますが、
使いこんでいくうちに、
柔らかくなっていきます。
デニムを思い描いていただくと
わかりやすいかと。
デニムって使い込んでいくうちに
色が部分的に落ちていったりして
味が出てきますよね。
ほぼ日 うんうん。
俗に言う「エージング」ですね。
静谷 パラフィン加工の帆布も同じで
デニムのようにこすれて「アタリ」がついたり
折り目の部分に線が浮き出たりする
「チョークマーク(白化)」などが出てきます。
デニムと同じように
エージングを楽しむ生地として人気があるんです。
ほぼ日 なるほど。
静谷 もともとは工業用品の利用のみで
ファッション性はまったくなかったんですが、
この「エージング」という概念が生まれたことで
一気にファッションアイテムの素材として
取り入れられるようになったんです。
ほぼ日 工業用品の利用のみ、ということは、
今回のグリーンのように
カラフルなカラーが揃っているものではない?
静谷 そうなんです。
だいたい黒やカーキのような色しかないですね。
もともとパラフィン加工を施した帆布というのは
「色が沈む」と認識されていて、
鮮やかな色をあまり作られていませんでした。
今回のこのグリーンの帆布も
ジッパーズのために作ったものなんです。
ほぼ日 じゃあ「グリーンでお願いします」と
依頼が来たときは‥‥。
静谷 驚きましたね。
「こんな色を?」という感じでした(笑)。
ほぼ日 ですよね?
静谷 指定していただいた色と
同じ色が出せるか心配でしたが、
でも、実際に出来た色を見てみると
すごくいい色に仕上がったな、と思います。
ほぼ日 自分たちで言うのもなんですが、
本当にこのグリーンはいい色だと思います。
もういっぽうのネイビーのほうは
既存の生地を使ってるんですか?
静谷 いや、じつはネイビーのほうも
新たに作った生地なんですよ。
こっちは「鮮やかさ」ではなく
「色の深み」みたいなものを出したくて
一から作り出しました。
「青をより青く」とでも言いましょうか。
こっちもいい色に仕上がったと思います。
ほぼ日 うんうん、こっちも
これまた自分たちで言うのはなんですが。
いい色に仕上がったと思います。
静谷 (笑)
ほぼ日 生地がこれだけのものができあがったとなると
実際にカバーに作りあげるほうも
大変だったんじゃないですか?
篠原 もう大変でした。
パラフィン加工なしの帆布で
バッグを作る場合なんかは縫製を間違っても、
ほどいてまた縫い直すということができるんですが、
パラフィン加工がされていると、
間違って縫ったところがわかっちゃうんです。
ほぼ日 あ、なるほど。
縫った跡が残っちゃうんですね。
篠原 そうです。
やり直しがまったくきかない。
間違ったらアウト。
それこそパラフィン加工っていうのは
少しぶつけただけでも白く跡がついちゃうので
扱いに気をつけないといけないんですね。
ほぼ日 すごいナイーブ。
このパラフィン加工の帆布っていうのは。
革みたいですね、
静谷 そうですね。
でも、そのナイーブさっていうのは
縫製するまでの話です。
せっかくのパラフィン加工なので
ガンガン使いこんで
エージングを楽しんでほしいですね。

(おわり)

2011-09-30-FRI
 
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