糸井 |
レム睡眠時の脳波を測定すると、
まるで、起きているかのようなパターンを示す。
それは、制約をとっぱらって、
脳が自由にふるまっている、ということなんですね。 |
高橋 |
だから、レム睡眠って
いったいどんな役割を果たしているのか、
よくわかってなかったんですよね。 |
糸井 |
脳が活発に動いて、夢を見てたりするから
眼球とかも動くんですよね、レム睡眠のときって。 |
高橋 |
ええ、それで
「Rapid Eye Movement」の頭文字をとって
「REM=レム睡眠」と。
ですから、赤ちゃんなんかも、
眼がキョロキョロ動いてるようなときに起こしてやると、
比較的、機嫌よく起きるんですよ。
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糸井 |
そうか、僕は大人になってから
夢を見なくなった‥‥んだと思ってたんです。
それって、深い「ノンレム睡眠」の段階で
毎朝、起きてるんだ‥‥。
しかも、寝覚めも快感じゃないことが多いし。
これらがぜんぶ、
密接に関係しているということなんですね。
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高橋 |
もっとも、夢は見てても気づかない場合もありますし、
じっさい見てないってこともありますが。 |
糸井 |
逆に、何かを感じながら、というか、
うっすら意識があるような状態で起きるときって、
たしかに快適な気がしますね。
いま、思い当たったんですけど。 |
高橋 |
ええ、その場合は
レム睡眠時に目覚めているということでしょうね。 |
糸井 |
健康的なパターンで、起きている。 |
高橋 |
ま、そう言っていいのではないでしょうか。 |
糸井 |
なるほど‥‥それじゃあ
先生がいま、研究されている
グリシンというアミノ酸を眠るまえに摂ると
深く眠れる、つまり「満足のいく眠り」を
得られそうだというのは、なぜなんですか。 |
高橋 |
就寝前にグリシンを摂ると、
すみやかに深い眠りに入ることができる。
これは、理想的な眠りのパターンにとって
とても重要なことなんですが、
わたしたちが、そのことに気づいたのは、
きわめて「偶然の産物」だったんです。 |
糸井 |
ほう、偶然‥‥。 |
高橋 |
それまで、グリシンというアミノ酸には
なんの作用もないだろうと言われていたんです。
そういうものだったので、
他のアミノ酸の効果効能を調べるための
プラセボとして使っていたんですね。 |
糸井 |
つまり「偽薬」ですね。 |
高橋 |
はい。ある薬の効果を調べたい場合、
なにか別のものと比較対照しなければならない。
その場合に用いられる「ニセの薬」です。
で、あるとき、ある試験に参加していた研究員が、
「このごろ、あなた
いびきをかかなくなったわねぇ」なんて
言われたらしいんですよ、奥さんに。
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糸井 |
いびき、ですか。 |
高橋 |
当然ですが、そういった試験では
自分が飲んでいるものが、
本来、効能を調査したい薬なのか、
それとも偽薬なのか、わからないようになっている。
で、その「いびきをかかなくなった」研究員の
飲んでいたものが‥‥。 |
糸井 |
偽薬として使われていた、グリシンだった? |
高橋 |
ええ、ええ、そうだったんですよ。
思い当たるふしはなかったんだけれど、
そうだと言うなら、調べてみようと。
朝晩、グリシンを
「10日間飲んで、10日間飲まない」という試験を
やってもらったんですね、その研究員に。
そうしたら‥‥すごくきれいに出てきたんですよ。
飲んだ日と、飲まない日のちがいが。 |
糸井 |
つまり‥‥。 |
高橋 |
飲まない日には「きちんといびきをかく」。
<つづきます>
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