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糸井 |
自我がないまま生きてくっていうのは、
ものすごく難しいですね。 |
谷川 |
自我がないっていうのは
他人を傷つけるんですよね。
それはぼくにとって、いちばんの課題ね。 |
糸井 |
ぼくのほうも、そのとおりです(笑)。 |
谷川 |
ね。 |
糸井 |
永遠にアマチュアだし、
永遠に責任持たないし、
っていうことになりかねない。 |
谷川 |
それに、相手が「のれんに腕押し」みたいに
なってくとこがあるみたいね、
状況によっては。 |
糸井 |
痛いとこ出ちゃったなー!
そうなんですよ!!
でもぼくは、そこをちょっと
変えようとしてるんですよ。 |
谷川 |
うん。
ぼくも変えようとしてるんですよ。 |
糸井 |
いいですねえ。
21世紀にもなりましたし(笑)。
確かに谷川さんにも、変化を感じるんです。
自分の宣伝はできないんですよって言っても、
したほうがいいっていうことまで表明できる。
それはたぶん、昔はできなかったでしょう? |
谷川 |
うん、かもしれませんね! |
糸井 |
ぼくのほうは、単純なんです。
この仕事をはじめて、人を集め出しちゃったんです。
最初は「俺はどうなってもいい」って、
進化したようなこと、言ってたんですよ。
でも、自分の命が安いっていうことは、
やっぱり他人の命も安く見ちゃうことになる。 |
谷川 |
そうそう、そうだよね。
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糸井 |
何かが違うんだろうなぁって、
ずーっと思ってたんですよ。
まず、釣りをやったときに
ボートの修理や釣りする場所を探すことから、
何もかもひとりでやらなきゃいけないということを
まず、感じる時代があったんです。
そのあと、仕事のある先輩から、
「頼まれ仕事」と「こちらからお願いする仕事」の
大きな違いについて、教わったんです。
人が頼んでもってくる仕事というのは、
頼んでくる人が
「そうなったらいい」と思って来るんだ、
って言うわけですよ。 |
谷川 |
なるほどね。 |
糸井 |
頼んでくる人のなかに動機があるんです。
だから、どんなにすばらしく見えても、
王様になって下さいっていうお願いがあったとしても、
ぼくが王様を引き受けることで、
頼んできた人にいいことがあるんです。 |
谷川 |
うん。そうだね。 |
糸井 |
「何を断って何を断らなきゃいいかっていうのも、
わかんなくなっちゃうし、おもしろくないでしょ?」
って言われたんですよ。
どうしてもやりたいことだったら、自分から、
土下座してでも頼むでしょ? と。
例えば、愛だ恋だっていうのも、
頼まれたからいいよ、っていうだけじゃないですよね。
お願いしますっていうこともなきゃ(笑)。 |
谷川 |
なるほどね。 |
糸井 |
もともと自分がやんなきゃいけないことや
やりたいことを探さずに
サボってたのかな? って、
ちょっと思うようになって。 |
谷川 |
単に忙しかったから、っていうのも
けっこう大っきいでしょ? |
糸井 |
それもありますね。
頼まれ仕事で「どうでぃ!」って言ってるうちに、
時はすぎていっちゃう。
でもいまは、頼まれた仕事を、1日置くんです。
すぐに返事しないで、
俺が頼んででもやらしてくれ、という仕事かどうかを、
1日だけ考えるんですよ。
例えばテレビの出演依頼があったときにも、
ありがたいことだから、
ハイっていう気持ちはあるんです。でも、
「こういう番組があると知ってたときに、
俺は、はたして出たいのか?」と、
お願いしに行く仕事かどうかを1日だけ考えるんです。
お願いしますって言いたいな、と思ったときには
それこそ、全力投球。
俺が頼んだんだから、ということですからね。
半端に嫌々やってやるんだ、というような
生意気な態度は、なくなったんですよ。 |
谷川 |
うん、なるほどね。 |
糸井 |
これがね、ぼくの21世紀(笑)。 |
谷川 |
わかりやすいな。
なんか、わかりやすすぎんな(笑)。 |
糸井 |
全部が全部、そうなるとは限らないんですけど、
でも、モテてて嬉しいっていうのは
もうだいたいわかったので、
今度は口説きたくなったんです。 |
谷川 |
それ、実際の恋愛の場合もそうですか? |
糸井 |
恋愛、しなくなっちゃいましたね。 |
谷川 |
ああ、そうですか。
なんか、実も蓋もない話で(笑)。
せっかく「kiss」ってCDもって
来てんのにさ(笑)。 |
糸井 |
ハハハハ。
恋愛はね、しないんですけど、
好きですよ、ものすごくいろんなものが。
所有なしの恋愛に、近くなってる。 |
谷川 |
うん、それはよくわかるな。 |
糸井 |
うん。私はあなたに属します、という関係を
持ってなくても、もう、いいんです。
お互いに嫌ってなければ、そっからまた、
ある瞬間、何か生まれるだろうし。 |
谷川 |
うん、うん(笑)。 |
糸井 |
それにもう、うちは、カミさんいますから。
それも野放しなんですけども(笑)。
好きですよ、とっても。 |
谷川 |
うん、うん。 |
糸井 |
気にならなくなったというか、
遠くで見てられるっていうようなところにきて。 |
谷川 |
うん、うん、うん。 |
糸井 |
はやくこうなりたかったんだなって、
つくづくいまでは思います。 |
谷川 |
やっぱりそれは、年の功ってこと、ありますよね、
たぶん。ぼくよりだいぶ早いけど。
ぼくもだいたいそんな感じなんです。 |
糸井 |
だいたいそんな感じですか。 |
谷川 |
はい。
でも、糸井さんの年ごろのときには、
ちょっとまだ、
そこまでいってなかったんじゃないかなと思う。 |
糸井 |
ただ、こう言ってはいても、
突然の台風が来たりしたときに、
どうするかは自分でもわかんないですね。 |
谷川 |
そりゃ、誰だってわかんないですよ、
ぼくだってわかんないですよ。
むしろ、それを待ち望んでるかもしれないし。 |
糸井 |
良寛様みたいなね。
あるのかな?っていう気持ちは、なくはないです。 |
谷川 |
そう。そりゃあ、ありますよ。
ぼくはいままで、恋愛も
どっちかっていうと受注産業的だったような
気がするのね。
だから「自発的にお願いします」という恋愛を
しようと思って、努力してます。
努力してできるもんかわかんないけどね。
なんか、そうでないといけないっていうふうに
思いますね。
<つづきます。次をおたのしみに!> |