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タナカ |
どうも、こんにちは。
タナカカツキです。
ほんじゃ、ま、たくさん話そっと。
今日は、ここに泊まりこみで? |
── |
あ、あの、いいえ(笑)。
‥‥そういえば、この
「TAROの遺伝子。」のコーナーに
これまでご登場いただいている方々は、
長い時間、たっぷりと
お話をしてくださいました。
みうらじゅんさんは75分のMDを2本分、
田島貴男さんは3本分、
みっちりお話しになりましたよ。
「お酒が入ると朝まで」
というタイプの方が
そろっているのかもしれません。 |
タナカ |
あ、わかるわかる。
僕は、お酒は一滴も飲めないけれども、
飲み会の「朝まで」には、確実に、いる。 |
── |
そうなんですか。お酒なしで、
どういう楽しみ方を? |
タナカ |
トークよ、トーク。 |
── |
朝まで話を? |
タナカ |
いやいや、朝を通り越して、
ほとんど夕方までいます。
ジョナサンとかで昼も晩も食って、
そのまま次の朝ごはんを食って、
そんで、夕方まで。
ジョナサンを家みたいにして、
ジョナサンで生きてる
ときがある。 |
── |
そんなにたくさん、なにを話すんですか? |
タナカ |
芸人の生きざまとか。
視聴率問題とか。 |
── |
‥‥な、なるほど。 |
タナカ |
あるやん?いろいろ。
夜どおししゃべってると
気が立ってくるでしょう。
そういうときは、
家に帰っても眠れないんですよ。
だから、朝に解散するんじゃなくて、
ほんまにしんどーくなるまで
夕方まで時間をのばして
しゃべりきってから解散にするんです。
最後のほうはもう、
完全にダンマリ
の時間があったり(笑)。
そうなってはじめて「帰ろかー」となる。 |
── |
何人くらいで話すんですか? |
タナカ |
だいたい、1対1。 |
── |
い、1対1! |
タナカ |
そういう友達が、何人もいるのよ。 |
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── |
はあ‥‥。ところで田島さんは、
ちょうどタナカさんと同じ年ですね。 |
タナカ |
同じ年なのか!
もっと上だと思ってた。そうかー。
僕、田島さんの「接吻」っていう歌を
はじめて聴いたときに、びっくりしたんです。
まず、タイトルがおもろいやん。
「○○のキス」とかやったらわかるけど、
せっぷんやで、せっぷん。 |
── |
たしかに、接吻というのは
逃げ場のないタイトルですね。 |
タナカ |
正直言いまして、
「接吻」は、ほんまにすごいよ。
1.聴きやすくて
2.売れて
3.よくできている。
これやね。これすごい。 |
── |
ほお! |
タナカ |
まず、ミュージシャンとしては
商業的に売れるってことが
とても大切です。
そこも目標に据えつつ、
作品性も高いというのはすごい。
ほんで、ポップスでしょう?
細かーい、へんなところに
入り込んでいくのではない。 |
── |
はい。 |
タナカ |
どこかひとつのところを高めていく、
というのは、どちらかというと、
みんなができることなんです。
趣味の世界に走ったらいいだけですもん。
でも、ちがいますやん、田島さんは。
ぜんぶできてて、しかも、売れてる。 |
── |
タナカさんの描かれた
『オッス! トン子ちゃん』も、
田島さんの音楽とおなじく、
ポップですよね。 |
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タナカ |
ある種、そうですね。
読みやすいでしょう。 |
── |
はい、TAROの世界の
イントロダクションとしても、
スーッと入ってきます。
こういう女の子はたくさんいると思うので、
共感する人も多いのではないでしょうか。
懐かしい少女マンガのかんじがしますが、
これは、どういうきっかけで
描かれたんですか? |
タナカ |
まず、太っている女の子が
魅力的になる話を描きたかったんです。
で、どんな女の子が人間として
すてきなのかを考えているうちに、
「これは、心の物語を描かないと
いけないな」と、気づいたんです。
少女漫画の形式って、心の物語と
相性がいいんですよ。
「センパイ‥‥」とかね。 |
── |
見開きページを使って
コートの端から「センパイ‥‥」。 |
タナカ |
もう、先輩に対する思いだけで
どんどん話が進んでいくじゃない?
それから主人公は、美しく成長していくのが
いいなあと思った。 |
── |
その心の成長の過程で
TAROが登場してくるわけですね。
タナカさんがこの漫画を描かれたのは
いつごろなんですか? |
タナカ |
描きだしたのは、97年、98年くらい。
当時は断片的に描いていて、
実際にお話になりだしたのは、
川崎市岡本太郎美術館ができた年です。
あの美術館ができて、さっそく見に行って、
帰ってガーッと描いたんです。
それが第1話。
全体的に構成を考えたのは、
2000年に入ってから。 |
── |
でもタナカさんは、
川崎市岡本太郎美術館ができたときに
はじめてTARO作品に
出会ったわけではないですよね? |
タナカ |
ええ。僕は、東大阪市の生まれなんですよ。
小さいころ、車でどこかへ出かけるとき、
高速道路に乗ったあたりで
「太陽の塔」がよくみえたんです。
車からいつも
「おとん、あれ、なに?」と言ってました。 |
── |
大阪でTAROといえば
やっぱり万博の「太陽の塔」ですね。
あと、当時は
CMやテレビ番組でTAROを
みることも多かったですね。
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タナカ |
そうそう。僕らが太郎さん本人をみたのって、
テレビでしょ。
で、テレビではだいたい
ちょっとおかしい人のような扱いだった。
僕もそういうかんじでみていたんですよ。
「変な人だけど、
鋭い感性をもっているから、
社会が養護しているんだろうなあ」
と、勝手に思ってて。 |
── |
いまでいうと、TAROは
どんなかんじだったんでしょう? |
タナカ |
うーん、人というより、動物に近い、
絶滅の動物に近い‥‥、
強いて言えば、ボブ・サップ的なんかな。 |
── |
なるほど! |
タナカ |
で、大学の図書館で
その認識が変わったんです。
「おおおかしい人じゃ
なかっっったぁぁー」 |
── |
なんの本を読んだか
覚えていらっしゃいますか? |
タナカ |
『今日の芸術』かな。
画集も同時にみていましたけれども。
そのときに、はじめてはっきり
気のおかしい人じゃなかったんだ、
とわかりました。 |
── |
つまり、そこで
TAROの書いた言葉にはじめて出会った、
というわけですね。 |
タナカ |
うん。画集を開いたら、
文字も書いてあるのよ、
「人生積みへらし」とかね。
なんや、これ!って思うじゃない。
それから、うちのおとんが、
「この作家のこの絵はいくらで
いま順位でいったら何位か」
みたいな本をもっていたわけ。 |
── |
すごい本があるもんですね。 |
タナカ |
その本の、作家の知名度の欄で、
岡本太郎は1位だったの。
誰もが知ってる芸術家なのよ。
ところが値段のところをみると、
なんと、絵を売ってないねん。 |
── |
そうなんですよね。 |
タナカ |
それが、めっちゃおもしろかったのよ。
ええええー!
なにして
生きてんねやろ、
って思うでしょ? |
── |
思いますね。
絵を描く人なのに。 |
タナカ |
絵、売ってない、って
どういうこっちゃ。
もうね、岡本太郎さんについて知りだすと
死ぬほどびっくりすることが
いっぱいあるわけですよ。
ほんで、びっくりするな、おもろいな、
と思いつつ、本を手に取るでしょ、
開いてすぐ、また、
「即生即死」
とか書いてあるわけですよ。
なんたるおもしろさや!
死ぬことは生きることや。
「ならば自分は死んでやろう」と思ったときに、
命の炎は燃え上がる!
めちゃめちゃおもしろいじゃないですか。
もう、そのあたりから、
太郎さんにいかれてしまいましたね。
(つづきます!)
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