バルミューダのパンが
焼けるまで。
バルミューダ株式会社 寺尾玄 × 糸井重里
糸井重里が個人的に買った
1台のトースターが、出会いのはじまりでした。
このトースターで焼いたパンがおいしい。
いったい、どのようにして生まれた製品だろう?
会社の規模も似ている
「バルミューダ」と「ほぼ日」がまじりあい、
これまでの道のりや商品開発について
たくさん語り合いたいと思いました。
寺尾玄社長の、
理想のトーストが焼けるまでの道のりは
想像以上に山あり谷ありのものでした。
寺尾 玄(てらお げん)

1973年生まれ。バルミューダ株式会社 代表取締役社長。
17歳の時、高校を中退。海外へ旅に出る。
帰国後、音楽活動を開始。
大手レーベルと契約、そして破棄を経る。
2001年、もの作りの道を志し、
独学により、設計、製造を習得。
2003年、有限会社バルミューダデザインを設立。
ヒット商品「GreenFan」(扇風機)を生み、
第8回キッズデザイン賞、グッドデザイン賞2014を受賞。
2011年、バルミューダ株式会社へ社名変更。
ヒーターや加湿器などヒットを飛ばしつづけ、
2015年、画期的なスチームトースター
「BALMUDA The Toaster」を発売、
グッドデザイン賞金賞を受賞。

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とじる
第1回 本気で望んで、ならないことがあるんだ。2016-01-07
第2回 夢のスケールが大きい理由。2016-01-08
第3回 天才、日本に帰ってくる。2016-01-12
第4回「泥棒」のままの出発。2016-01-13
第5回 人に訊く、訪ね歩く。2016-01-14
第6回 バルミューダ創立。2016-01-15
第7回 風との出会い。2016-01-16
第8回 待ち伏せて、声かける。2016-01-17
第9回 自分に期待をしているか?2016-01-18
第10回 混じらないと生まれない。2016-01-19
第1回 本気で望んで、ならないことがあるんだ。
糸井
いまこの部屋に、うちの会社から
「この対談を聞きたい人」が集まってて、
みんなでバルミューダのトースターで
焼いたパンを食べ、
もぐもぐと口を動かしてますけど、
食べものの威力って‥‥‥こう見ると、
すごいですね。
寺尾
すごいですね。
糸井
もしバルミューダが扇風機やヒーターだけを
製造している会社だったら
こんなには人が関心をもたなかったかもしれない。
寺尾
うん、そうでしょうね。
おっしゃるとおり、私たちの会社はこれまで
扇風機や空気清浄機、加湿器を製造販売してきました。
5年ほど前に家電事業として立ちあがったんですが、
そこまではかなり小さな会社で、
社員数は3人でした。
創業はわたしひとりです。
糸井
ああ、そうなんですか、おひとりで。
寺尾
はい。
5年前に扇風機を作ってからは
ラインナップも社員も
順当に増やしてきましたが‥‥、
実は私、人びとはもう「もの」を
買ってないんじゃないかなと思います。
糸井
うん、人びとは「もの」を買ってない。
寺尾
お金を出して「もの」を買うのではなく、
体験を買っているのではないかなと思うんです。
ハードウェアとして
「もの」を買うんですけれども、
それがアートでないかぎり、
ほとんどが「道具」で、使うものです。
使ったときに何かが起きて、ある体験が生まれる。
そっちを買ってるんだな、
というふうに最近思います。
糸井
はい、はい。わかります。
寺尾
となると、体験って何かな、ということになります。
私たちは例えば
テレビの向こうのことを「体験」とは言いません。
つまり、自分がじっさいに五感で感じたことを
心でワンパッケージにして
整理していくのだと思います。
「体験は五感のインプットによって作りあげられる」
ということです。

私たちの作る扇風機はとても優しい風が出て、
涼しく、静かで、とてもきれいです。
しかし、五感の体験としては、
視覚、触角、聴覚のみ。
味覚や嗅覚というところには
扇風機やヒーターではアプローチできません。

みなさんが、お金を出して
「すばらしい体験」を買っているとすれば、
それを我々は提供したい。
ですから、五感すべてを使う体験、
すなわち「食べること」に
関わらなきゃいけないんじゃないか、と
思ったんです。
糸井
‥‥‥‥いま、寺尾さんはそのことを
「立て板に水」のように話されていますが。
寺尾
はい。
糸井
きっともう、何度も
お話しされたことだからなんでしょうけど、
‥‥‥それはきれいにつながりすぎてる(笑)!
寺尾
はい。
そうです、はい(笑)。
おっしゃるとおりです。
なぜならば‥‥
なぜならば‥‥あとから作った話だから!
糸井
ですよね(笑)。
一同
(笑)
糸井
いやぁ、見事すぎたので、すみません。
寺尾
まいりました(笑)。
糸井
寺尾さん、ゲームはなさいますか?
寺尾
はい、します。
糸井
ロールプレイングゲームなどで
上から画面を「俯瞰」で見ると
どこに何があるか、よくわかります。
しかし、自分の視点の画面では、
目の前にあるのは
扉や廊下、壁ばかりですよね。
寺尾
はい、はい。
糸井
自分の視点で仕事をしているときには、
いま寺尾さんがおっしゃったようには
わからないわけです。
寺尾
そうですよね。
糸井
たとえば‥‥いまの「立て板に水」のなかで、
「やんなきゃよかったかな」
と思ったことはありませんでしたか。
寺尾
トースターをですか?
糸井
いえ、この仕事全体を。
寺尾
何度もあります。
糸井
話しましょう(笑)。
寺尾
はい、話させていただきます(笑)。
一同
(笑)
寺尾
もちろん会社が
つぶれそうになったときも、ありました。
糸井
人は事業を「思うようにいく」と思って
はじめるわけですよ。
寺尾
そうですね。
でも、じっさいはそうではない。

私はこの会社をやる前、
じつはミュージシャンでした。
その前はどうだったかというと、
高校を途中でやめて、
スペインやイタリア、モロッコなどの
地中海沿岸を放浪していました。
糸井
穏やかなところを‥‥。
寺尾
はい(笑)。
ひとりで1年ほど放浪の旅をして、
帰ってきて音楽をはじめて、
ロックスターになろうと思いました。
しかし、なれなかった。
それが自分にとって
最初の挫折だったと思っています。
糸井
ああ‥‥。
寺尾
それこそ永ちゃんの本
『成りあがり』を読んで、
「俺もだな!」って思ってました。
糸井
あの本はいろんな人に影響を与えたんですね。
寺尾
はい。すごく影響受けました。
音楽は、9年間やりました。
前半はそうとう怠けましたが、
後半は真剣にやりました。
それでもなれなかった。
そのとき、いくつかのすごく重要な体験をしました。

でもやっぱり、結局、
「音楽の夢が実らなかった」
ということがいちばんの学びになりました。
とにかくびっくりしたんです。
‥‥本気で望んで、ならないことが、あるんだ。
これを自分は、はじめて知りました。
糸井
それは寺尾さんが、
本気で望んだからこそ
思ったわけですよね。
寺尾
はい、本気で望んでいました。
<つづきます>
2016-01-07
教えて、バルミューダ!
Q.
バルミューダのトースターを
キッチンに置きたいのですが、
通常のトースターより大きめだとうかがいました。
大きさと、何かの上にのせてもいいか教えてください。


A.
BALMUDA The Toasterの本体は
幅357mm奥行き321mm高さ209mmです。
ですので、比較するトースターにもよりますが、
奥行きが若干長めの印象があるかもしれません。
載せる台の寸法を、上記サイズを参考にして
計測なさってください。
トースターの下面はそんなに極端な温度にはならないので、
熱変化に強い素材であれば耐えうると思います。
ただ、トースター上部に水を入れる穴があり、
スチームトースト時に毎回水をさす必要がございます。
上部に手を入れられるほどの空間の余裕があり、
水をさせる高さにあることが条件となるかと思います。
(回答:BALMUDA The Toaster開発スタッフ 木下さん)