ウェブマンガ座談会 with 南伸坊さん 僕たち、私たち、デビューはインターネット!
2015年に大好評だった企画
「マンガ家座談会」の第2弾です! 
糸井重里が注目するマンガ家3名をお呼びして、
ご自身の作品のことはもちろん、
いまのウェブマンガに秘められた可能性などを、
たっぷりとおしゃべりしていただきました。
今回はスペシャルゲストとして、
マンガ雑誌「ガロ」の元編集長・南伸坊さんにも
お越しいただきました。
マンガを中心にすえた座談会でしたが、
クリエイティブ全般に共通する話が満載ですよ。
毎日すこしずつ、のんびりおたのしみください。
第1回:ウェブマンガと「ガロ」の共通点
糸井
本日はお集まりいただき、
どうもありがとうございます。
一同
ありがとうございます。
糸井
今日のことをかんたんに説明しますと、
じつはこの「マンガ座談会」には、
1回目があったんです。
えっと、あれはいつごろだっけ?
──
2年半ほど前になります。
そのときのメンバーは、
小山健さん、simicoさん、
とよ田みのるさん、山本さほさんでした。
糸井
はい、そうでしたね。
その座談会から約2年半が経ちましたが、
おもしろいマンガを描く人たちは、
ウェブやツイッターを通して、
まだまだ登場してきています。



なので、また第2弾をやりたいなと思い、
最近、ぼくがツイッターでよく見ている
マンガ家さん3人にお声がけいたしました。
まずはかんたんに、
自己紹介をしていただけますか。
カメントツ
カメントツと申します。
もともとはルポマンガを描いていました。
最近は『こぐまのケーキ屋さん』という本を、
小学館から出版したばかりです。
どうぞよろしくお願いします。
ながしま
はい、ながしまです。
ほぼ日で『やさしく、つよく、おもしろく』
という連載マンガを描いています。
今日はどうぞよろしくお願いします。
せきの
せきのです。
ウェブで4コマを描いています。
よろしくお願いします。
糸井
そして今日はもうひとり、
マンガ雑誌「ガロ」で編集長をしていた
南伸坊さんにも来てもらいました。
一同
パチパチパチパチ(拍手)。
南
はははは。どうもどうも。
糸井
なんで伸坊をここに呼んだかというと、
「こういう新人のマンガ家が、
どこからともなくポンと出る感じって、
前にもあったな」と思ったんです。



つまり「あ、ガロと似てるぞ」って。
南
あぁ、なるほど。
糸井
「ガロ」という雑誌は、
全然絵が描けないような人でも、
いきなりポンと出てくるんです。



ぼく自身のことでいえば、
マンガ家でもなかったのに、
湯村輝彦さんといっしょに
マンガを描かせてもらったり。
カメントツ
あの、あとでサインをもらおうと‥‥。
ながしま
あ、ペンギンごはん!
糸井
これはこれは(笑)。
カメントツ
これはいま見ても、
ほんとにすごいマンガだと思います。
ペンギンのおちんちんが、
普通に出ちゃってますし‥‥。
糸井
そうだね(笑)。
南
そのときはまず、
糸井さんが絵コンテを描いたんだよね。
その絵コンテを見た湯村さんが、
マンガにするときに
つけちゃったんですね、おちんちんを。
カメントツ
あ、じゃあ、糸井さんのせいじゃない?
糸井
ぼくじゃないんです(笑)。
ほんと湯村さんという人は、
人が困るだろうということを、
子どもみたいにわざとするから。
南
ふふふふ。
カメントツ
へぇ、そうなんですね。
南
こないだ、湯村さんがね‥‥って、
いきなり湯村さんの話でいいの?
糸井
どうぞどうぞ(笑)。
南
俺がガロをやめたあとの話なんだけど、
湯村さんが「表紙の絵で、
1度だけボツになったことがある」
っていうんですよ。
「エーッ? どうして?」って聞いたら、
新年号の表紙を
「金色のウンコ」でいきたいって、
いったんだって。
カメントツ
金色のうんこ(笑)。
南
ガロの初代編集長で、
青林堂を経営していた
長井勝一さんという人は、
基本的にこれは困るとか、
ダメとかをいわない人だから、
湯村さんは
「さすがにウンコはダメなんだな」
と思ったらしいんです。



でも、俺が思うには、
ウンコをやめてくれじゃないと思う。
つまり、金の特色って印刷代が高いんだよ。
一同
(笑)
南
長井さんは注文をつけないって
話なんだけどさ、
さっき糸井さんは
「ガロは絵が描けない人でもポンと出る」
といってくれたけど、
長井さんはいつも
「絵は描いていればうまくなる」
ということをいってましたね。



ここに載ってる川崎ゆきおさんも、
最初はこんなもんじゃないんですよ。
糸井
あぁ、このころはもう大分うまいね。
ながしま
わぁ、かっこいい‥‥。
南
絵は下手でも、
つくるものがおもしろきゃ、
どんどん描かせる。
描いたらうまくなってくって考えなんですよ。
糸井
うん、うん、そうだね。
カメントツ
ヘンな質問なんですが、
その時代は下手な絵を求めていたんですか?
南
いやいや、求めてはない(笑)。
カメントツ
でも、ヘタウマっていう言葉が
あるくらいだから‥‥。
糸井
もともとヘタウマって、
湯村さんがいいだしたんですよ。
要は、そういう呼び名を勝手につくって、
開き直っただけですなんです。
カメントツ
あ、そうなんですか?
糸井
当時から湯村さんって、
有名なアートディレクターであり、
イラストレーターだったから、
マンガの場所じゃないところでは、
ある程度の地位があった人なんです。



だから「ヘタウマ」っていうのは、
自分の絵を肯定するための言葉なんです。
「ぼくはヘタウマだから」って。
カメントツ
じゃあ、ぼくもヘタウマの地位を、
もっと向上させるような発言をして‥‥。
糸井
自分の立場をすこしでも有利に。
カメントツ
そうですね(笑)。
糸井
今回の座談会は、
特にテーマみたいなものはないので、
どうはじめてもいいと思っているのですが、
せっかくお集まりいただいたので、
まずはみなさんのお話を
順番に聞いてみてもいいでしょうか。
南
うん、そうだね。
糸井
カメントツさんの
『こぐまのケーキ屋さん』は、
単行本が3月に発売されたばかりですよね。
カメントツ
はい。
糸井
すでにツイッターでも話題ですが、
これを描いた経緯のようなものから、
まずはお話していただけますか。
カメントツ
はい、わかりました。
(つづきます)
2018-04-25-WED