ほぼ日刊イトイ新聞
その7 nisica 服という、日々の道具。

「ぼくたち、もともと、
メンズだけをつくっていたんです。
それがだんだん女性のみなさんが
着てくださるようになって」

nisica(ニシカ)の三橋有さんは、
そんなふうに話してくださいました。

メンズの服は、センチ‥‥いや、ミリ単位で
調整(お直し)をしたいという人が多い。
でも、女性たちが、メンズのシャツを気軽に羽織る、
そんな着方がうまれて、
nisicaもまた、そんな女性たちが注目しはじめました。
いまから10年ほど前のことだったそうです。

「それで『女性サイズもつくってみたら?』って、
卸し先のかたに言われて。
サイズ展開を、小柄な女性が着られるものを『1』として、
そこから『2』『3』『4』とつくるようになりました。
パターンやつくりは、メンズシャツのままで、
サイズ展開を拡げる。
それがnisicaのシャツの世界です」

nisicaは東京で運営しているブランドです。

「最初はお店(セレクトショップ)をやりたかったんです。
僕はいま43歳ですが、10代、20代のころから、
東京にはなんでもありました。
だからお店をやるといっても、
自分たちらしい商品を仕入れるのはとても難しかった‥‥
もう、すでに、街にあふれていたから。
仕入れるものがない、さてどうしよう?
それなら、洋服を作ろう。
それがnisicaの始まりでした。」

それがいまから20年ほど前のことだったそうです。
彼らが最初につくったのは、まさしく「シャツ」。

「僕らは、若いとき、
古着も、ストリート系も、ハイファッションも、
ぜんぶを通過してきた世代だと思います。
そんななかで好きだったのが、
たとえば、きれいめのシャツに、
リーバイスの古着のデニムや軍パンを合わせることでした。
シャツはラルフ・ローレンやブルックス・ブラザーズの
ふつうのボタンダウン・シャツも好きだったし、
コム デ ギャルソンのシャツも好きなんです。
それで最初につくったのが白いシャツでした。
いまとはちがって、もうちょっとデザインの入った
感じのものだったけれど」

私たちがnisicaを知ったのは、
東京の下町にあるセレクトショップでした。
いま、nisicaは直営店をもたず、
卸しを中心にしていますが、
そこは東京ではいちばん多くnisicaを扱っているお店で、
ずらりと並ぶシャツに、
「なんだかふつうのシャツとちがうなあ」
という印象をもったのでした。
遠目には「ふつう」なのに、
近づいてみると、ボタンの位置であるとか、
比翼のつけかただとか、細かなディテールが
ほんとうに独特で、個性的。
でも、「デザインを主張する」とか
「流行をつくる」という気負いはなく、
なんというか‥‥我(が)が強くないというか、
定番的にずっと着られそうな印象がありました。
「彼に着せたい」「ダンナに着てほしい」
nisicaのファンの女性からは、
そんな声も聞かれましたっけ。
なんだろう、この、
「いますぐ着られる、なじんだ感じ」は?!

「そうなんです。ほんとうのことを言えば、
毎日着て洗って馴染んできて、
半年ぐらい経ったものを売りたいぐらい(笑)。
じつはむかしは、ぼくが洗濯機で家で洗って、
天日干しをしてから納品していたんですよ。
いまは工場に洗いをかけてもらって、
畳んで袋に入れていますけれど。
いまもきれいな状態のnisicaのアイテムを見ると
ちょっとはずかしくなっちゃうんです。
つまり、ぼくらの服って、完成していないんですね。
お客さんに長く着ていただいて、
やっと完成するんじゃないかって。
ちょっとすれたりこう、白でも汚れたりしてから、
やっと完成するというか‥‥。
だから、なんていうかな、ぼくら、
服をつくっているというよりも、
道具をつくっているような感じなんですよ」

ああ、なるほど!
三橋さんのその言い方、しっくりきます。
nisicaのシャツは、日々の道具。
でも三橋さんは、
そうして言葉で説明するのもはずかしそう。
ほんとごめんなさい、いろいろ聞いちゃって。

ふたつのシャツを仕入れました。

「白いシャツをめぐる旅。2019」で仕入れた
nisicaのシャツは、2型です。
基本的なメンズライクなパターンの
ボタンダウンシャツは、
10年ほど前からの定番。
ルーズフィットのボタンダウンシャツは、3年ほど前、
「自分たちもだんだん年齢も上がってきて、
楽なほうがいいなって、つくりました」
というアイテムです。

ボタンダウンシャツ。
まず目をひくのが比翼とボタンの位置。
ふつうの(アメリカ的な)ボタンダウンシャツは、
台襟にボタンがついているのですが、
nisicaのものにはついていません。
これは「台襟のボタンは留めずに着る」ことを
前提でつくられているから。
第1ボタンは、留めればきちんとした印象になりますが、
外せば、いわゆるアメリカ的な着こなしになる。
三橋さんたちのイメージは、
そんなリラックしたすがたなのでした。
ですから、ボタンは留めても、留めなくても。
(上まで留めると、一般的なシャツの
「ひとつ外した」感じに。
もちろん、ふたつ外しても、いいですよ。)

そして比翼にしてボタンをかくしているのですが、
第1・第2ボタンは目立ってしまうので、
ここだけは貝ボタンではなく、くるみボタン。

胸ポケットも、ふつうのようでいてふつうじゃない。
なんだか浮いているように見える‥‥。

「これ、『ふらしてる』と言うんですが、
浮いたように見えるように縫い付けてあるんです」

後ろ姿は、ヨークがあって、
センターにボックスタックが入っている、
きわめてふつうのボタンダウンシャツという
ごくごくシンプルなつくり。
そういうところも、きもちがいい。

なお、三橋さんとしてはこのシャツは
「出して着る」イメージだそう。
定番と書きましたが、このシャツは10年、
生地やサイズ感を変えるなど、
何度かの変化をしているのだそうですよ。

ルーズフィットボタンダウンシャツは、
ボックスシルエット。

さてもう1枚のシャツは「ルーズフィット」、
身幅がひろく、肩も大きくて、ちょっと落ちる感じ。
裾がまっすぐで
全体がボックスシルエットになっています。
前はくるみボタンがならんでいて、
胸ポケットは縁を叩いてつけたタイプ。
背中のヨークがやや狭いのは、
タックの位置を高くすることで、
より肩や腕の動きに自由度を増すため。
そのほうがルーズフィットのよさが出るんですね。
カフスはダブルステッチで幅がやや短くなっています。
うーん、ていねいに仕上げているなあ!

ボトムス、なにを合わせてもよさそうですが、
三橋さんとしては「自分は太いものを合わせてるなあ」。
軍パンでもデニムでも、太いのが好きだそうです。
「歳をとってきたら、だんだんラクなほうに、ね」

三橋さん、ありがとうございました。
彼らのつくるnisicaのシャツは、
「白いシャツをめぐる旅。」初登場です。

(次回は、やはり初登場のyunahikaを紹介します!)

2019-04-03-WED

INFORMATION

「ほぼ日ストア」ページで
ことしのコレクションを紹介するのが4/12(金)、
「ほぼ日ストア」と伊勢丹新宿店、
三越伊勢丹オンラインストアでの販売スタートは
4/24(水)からとなります。

また、ことしはジェイアール京都伊勢丹でも
販売を予定されています。
くわしくは、各店舗にお問い合わせください。

どうぞおたのしみに!

■ほぼ日ストア 「白いシャツをめぐる旅。」
2019年4月24日(水)午前11時より数量限定販売

■三越伊勢丹キャラバン
 「白いシャツをめぐる旅。-見惚れシャツ―」

・2019年4月24日(水)-4月30日(火)
 伊勢丹新宿店本館4階=センターパーク/ザ・ステージ#4

・2019年4月24日(水)-5月21日(火)
 三越伊勢丹オンラインストア

・2019年5月8日(水)-5月21日(火)
 ジェイアール京都伊勢丹 5階=スタンダード&モダン SPOT

■伊勢丹新宿店本館4階=センターパーク/ザ・ステージ#4では、
ほぼ日ストアでのラインナップと合わせて、
さまざまな「白シャツ」をご紹介します。
白シャツと合わせるチノパンや、カットソー、
肌着、バッグ、アクセサリーをはじめ、
「自分だけの特別な一枚」に出会えるシャツの
カスタムオーダー会も実施いたします。

※くわしくは、こちらをごらんください

・BRAND
※一部、お取扱いのない店舗がございます。

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