本読む馬鹿が、私は好きよ。

夏も終わりなので、
『怖い本』祭りで最終回!

ここ東京では、台風が過ぎた後、
空気が微妙に秋でございます。
しかし、暑さ寒さは彼岸までらしいので、
まだ、暑い日は続きましょう。

しかしながら、やはり怖い話は、
8月一杯でそのお役御免でしょうから、
もう、今日はお祭りです。
じゃんじゃん紹介していきます。
「これは!」という本がありましたら、
さっと買って、さっと読んで、
涼を楽しんでいただければ!


ではまずは、実話・実話のような本を2冊。

奇譚草子
夢枕 獏 (著)
価格: ¥450 (税込)
出版社: 文芸春秋
ISBN: 416752811


=
「陰陽師」シリーズでお馴染みの
夢枕獏さんの本です。
実録とも創作ともつかないお話の数々…
まるで友達と怖い話大会やってるみたいな
気分になっちゃうですよー。
私なんか一人でお風呂入ってる時に読んでて
風呂に落っことしちゃったくらい
怖かった。

しかも読むのは三度目だったのに…。
怪談会のネタにもなりますよー。
(右脳左脳)


新耳袋〈第1夜〉
現代百物語
角川文庫
木原 浩勝 (著)
中山 市朗 (著)
価格: ¥620 (税込)
出版社: 角川書店
ISBN: 4043653018



=
ハードカバーのものは
図書館で見つけて読んだのですが、
文庫になったので、買ってまた読みました。
1冊読み切るまで、
止まりません。

恐くても最後まで読んでしまう‥‥。
(最後と言っても何か起きると恐いので
 99話で止めてあります。)
ひとつひとつの短い話はすべて実話。
幽霊が出てくるすごく恐いものもあるけれど、
どうしてそういうことが起きるのか
分からない話も恐いです‥‥。
(m)


「新耳袋」の方は、
単行本のブックデザインを、
『言いまつがい』をデザインしてくださった、
祖父江慎さんがご担当なんですよ。

では、次は、
短編から2つ。


将軍が目醒めた時
新潮文庫
(乗越駅の刑罰)
筒井 康隆 (著)
価格: ¥500 (税込)
出版社: 新潮社
ISBN: 4101171041



=
筒井康隆さんの短編集
「将軍が目醒めた時」に
収録されている短編です。
いわゆる怪談などではないですが
不条理な世界を描いた小説が多い
筒井作品の中でも
群を抜くシュールさ

とでも言うべきでしょうか。
読んでいるあなたは、
とてつもなく理不尽な目に遭う主人公に
感情移入してしまい。
クーラーの効いている部屋で読んでも
汗ばむこと間違いないでしょう。
(Cane)


霧が晴れた時
角川ホラー文庫
自選恐怖小説集
小松 左京 (著)
価格: ¥693 (税込)
出版社: 角川書店
ISBN: 4041308631


=
短編なので5分とかからず読めると思います。
別に人が殺されたり、
おばけが出たりする話ではないので、
そういうのがダメな人も読めます。
ふつう怖い話といえば、
ひとりのときは避けたいところですが、
これはむしろ人がいるほうが怖いかも。
後のことを考えると・・・ 
私は怖い話はわりと平気で、
好奇心もありつつ
けっこう読んだり聞いたりしちゃうけど、
これだけは
読まなければよかったと
後悔してます。
たまに思い出しちゃって
急いで家族や友達の存在を確認します。
(ぺぃ。)


両方とも、「読後感最悪‥‥」という感じの
怖さですね。
でも、長い怖い話は御免!という
チキンハート(含む:ワタクシ)には
いいかもしれません。
怖い話に徐々に慣れていこう。

では、長い間、怖い話に触れていたい、
という方には、長編を。


神鳥―イビス
集英社文庫
篠田 節子 (著)
価格: ¥570 (税込)
出版社: 集英社
ISBN: 4087485315


=
女性イラストレーターと
バイオレンス作家のコンビが、
夭折した日本画家の絵に魅せられ、
絵画の謎を追うホラー長編小説。
キーワードとなる
「朱鷺飛来図」
という絵の描写が、
ものすっごい怖い。
この本を読んでから
朱鷺が嫌いになりました。
実家に帰省した折に、
オカンの本棚から発見したのですが、
怖くてその日の夜は眠れませんでした。
(のんぴ)


=
夜、寝付くまでの間、
と思って寝ながら読んでいたら、
最初は、面白くて本を

途中で閉じるのが惜しくなり、
次第に、恐怖で
眠りにつくことが

出来なくなってしまって、
結局、
明け方までかかって
読み切ることとなりました。

読み終わってからしばらくは、
日夜思い出してしまって
怖くてなかなか眠れませんでした。
読みながら、からだのあちこちが
痛くなっていくような感じがしました。
(缶)


夢魔の標的
星 新一 (著)
価格: ¥460 (税込)
出版社: 新潮社
ISBN: 4101098131


=
「なんだか怖い本」というので思い出したのがこの本、
「夢魔の標的」。星新一さんの長編小説です。
星新一さんのショート・ショートが好きで

色々読んでいて、
へえ、長編もあるんだ、
読んでみよう〜と軽い気持ちで買ったのが

14〜5年前。
聞き慣れていた
ばーちゃんの寝言さえ、
思わず震えるほど怖くなったのを

今でも覚えています。

何がそんなに怖かったんだろう、
と、思い出そうとしても、
その時のゾクっとした印象があまりに強くて、
話の内容はすっかり忘れてしまっていたので、
今日読み直してみました。
ストーリーは読んでからのお楽しみ、
として伏せておくことにして、
その怖さについて考えてみました。
うまく言葉で説明できないけれど、
その存在の正体について、
自分の中の何かが反応して警告するような、
感じです。
(Kon)


さらに、怖さの中身がちょっと違う本をいくつか。
怪談話ではなく、狂気系です。

狩人の夜
創元推理文庫

デイヴィス グラッブ (著)
宮脇 裕子 (翻訳)
価格: ¥819
出版社: 東京創元社
ISBN: 4488237029


=
とある家族に近づく伝道師。
自分の行いが正義と信じ、
その家の父親が隠した金を奪うべく、
じわじわと家族の中に入り込んでいきます。
しかし、外ヅラのいい男の
本当の姿に気づいてくれる人はなく、
母親とまだ幼い娘は

すっかり彼に魅了されてしまい、
最初から不審の目で見ていた長男が
孤軍奮闘するのですがやがて悲劇が‥‥。

とにかくこの伝道師が怖い。
自分が金を手に入れることこそ
正義だと勝手に信じこみ、
そのためには何をやっても
許されると思っているのですからたまりません。
さらに、左手の指に「LOVE」、
右手の指に「HATE」と刺青を入れている
という設定もこの男の異様さを際立たせています。
長男をねちねちと
精神的に追い込んでいく描写に、
イヤーな気持ちに
なること請け合いです。

なお、ロバート・ミッチャム主演の
映画版もおすすめです。
(gateway)

ナポレオン狂
講談社文庫
阿刀田 高 (著)
価格: ¥540 (税込)
出版社: 講談社
ISBN: 4061362356


=
正気から狂気への踏み込みを、
淡々と短い文章で描く。
?「刀田さんの本は、どれも読み終わった後に、

背筋がぞーーーっとします。
「怪談」とか「ミステリー」

という感じではないんですが、
「怖さ」という点では
自信を持ってオススメできます。
?ヌの本もいいですが、

やはり最初に読んで欲しいのは
「ナポレオン狂」です。
あまりに怖くて、13編のうち2〜3編くらいしか、
内容を覚えていません。
そう、
内容を忘れても
「怖さ」だけは

残っているんです。

?ヌんだあと、いつも思わず
後ろを振り返ってしまいます。
怪談話でもないのに。
(あるふぁ)


野火
新潮文庫
大岡 昇平 (著)
価格: ¥340 (税込)
出版社: 新潮社
ISBN: 4101065039


=
戦争文学の傑作と名高く、
でも、なんとなく手に取れずにいましたが、
先ごろのフィリピン残留日本兵報道に接し、
ついに読んでみました。
??槙eフフィリピンで、
身体を壊した兵士がジャングルを彷徨、
その極限状況の描写も、
追い詰められた日本兵のさまも怖いですが、
語り手である主人公の思考が、
次第に加速していく様子が
何より怖い。

真顔で話していた相手が、
実は正気を逸していると突然に気付く怖さ。
硬質で端正な文体で綴られているだけに、
その怖さが際立ちます。
?アんな体験の末に、
戦場から帰れなくなった人々がいたのかもしれない、
いや、こんな体験をしてしまったら、
帰りたくても帰れないだろう、
などと現実にひきつけて考えると、
また違った怖さが迫ってきます。
?E・・あぁ、今、書いているだけで

肌が粟立っている。
(なつみ)

以上で、『なんだか怖い本』特集は
終了でございます。
皆さまの肝は存分に冷えましたでしょうか?

さて、最後になりましたが、
「読んでみたいけど、まだ手を出せずにいるので、
 ほぼ日読者の皆さんにオススメをいただきたい!」
という作家さんがいらしたら、
yomu@1101.comまで、メールをくださいね〜。

このページへの激励や感想などは、 メールの表題に
「本読む馬鹿が、私は好きよ。」と書いて
postman@1101.comに送ろう。

2005-08-29-MON

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