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時間
91分
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音質
岡本かの子の生誕百年を記念し
て開かれた講座での講演。
音源は主催者から提供。
ところどころマイクノイズあり。 -
講演日時:1989年3月10日
主催:川崎市民ミュージアム
場所:川崎市民ミュージアム
収載書誌:中央公論社「マリクレール」1989年8月号
講
演
よ
り
岡本かの子の作品には、
「意味」なんかそんなにないんです。
ただ、〈生命〉があるんです。
本来ならば言葉の概念のなかには、
ぐるぐる巻きになったかたちでしか
〈生命の糸〉は含まれていないんですけれど、
高速度写真的な描写によって、その糸を伸ばしてみせる。
その描写から、読む人は〈生命〉を
感ずることができるのです。
〈生命の糸〉というものをスーッと伸ばして、
川の流れに布をさらすように、さらしてみせる。
〈生命の糸〉をこれだけ感じさせた作家はほかにいません。
この作家は、明治以降の近代文学の女流作家のなかで、
女流という言葉を入れなくても
済んでしまう最高の作家だと思います。
この人を最高の作家というためには、
〈生命の糸〉を感じられないといけないように思います。