ほぼ日のにほん茶でお世話になっている
お茶屋さんが、
「片桐はいりさんって、
すごくお茶がお好きなんですよ。
ほぼ日もよく見ているそうです」
と教えてくださいました。
えええ、片桐はいりさんといえば、
舞台、映画、ドラマに‥‥と
幅広く活躍なさっている女優さんです。
お茶がお好きで、
しかも、ほぼ日を見てくださってる‥‥?
それはぜひお話をうかがいたい、
ということで、
インタビューさせていただきました。
聞き手は、にほん茶チームの藤田です。
「お姉ちゃん」のお茶。
- ――
- はじめまして。
今日はお越しいただきありがとうございます。
みんな、楽しみにしてました。
- 片桐
- 「ほぼ日」はよく見ているんですけど、
こんなにいっぱい社員さんがいらっしゃる
大きい会社だってこと、
知りませんでした。すいません(笑)。
- ――
- いえいえ。
でも、ほぼ日を見てくださっているなんて
光栄です。ありがとうございます。
- 片桐
- 見ますよ、それは当然。
だって、私、生まれてはじめて出たテレビ番組は、
糸井さんが司会をしてらした「YOU」ですもん。
- ――
- え、そうだったんですか!
- 片桐
- そう、糸井さんの「YOU」に出たから、
私は今この世界にいるんです。
あの番組を広告代理店の人が見ていて、
「このおもしろい顔の人、
コマーシャルに使ってみよう」
となって、ミスタードーナツのCMに出たんですよ。
あとほら、ほぼ日で売っている
飯島奈美さんのうめ酢も箱で買ってます。
- ――
- なんと、ありがとうございます。
はいりさんは、
飯島さんがフードスタイリングをした
映画にも出演されてますし、
そう考えると、いろいろご縁がありますね。
しかも、今回は、
私たちがお世話になっている、
うおがし銘茶さんから、
「片桐はいりさんにお茶のお話をうかがうと
おもしろいですよ」とご紹介いただいて。
うおがし銘茶さんとは、
いつからのお付き合いなんですか?
- 片桐
- それがまた不思議なつながりなんですけど、
えぇと、30年くらい前になるんですかね。
劇団をやっていたんですけど、
そのころって、深夜まで稽古しては
仲間の家を泊まり歩くような日々だったんです。
衣装も自分たちで縫っていたので、
友達のご実家に集まって作業をして、
そこでいつもお茶をいれてもらって、
「このお茶好きだわ」
なんて言いながら飲んでたんですよ。
で、ある日、実家に帰ったら、
うちのお茶がその家と
同じ味になってたんです。
「うん? これはなんだ?
うちのお茶、友達の家のお茶と同じだ」
- ――
- お茶の味が同じだった。
- 片桐
- その友達は山下さんというんですけど、
「山下さんちのと同じだなぁ」と思って、親に、
「これ、どこで買ったの?」と聞いたら、
「築地に最近よく買い出しに行くんだけど、
そこのお茶屋さんで買った」と。
山下さんに聞いたら、
「うちもときどき築地へ買い出しに行くときに、
お茶屋さんで買うんだ」
それが、うおがし銘茶さんとの出会いなんです。
- ――
- うおがし銘茶さんは、
築地に本店がありますもんね。
というか、ご実家のお茶の味が変わったことに
すぐ気づかれるなんてすごいです。
- 片桐
- 子どものころから飲んでますからね。
両親と弟といっしょに
祖父母の家に住んでいたこともあって、
飲みものといえば決まって日本茶で、
コーヒーとかほかのものを
飲む家ではなかったんです。
しかも、お茶をいれるのは私の係だったんですよ。
どんな経緯で私が
その係になったのかはわからないけど、
お客さまが来たときは、
「お姉ちゃーん」と呼ばれて、
「はい」と、私が奥から出て行く。
- ――
- ああ、いいですね。
- 片桐
- 別にいれてるところを
お見せするわけじゃないですよ。
ただおかっぱの子どもが出てきて、
なんかお茶いれてる、という(笑)。
そのうちに
「お姉ちゃんのいれたお茶はおいしい」
という評判がたって、
私もそう思い込むようになって、どんどん、
「お姉ちゃん、いれてちょうだい」
「はい」
という感じ。
父親は果物をむく係で、果物が出てきたら、
「はい、お父さん」
で、私はお茶をいれる時間がくると、
「はい、お姉ちゃん」って。
- ――
- そういう決まりのようなものが
あったんですね。
- 片桐
- そうですね。
あとは、家ですき焼きをしたあと、
肉の油で部屋がにおうので、そのときにも
「はい、お姉ちゃん」と言われて、
焙烙(ほうろく)とお茶っぱを渡されるんです。
で、焙烙でお茶っぱを煎って、つまり焙じて、
においを消すんです。
それも私の係でしたね。
- ――
- お茶まわりのことを、ぜんぶ。
- 片桐
- うん、お茶係でした。
この前、チラッと読んでた本に書いてあって、
「あ、おもしろい話だな」と思ったのは、
どこかの協会が、
子どもの生活形態を調べたら、
「家族にお茶をよくいれる子は本をよく読む」
というデータがとれたそうなんです、
たしかに私も当てはまる。
お茶いれて本読んでたな‥‥と思って、
「あぁ、なるほど」と。
- ――
- お茶をよく飲む子じゃなくて、
「いれてあげる子」なんですか。
- 片桐
- そう。詳しくはわからないけど、それを見て、
子どもが家族にお茶をいれるという状況が
現代もあるんだ、ということに感動しました。
今、「お茶くみ」みたいなことが、
ちょっと「よくない」というふうに
なってるじゃないですか。
だけど、私としては、
別にそんな虐げられている感じはなかったし。
- ――
- ああ、わかります。
- 片桐
- 「お客さん来たよ」と言われると、
「はい、私が」というふうに、
どこか誇り高い気持ちでやってましたけどね。
作法はわからないから、
何分待って、みたいな本格的なことはできない。
ただ急須と器だけはあたためて、
「出がらしは出さないよ!」
という勢いで、ちゃんといれてました。
いまだに、お葬式とかで親戚と会うと、
「お宅はお茶がおいしかった」と
よく言われるんです。
「お茶しか覚えられてない家なのか?」
という感じはしますけどね(笑)。
(つづきます)
2018-02-05-MON
※このインタビューは2017年12月に行ったものです。
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN