ブランドとは?

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◆◇◆ 田中洋さんに訊く ◆◇◆





(※「ブランド」について、
  法政大教授でブランド論についての
  著作もある、田中洋さんに伺いました。
  社会人大学院のお話も興味深いですよ)



★「ブランド」をひとことで言うと?

田中洋:
ブランドをひとことで言いますと‥‥。
「ブランドに弱いんです」
「日本人はブランドに弱い」
例えば、そういう揶揄がありますよね?
おとしめて言う言葉みたいですけれど、
でも、よく考えれば、ブランドを
使っていない人なんて、いませんよ。

お医者さんが薬を選ぶ時にも、
同じ効能でも有名ブランドを使うだとか、
自分の専門に近い分野のことでなら、
誰だって信用のおけるものを選ぶでしょう。
そういうことなんですよ。
お店を選ぶ時には、今まで入ったお店での
経験を生かし、音楽や雰囲気やお店の知識、
そういうものをミックスしながら
評価していますよね。ふつうのことです。

ただ、
「この情報をこう使って
 戦略的に消費者にあたる」だとか、
そういう時は、問題が出なりますよね。
技術系の人が、ともすると、
「いい技術があればいい」
とだけ思ってしまいがちなように、
例えばいい技術があるとして、
それが、どう消費者側に伝わるか。
情報を、消費者はどう使ってくれるか。
そこが大事なので、
ブランド戦略というものが生まれるんです。
わかりやすく言うと、そうですね。


★田中洋さんは大きな広告代理店で
 実務経験を長く経た後、
 いまは大学で、社会人大学院生たちに
 マーケティングを教える立場にいます。
 社会人大学生は、田中さんのところで、
 おもに、マーケの何を学ぶのですか?


田中洋:
社会人大学院生に
マーケティングを教える立場というのは、
非常におもしろいなぁと思っています。

ただ、ぼくは、マーケティングの
総論を伝えようとは思っていません。
ぼくの知っている範囲というものも、
マーケティングの全体からすると、
非常に限られたものでしょう。
また、どの業種でも通用する
マーケティングのノウハウが
あるのかというと、
かなり疑わしいとも思っています。

では、何をテーマにするかと言うと、
「マーケティングの分野で、
 ぼくがおもしろいと思うこと」です。

と言うのも、わけがあるんです。
会社員をやめて、最初に教えた大学で、
ぼくは、マーケティングの分野で有名な、
コトラーという著名な人教科書を、
とても丁寧に教えたのですが‥‥。
「先生の授業は、つまらない」
中国からの留学生の女性に、
そう言われてしまったんです。
多少はおもしろいはずという
自負を持っていたので、ショックでした。
それ聞いて、一般的なのはやめたんです。

だったら、何をやろう‥‥?
学生がおもしろいと感じることは
わからないから、自分にとって
おもしろいネタをひっぱりだして、
テキストを原書で読んでもらって、
ディスカッションをやってもらおう。
大きく言えば、いまもその方針ですね。
そうなると、おもしろいですよ。

社会人大学院生というのは、
典型的なプロフィールとしては、
勤続10年ほど、今の会社には、まだ、
マーケティング的な素地がないから、
それを身につけたいと思って、
自分から来ている人が多いわけです。
それは、ありがたいんです。
学部学生と違ってやる気がありますもの。

ぼくが、そういう、
一般社会から来て、また
一般社会に変えってゆく人たちにとって
どんな役に立つものを提供しているか?
それは、長期的な力だと自覚しています。

マーケティングの分野には、
統計や分析など、
すぐに役立ちそうなものも、
たしかにあることはあるんです。
ただ、来ている学生たちのニーズは、
調査方法ひとつとっても異なります。
そこで、何をやっているかどうか。

‥‥ものすごく、学生たちを、
いじめぬくしかないんですね。
ぼくの授業を取った社会人大学院生は、
ものすごく忙しくなってくるんです。
ただでさえ会社との両立ですから、
毎日2〜3時間の睡眠になることもザラ。
もう、みんな、ヒーヒー言って、
毎週の課題や予習をこなしてきます。
そういうことが、評判がいいんですよ。

社会人大学院で学ぶということにおいて
非常に重要なところは、
「むちゃくちゃしごかれることで、
 タイムマネジメントを自ずと学ぶ」
ということだと思うんです。
みなさん、会社でも優秀な人で、
ただでさえ忙しいはずです。
ただ、忙しい人にこそ、来てほしい。

極端に忙しいところで、
頑張らないと学位が取れないという
プレッシャーを感じながら、
勉強をすることによって、
「あの時は
 ほんとに忙しくて苦しかったのですが、
 充実した時間だったと思い出します」
とあとで言ってもらうことも多いんです。

時間の使い方がうまくなる。
精神的肉体的な限界もわかる。
能力の限界が、苦しさの中で
いつのまに、すこしひろがっていたりする。

マーケティングの理論を知るという
短期的な目標に重きをおくよりも、
そうやって、ものすごく
シゴキの日々を送っているほうが、
あとでやる仕事に生きると思うんです。

社会人大学院生には、それぞれ
お昼に会社を抱えながら来るという
負い目をかかえて、やる気に満ちている。
大学院には、企業内でのグループ研修や
専門学校にないよさがあるのですが、
それは何と言っても「強制力」です。
「これをやらないと、卒業できない」
これは、大きいですよ。
よほど動機の強い人なら、自主的にも
いろいろできるのでしょうけれど、
人間は、やはり、非常に強い
プレッシャーをかけられると力を出す。
ぼくは大学教授をしていると、
それはすごくよく感じるんですね。

まわりもむちゃくちゃ忙しい中で
一生懸命やる‥‥そういう仕組みの中に
体をおくことがとても大事だと考えてます。


(※註:有力地銀出身の卒業生によると、
  田中洋さんの授業は、
  「2〜3時間ぐらいの睡眠の毎日は
   つらかったんですけれど、
   いろいろなネットワークができたし、
   いろいろな面でタフになりました。
   もともと銀行の営業だったのが、
   いまはシンクタンクで
   マーケを研究しているわけで
   仕事の内容はずいぶん飛躍しました」
  とのことでしたよ)

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