『株鬼日記』と |
『株鬼日記』というサイトがあります。 毎日2回、前場と後場のあとで更新される、 たぶん団塊世代の相場師の手によるページです。 株の話題以外の政治経済の時評や 「おねえちゃんがどうしたこうした」というような 身辺雑記が混じっていて面白いんです。 「ほぼ日」とこのサイトは、 できるだけ毎日見るようにしています。 今年の競合サイトですね。 たとえば、8月の日記で笑ったのは、これです。
と、ここから個別銘柄や市況全体の話が続くのですが、
切れ味がいいんですよ。とにかく。 このサイトで、夏頃に熱く推薦されていたのが、 高橋秀実『からくり民主主義』 (草思社 ; ISBN: 4794211368)でした。 「みんな」という言葉を使うことが、 ためらわれるようになる本、とか、 そんな薦められ方でした。 沖縄米軍基地問題、若狭湾の原発問題、諫早湾の干拓問題などなど この本には、ジャーナリズムが取り上げてきた さまざまな問題が取り上げられています。 この筆者は、その現場に向かい、 問題に関わる様々な人たちに 執拗なインタビューを重ねていきます。 そして、この問題はそんな簡単に 善悪や損得で関係者を 色分けできるものではないぞ、ということが、 徐々に明らかになっていきます。 調査を丹念に進めるにしたがって、 問題は解きほぐされていくのではなく、 むしろからまっていってしまう。 至るところややこしい話だらけになって、 筆者は途方にくれる。その繰り返し。 そういう書物であります。 こんな事態が訪れるのは、 問題を指摘してまわる、 その問題の立て方が違っているのか、 問題を解決する視点や考えが違っているか、 どちらかであります。(コンサルタント風) いや、他にも、 問題と思わないようにする、とか、 問題に慣れきる、とか、 問題になりきる、とか、 いろいろあるような気がするんですけどね。 「コンサルタント」とは、 だいたい解決策を2つか3つにする人たちのことです。 いきなり、 「解決策は513あって・・・」という人がいたら 面白いんだけどなぁ。 たぶん、クライアントは、 「それ、3つになったら呼んでくれ」と言い残して席を立ったり、 「金返せ」と叫んだりすることでしょう。 えー、本線に戻ります。 巻末の村上春樹による解説「僕らが生きてる困った世界」は、 こういった宙ぶらりんな事態を 僕らは受けとめていくしかないんだ、という 長距離ランナー的態度で書かれた秀逸なものでありました。 「何を語るかが問題ではなく、誰が語っているかが問題だ」 こんなニーチェの言葉を思い起こしてしまう、 今年感心したノンフィクション・ジャンルの1冊でありました。 そうそう、『株鬼日記』の発行人さんは、 キーボードで日記を打てないことが、先日わかりました。 |
2002-12-30-MON
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