イズミ |
6月2日にユニクロが出来て、
すぐバイトを始めたんですよね。
どんな感じだったんですか?
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植木 |
とにかくめちゃくちゃ面白かった。
今考えてもバカだと思いますが
働いている時間は受験勉強しなくていいわけだし、
楽しい上にお金まで貰えるって事ですからね。
でもね、根本的な原因ってのは
やっぱりあるんですよ、本人の中では。
要は最初、とにかく何も教えてもらえない中で、
店に入りきれないお客さまが山のように来てて、
とにかく声出しをして。
それはそうでしょ。何もできない人は声出しか
商品整理くらいしかないわけですよ。
一生懸命、見様見まねで
「いらっしゃいませ!」をやってたんですね。
1週間位そうやっていると、
僕がバイトだったっていうのに
気がついたっていうことを
皆さんがおっしゃってくれたわけです。
そんなこともあって
僕は今でも、声出しには自信がありますよ。 |
イズミ |
それまで皆さんは
なんだと思っていたんですか?
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植木 |
オープン当時は猫の手も借りたい状況だったので
メーカー応援っていうのがみんな来てたんですよ。
要はシャツのメーカー、パンツのメーカー、
みんな、担当の方が代りばんこで応援に来ていた。
で、ずーっとそうだと思っていたと。
ある日、僕がアルバイトだとわかって、
みんながね、
「おまえアルバイトだったのか。」と
とてもそうは見えなかった、
とおっしゃっていただいて。
それが本当にうれしくてね。
なんかそれって
すごく自分が評価されたのかなって、
勘違いをしちゃってね。
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イズミ |
あ、勘違いなんですか?
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植木 |
ええ。だからすごく楽しくなっちゃって。
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イズミ |
大事ですよ、勘違いも。
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植木 |
で、だんだんやってると、
3ヶ月経った時に
時給600円に上げてくれたんですよ、店長が。
これがまた弾みになっちゃって。
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イズミ |
もう俺はそうとうここのお店に期待されている、
俺はいなくちゃいけない人間だ、と。
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植木 |
なんていうのかな、
評価されたってのがすごくうれしかった。
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イズミ |
学校の成績以外のところで、初めて社会人として
認められたっていう、
そんな感じのうれしさっていうのが
あったんでしょうね、きっと。
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植木 |
まさにそうですよ。
初めて自分がお金儲けしたのが、
ユニクロのアルバイトで、
その時に短期間で評価してくださったって
いう方がいらっしゃった、
ということですよね。
それが僕の会社で商売することの原点ですよね。
そうなると人間、弾みがついてくるんですよ。
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イズミ |
オープンの時から
お客さまはすごく多かったんですか?
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植木 |
ものすごく多かったです。
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イズミ |
ああ、それはなぜですかね?
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植木 |
広島にはああいう広告を打ったり、
ああいう店舗形態のお店も無かったですよ。
あれだけのボリュームの商品を
バーンとエレクターで並べて、
とにかくお客さん自由に買ってください
という店ですから
当時、老舗のお店でも、
接客ありきだったんですね。
「自分で勝手に選んでください」
というスタイルですし。
でも、スーパーじゃないんですよ。
売りたいものがハッキリ出ている。
スーパーみたいに、
行ってどっか探そうみたいなのじゃなくて、
その時々に主張が出てきますよね。
レイアウトによって、
それがハッキリお客さんにも伝わったんですよね。
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イズミ |
そうですね。売り場みただけで
今、ユニクロが何を売ろうとしてて、
「あ、チラシにこれが入っているんだな」とか、
金曜日の売り場を見ると
「明日のチラシの限定ってここだろうな」
っていうのが、だいたいわかりますよね。
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植木 |
袋町のお店は面白かった。
隣に某大手スーパーがあるんですよ。
食料品売り場がある
地下に昼飯を行くじゃないですか。
そこは沢山の人でにぎわっているんだけど
衣料品売り場に行くと
全然、人が入ってないんですよ。
僕なんか親が小売りしてたんで
そういう大手スーパーに
どんどんお客さま取られて、もう商売として
成り立たなくなったのが、印象にあったんですね。
だけどその大手スーパーの隣にある
僕が働いてるお店ってのは、
お客さまがたくさん来てくれて、
そのスーパーは本当に閑古鳥が鳴いていた。
当時、いっつも食料品売り場に行っちゃあ、
帰りに衣料品売り場を見てました。
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イズミ |
よっしゃぁ、勝った~、とか言って?
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植木 |
勝ったというかね、なんでお客さまいないんだろうなぁ、
って思いながら。
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イズミ |
その時の植木さんって
一(いち)バイトですよね。 |
植木 |
そうですね。
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イズミ |
一バイトがそこまで意識を持てるかっていうと、
他の職種のバイトが
そこまで考えるかなぁって思うんですね。
もう、ファミリーのようにユニクロを考えている
一バイト植木さんがいたわけですよね。
当時からファミリーみたいな
感じだったんですかね? |
植木 |
あのね、
やっぱりファミリーにしてくれたのは
森田さんですね。
僕は柳井会長はこれだけ大成功されて、
当然大尊敬してますけど、
やっぱり森田さんって店長が、
僕にとっては彼が素晴らしい店長だった。
とにかく面倒見のいい人で、
スタッフを絶対に突き放さないというか、
見捨てないというか。
当時(18年前)に
女性スタッフの大半は茶髪ですから。 |