永田 |
第28回を‥‥。 |
西本 |
たったいま見終わりましたが‥‥。 |
糸井 |
いやあ、今回はすごいですね‥‥。 |
さんにん |
‥‥‥‥。 |
永田 |
ええと、どこからどう話せばいいんだろ。 |
糸井 |
なんせ池田屋ですからねえ。 |
西本 |
すごかったですねえ‥‥。 |
永田 |
すごかったなあ‥‥。 |
糸井 |
見どころ満載でしたね。 |
西本 |
例によって、ぼく、
いっぱいいっぱいですよ。 |
永田 |
もう、やめっか! 最終回だ!
『新選組!』もテレビガイドも
ここで終わってしまおう! |
糸井 |
落ち着け。 |
西本 |
例によって、ぼく、
いっぱいいっぱいですよ。 |
糸井 |
まずは、違うところからはじめませんか。
首位攻防の天王山のまえに、
ショートパンツのおねえさんが
始球式を行うようにしてはじめませんか。 |
永田 |
あ、いいですね。 |
西本 |
そういう展開だと楽です。
たとえば、イカの話なんかどうでしょう。 |
糸井 |
イカ(笑)! |
永田 |
イカの話、大歓迎! |
西本 |
なにかとイカが出てきましたよね。 |
永田 |
だじゃれもありました。 |
糸井 |
しかし、イカって、
あんな風に売っているもんですか。
三谷発明なんですかね。 |
西本 |
まるまる一匹が売られてましたね。
デカかったなあ。 |
糸井 |
大きなお世話かもしれませんが、
ゲソをぶらぶらさせてるってのはどうですかね。
あれは取ったほうがいいんじゃないですか?
マンガみたいな、「イカの記号」に
なりすぎていたように思えましたが。 |
永田 |
まさにそういう「イカの記号」として
出したかったんじゃないでしょうか。
イカがイカ型であることに意味があるというか。 |
糸井 |
ぼくとしては現場判断で、
ゲソを切るべきだったと思うんですけど。
だってぶらぶらするじゃないですか。 |
西本 |
ちょっと生焼けの感じでしたね。 |
糸井 |
ええ。もしもぼくがスタッフで、
現場でなにか言える立場だったとしたら、
「ゲソはやめよう!」って言いますね。 |
永田 |
なるほど。じゃあぼくはそこで
「ちょっと待った!」って言いますね。
「イカはイカ型であることに
意味があるんですよ、糸井さん!」
と現場で言いますね。 |
西本 |
となると、ぼくは現場で
「まあまあ、ふたりとも」
って言いますね。 |
永田 |
それを聞いてぼくらは‥‥。 |
糸井 |
「おまえは引っ込んでろ!」と。 |
西本 |
言われたぼくは、いったん引き下がり、
家でヨメに愚痴りますね。
「あいつらさあ、
イカのゲソのことで延々もめてんだよ」と。
それを聞いてヨメはきっと
「どっちでもいいのにねえ‥‥」と。 |
糸井 |
じゃあ、まあ、
イカについては賛否両論ということで。 |
永田 |
ほかにイカ的なものはありますか。 |
西本 |
はい、あります!
Don Doko Don! |
永田 |
ぐっさんと平畠さんだ。 |
西本 |
大河ドラマのなかで、
Don Doko Donが一瞬の再結成! |
永田 |
解散してないって。 |
糸井 |
あれはサービスですよね。 |
西本 |
よかったですよね。 |
永田 |
にしもっちゃん、大喜び。 |
西本 |
ええ。さらにうれしかったことでいうと、
ぼくの好きなオダギリジョーが
今日もいい働きをしてましたよ。 |
糸井 |
近道を知ってるあたり、
存在感を出してましたね。 |
西本 |
にわかオダギリファンとしては
すごくうれしかったですね。 |
永田 |
もうそういう本質の話に移りますか? |
糸井 |
もうすこし遠回りしましょうか。
今回、ぼくね、舞台となった場所に、
完全に土地勘があるんですよ。
つまり、八坂神社から四条、橋があって
あの川を挟んで‥‥ってあたりが
ぼくがよく知っている京都なんですよ。 |
西本 |
ああ、なるほど。 |
糸井 |
これまで出てきた、壬生だとか、
八木邸だとかは詳しくはわからないんですよ。
ただ、今日は知ってる場所であるがゆえに、
たのしめたし、同時に驚きもあった。
というのは、近さなんです。
あのあたりの近さを知ってるがゆえに
「うわ!」って思えるんですよ。 |
永田 |
番組のあとの解説では
「500メートル四方」と言ってましたが。 |
糸井 |
近いですよお、あのあたりは。
2時間とか3時間って単位で
捜索のことを語ってますけど、
距離だけでいったら、
「ちょっと行って戻ってこい」
みたいなもんですからね。
それはね、緊張感あったわぁ。
つまりね、すぐ近くにある
木造家屋のどっかで敵が会合を開いているわけ。
そのイメージを考えると‥‥怖いよ。 |
永田 |
しかもその木造家屋が、
ふつうの街並みに混じってるわけですからね。 |
糸井 |
さらにもうひとつつけ加えると
ぼくはこの宵山の雰囲気を
実際に、味わっているわけですよ。 |
西本 |
ああ、ちょうど現地にいましたよね。 |
糸井 |
今年だけじゃないんですよ。
偶然なんですけど、毎年、
宵山の時期って京都にいるんですよ。
あの、祭の夜の街の、独特な雰囲気ね。 |
永田 |
今日はある意味、そこに尽きますよね。 |
糸井 |
うん。あの川なんてさ、
みんなが祭の余韻を味わいながら
歩いたり、川床で飯を食ったりする場所ですよ。
そんな日にあの無粋な集団が
田舎者の浪人どもと
剣劇をくり広げるわけですからね。 |
永田 |
そのギャップはぼくも驚きました。
というのは、ぼくは史実をあまり知らないので、
頭のなかにある「池田屋事件」っていうのは、
忠臣蔵の討ち入りに近い感じだったんですよ。
ようするに、どこかに敵が集まっていて、
そこに攻め込んでいくんだろうっていう。
寝静まった街を進んでいく新選組みたいな。 |
糸井 |
ああ、なるほどね。 |
永田 |
だから、土方の
「今日は、街が落ち着かないな」
っていうひと言で、すっごくつかまれましたね。
事件と京都の街が溶け合って、
ぜんぜん違う世界をつくってしまって。 |
糸井 |
その意味でいうと、最初のところで
新選組がどう行動したらいいかっていうのを
伊東四郎に訊くじゃないですか。
あそこからはじめるっていうのが
また発明だったよねえ。 |
永田 |
新選組に京都の街を背負わせるんですよね。
あそこに八木家をもってくるのは
八木家ファンとしてはうれしかったです。
あの、新選組と長州と、
どっちが正しいといえないなかで
「京都の街を守る」っていうのは
たしかに観るものを安心させるんだけど、
近藤たちって、よそ者じゃないですか。
だから、京都とのジョイントとして、
八木家をもってきてるんですよね。
三谷さんが、八木家を「家族」として
過剰にアットホームに表現してるのは
これだったのかなあ、と思って。
お父さんらしい伊東四郎さんと、
お母さんらしい松金よね子さんと、
史実にはいない長女と、息子で。 |
糸井 |
つまり民意を味方につけるという
表現の工夫なわけですよね。
全員を味方につけているわけじゃないけど
近藤としてはつけましたよね。 |
西本 |
たしかに、そう感じましたね。
「勝てば官軍」という価値観で
どちらが正解かっていうのが
厳密にはいえないなかで、
新選組の、もともとの大儀、
「京都の治安を守る」ってことに立ち戻って
それを忠実に守らせたことに
説得力を感じました。 |
糸井 |
そうなると、長州側が
「京の街を焼く」っていう発想をしたところに
戦術ミスがあるんでしょうね。 |
永田 |
三谷さんも、あえてそこを強調してますよね。
「帝をさらってどうのこうの」っていうより、
「あいつらは京の街を焼くつもりだ」
っていうことを前面に出している。 |
西本 |
また京都の人たちにとっても、
長州というよそ者に火を放たれるってことは
イヤなことでしょうしね。 |
糸井 |
そこに祭をもってきているのが
また効果的なんですよ。
京都の祭っていう、無形文化の日に、
「焼く」を合わせてるわけですから。
それは痛いですよね。一千年の歴史を
焼いてしまうみたいなものですから。 |
西本 |
「焼くのはイカだけにしてくれ!」
ってことですよね。 |
糸井 |
まあ、無視しますけど。 |
永田 |
ええ、無視してください。 |
西本 |
意外にこういう発言が、
文字にしたときに活きるんですよ。 |
糸井 |
街という意味で大きかったのは、
「斬り合いを観ている町人たち」
っていう構造ですよね。 |
西本 |
あれがいいですよね!
ホントにあれくらいの距離で
やじ馬って観てたんでしょうね。 |
糸井 |
うん。そういう彼らを
ほんとうの主人公にもってきている。 |
永田 |
いや、ほんと、今日の主役は
「京都の街」ですよね。 |
糸井 |
また、うまかったのが、
中村獅童さんを使って
一般民衆の目線を表現してたところね。 |
永田 |
ああ、それは感じました!
微妙に辻褄を合わせる役割もあるんですよね。
板挟みになってる桂小五郎は
どうするんだろうって思っていると、
捨助が、うまくからんでいって調整する。
桂小五郎さんが、まるで観ている人たちに
ことわるみたいに高らかに言いますよね。
「いったん、藩邸に帰る!」
(パンと膝を叩き)なるほど! |
糸井 |
オッケーです! |
西本 |
オッケーです! |
糸井 |
桂小五郎ファンの人からすると
疑問に思うのかもしれないですけどね。 |
西本 |
そのへんは、三谷さんの
桂小五郎観なんでしょうね。
たぶん、三谷さんって
「この役はこの役者じゃないと」って、
狙ってキャスティングしていると思うので、
三谷さんの桂小五郎へのイメージが
「人情家」というより「テニスボーイ」の、
石黒賢さんと近いんじゃないかと。 |
糸井 |
その感じが随所にしますよね。
助けを求めてきてるのに
門を閉めるっていうあたりは完全に
「政治家・桂小五郎」のイメージでしたね。 |
西本 |
そう思います。 |
糸井 |
じゃあ、そろそろ。 |
永田 |
そろそろ? |
糸井 |
池田屋のアクションのシーンに。 |
西本 |
いきましょうか。 |
永田 |
いきましょうか。 |
糸井 |
誰からいく? |
永田 |
どこからいきます? |
西本 |
お先にどうぞ。 |
糸井 |
いえいえお先にどうぞ。 |
永田 |
いえいえいえどうぞどうぞ。 |
糸井 |
それじゃ、はじまりませんよ。 |
永田 |
じゃあもう、ジャンケン! |
糸井 |
いいね、ジャンケン! |
西本 |
承知! |
さんにん |
ジャーンケーンポン! |
糸井 |
(グー) |
西本 |
(パー) |
永田 |
(パー) |
糸井 |
あ、負けた。 |
ふたり |
ジャーンケーンポン! |
永田 |
(グー) |
西本 |
(グー) |
ふたり |
あいこでしょっ! |
永田 |
(パー) |
西本 |
(グー) |
永田 |
あ、勝っちゃった。 |
西本 |
どうぞ。 |
永田 |
‥‥コホン、それでは。
まずぼくは‥‥「音」の話を。 |
西本 |
ああっ、「音」かぁーーー! |
糸井 |
「音」ねーー! いいとこいくねー! |
永田 |
「音」、いかせてもらいます!
お先に「音」、いかせていただきます! |
ふたり |
どうぞどうぞ! |
永田 |
つねづね思ってはいたんですけど、
ほかのドラマと違うなあと感じるのは、
ダイナミックレンジが広いんですよ。 |
ふたり |
はいはいはいはい。 |
永田 |
クラシック音楽と同じように、
ささやくような小さな音から
ドカーンという派手な音まで、
映画並の幅があるように感じるんです。
で、それをすごく丁寧に
つくってあるじゃないですか。
今回、とくに、もう、足音から斬る音から。 |
糸井 |
あと、無音ね! |
西本 |
そうなんですよー。 |
永田 |
そのメリハリがすごい。
BGMはBGMで、
ここぞというところに滑り込んでくるし。
あの、撮影の技術的なことは
よくわからないんですけど、
音って、あとから当て直すんですよね? |
西本 |
ええ、そうです。 |
永田 |
すんごい、繊細ですよね。
鎖帷子で受けた音と、肉体を斬った音と
ぜんぶ、違いましたし。 |
糸井 |
過剰に大げさにもしてないですしね。 |
西本 |
ああ、観返してえ! |
糸井 |
ぼくが音ですごいなと思ったのは
静寂の雰囲気ですよ。
池田屋の二階に長州の連中が
いるかいないかをたしかめるとき、
近藤がほんとうに
「そっと」階段を上がっていく。 |
ふたり |
そうそうそう! |
糸井 |
あれもう、めっちゃかっこいいよね。
あれ、昔のチャンバラでいったら
ありえない演出だよね。
だけど、いまのドラマとして観ていると
ものすごくかっこいいよね。 |
西本 |
いままでのチャンバラだったら
「ダダダダダッ」って階段を駆け上がって
バッサバッサと斬りかかるっていう
演出だったでしょうし。 |
糸井 |
ところが、「そーっと」階段を上がる香取慎吾。
それで、「バッと」開けて、
そこにやつらがいたら‥‥。 |
永田 |
閉める! |
糸井 |
閉めるんだよ! |
永田 |
あそこ、音だけの演出なんですよね!
「とんとんとん」(階段を上がる音)
「バッ」(戸を開ける音)
「チャリッ!」(敵が抜刀する音)
「バッ」(戸を閉める音) |
糸井 |
あの怖さっていったらなかったねえ。
明かりもなにもないわけじゃないですか。
少人数の試合をしにいったわけですよ。
そのスリルがねえ、伝わりますよねえ。 |
永田 |
それで、街に戻るっていうか
町人の視点が入るときは、
祭ばやしが聞こえてくるんですよねえ。 |
糸井 |
うっまいよねー。 |
西本 |
ああ。きっと、ここまで読んで、
もう一度観返したい人がいっぱいいますよ。 |
糸井 |
それ自分じゃねえか! |
西本 |
そのとおりです!
ああ、観返してえ! |
永田 |
じゃあ西本さん、どうぞ。 |
西本 |
ぼくはですね、
沖田総司のチャンバラなんですけどね。 |
糸井 |
ああ、はいはいはい。 |
永田 |
それ、もう共感するわ。 |
西本 |
ぜんぜん派手な動きはしてないんですよ。
ところが、ムダのない剣のさばきっていうので
「いちばん強い沖田」を見せてる。
そこに気づいたときに、
「おおっ!」と思いました。 |
糸井 |
そうなんだよねえ。 |
西本 |
最小限の動きで、
確実に相手をしとめていく動きっていうのに
まあ、感心しましたね。 |
永田 |
派手に上段に構えたりしないんだよね。
全部、下段あたりから、こう、
手首を効かせるような太刀さばきで。 |
糸井 |
そのあたりは、屋内の狭さっていうものを
きちんと配慮してありましたよね。 |
西本 |
そう! ぼくらは『その時歴史が動いた』で
予習しましたけれど、屋内は狭いんです! |
永田 |
沖田に限らず、全員に太刀筋がありましたよね。
個々の性格をきちんと反映しているっていうか。
永倉新八は実直な感じで「決め」の多い剣。
オダギリジョーは「美学」のある感じ。
照英は、もうネタみたいな「肉体の技」。 |
糸井 |
彼は元やり投げ選手ですしね。 |
永田 |
で、いちばんなるほどと思ったのは藤堂平助。
『その時歴史が動いた』を観て、
藤堂平助が池田屋突入班の
一員だったって知って、意外だったんですよ。
ドラマで観るかぎり、
そんな人に見えないなあと思って。
あの修羅場に、あの人のいい平助を
どうやって放り込むんだろうと思ってたら、
こう、前のめりになって突っ込むっていう、
「いざとなったらスイッチ入れてキレる」
っていう感じで表現してましたよね。 |
糸井 |
うん、顔つきが変わってたよね。
一方で、近藤は「動かない太刀」でしたよね。
むちゃくちゃ強いんだろうなっていう、
そういう表現ですよね。
だって、道場の先生だからね。 |
永田 |
近藤は、片手でさばくんですよね。
なんかこう、テニスで、
「男子はバックハンドでも片手」
みたいな強さを感じました。 |
糸井 |
山本太郎はあいかわらず見事な「様式美」で。 |
西本 |
で、八嶋さんは今回もまた、
なにもしてなかったと。 |
ふたり |
あはははははは。 |
西本 |
いちばん威張ってるけど、あの人、
「ここだ、ここだぁ!」
って叫んでるだけですからね。 |
永田 |
それもまた個性。 |
糸井 |
で、ぼくの番ですけどね。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
糸井 |
ぼくが感じたことは‥‥。
ヘルメットしているやつは強い! |
西本 |
ああ、それも思ったわー。 |
永田 |
いえてる。鎖帷子。 |
糸井 |
なんやかんや言って、
新選組は備えをしてるんですよ。
鎖帷子つけてるし、武器からなにから
戦い用に仕組んでいるわけですよ。
それにくらべて相手は、
ただ相談をしようとして
池田屋に集まっているわけでしょ。
その差はとんでもないよね。
服の下に鎖帷子が1枚あるだけで、
おそろしく有利だと思うんだ。 |
永田 |
あの、草野球やるときに、
素人は、マスクがないと怖くて
キャッチャーできないんですよ。
経験者は平気で面ナシでやるんだけど。
軟球だから当たったってそんな
たいしたことないんだけど、
あの安心感ってものすごいんですよね。 |
糸井 |
刀に対しても同じですよ。
早い話が、あれは刃物なんですから。
刃物は竹刀じゃないんですから。
昔、実際に刃物を持った男が
暴れてるところを見た人がいてね、
その人から聞いた話なんだけど、
その男、遠くでむちゃくちゃに
刃物を振り回してるだけだったんだって。
人に届かないようなところで振り回すだけ。
つまり、怖いんだよ。
斬るほうも、斬られるほうも。
刃物って、そういうもんなんだよ。
だから、つくるほうが
「チャンバラ」っていうことばに
安心してたらダメだよね。
その意味で今回、ああいう
「肉体性のあるチャンバラ」を
きちんとつくったのはえらいよね。 |
永田 |
なるほど。 |
西本 |
防具が重要に思えるっていうことは、
刃物の怖さが表現できてたってことですよね。 |
糸井 |
あの、藤堂平助が、
頭の防具を外したとたんに
ばっさり斬られたじゃないですか。
あれもそういう表現ですよね。
だから、ヘルメットはすごいんです。
つまり、刃物はあぶない! |
永田 |
刃物はあぶない! |
西本 |
刃物はあぶない! |
糸井 |
今日の結論!
「刃物はあぶない」! |
ふたり |
「刃物はあぶない」! |
糸井 |
「刃物はあぶない」! |
永田 |
もういいです。 |
糸井 |
あと、刃物があぶないということで
もうひとつ言うと、さっきも出たけど、
池田屋の狭さですよね。
つまり、自分の刀が味方を傷つけちゃうかも、
みたいな場所に大勢がいるっていう状況は
人数で勝っていても、
ちっとも有利じゃないんですよね。
だから、一対一で勝つ自信があれば
少人数でもやれちゃうわけですよ。 |
西本 |
そうですね。よく、時代劇を観てるときに、
「まわりを囲んでるやつも、見てないで
一斉に斬りかかればいいじゃない」
って突っ込む人がいるじゃないですか。
でも、ようはその振りかざした刀が
どこにいくかってことがわかんないので
みんな静観せざるを得ないわけですよね。 |
永田 |
刃物はあぶないですからね。 |
糸井 |
そう。刃物はあぶない。
池田屋は狭い。 |
西本 |
今回、池田屋のセットはすごかったですけど、
『その時歴史が動いた』で見た
写真を見事に再現してましたね。急な階段とか。 |
糸井 |
階段が急だってことは、
全体が小さいっていうことですよね。
あの、推測だけれども、今回の
「狭い場所での戦いの表現」は、
三谷さんが考えてないところで
現場の人たちが「こうしよう、ああしよう」と
知恵を足しながら
つくっていってるんじゃないかと思うんですよ。 |
永田 |
あ、そうかもしれません。
三谷さんがコラムで書いていたんですけど、
チャンバラって、脚本の段階では、
ト書きで簡単に書くしかないんですって。
「息詰まる死闘が続く‥‥」
みたいにしか書けないって。 |
西本 |
ああ、ぼくもそれ読みました。
だから、現場の経験者たちが、
「このドラマだったらこうだろう」
「この狭い場所ならこうなんじゃないか」
っていうふうにして
つくっていったんじゃないですかね。 |
糸井 |
それがあの完成度につながってるんですね。
いやあ、見事でした。 |
永田 |
一方で、援軍が到着してからのチャンバラは
「刃物があぶない」の演出から
ガラッと変化してましたよね。 |
糸井 |
あそこからは、格闘技にしましたよね。
ようするに、殴りや蹴りを入れて、
総合剣術格闘技にしたわけですよ。
あれはもうね、田舎者の強さ。
その表現はうまかったね。 |
西本 |
ストリートファイトでしたよね。
山本太郎と照英なんかはとくに。 |
糸井 |
そのあたりのさじかげんもよかったね。
つまり、そればっかりになるとかっこ悪いから。
武士じゃなくなりすぎるのもよくない。
だから、近藤は絶対それをしないんですよ。
だって彼はものすごく武士になりたい人だから。 |
永田 |
あ、そうですね。
きちんと名乗ったりしてたし。 |
糸井 |
あの人だけは武士として勝つ試合をしてる。
そういうところでいちいち
ものすごく納得がいきましたよね。
‥‥よかった。 |
永田 |
よかった。 |
西本 |
よかった。 |
糸井 |
あと、触れるべきだと思うので言いますが、
沖田が喀血するシーンのCGはどうでしたか? |
西本 |
あのアジサイのところですよね。
ぼくはトム・ハンクスの
『グリーンマイル』を思い出しました。 |
糸井 |
『グリーンマイル』!
ぼくらトム・ハンクス好きですからね。 |
永田 |
トム・ハンクスにハズレなし! |
ふたり |
トム・ハンクスにハズレなし! |
糸井 |
たまにあり! |
ふたり |
たまにあり! |
糸井 |
永田くんは、あれ、どうでした? |
永田 |
ぼくはありでしたよ。
ぜんぜんオッケーです。
糸井さんは? |
糸井 |
ぼくもありでしたよ。 |
西本 |
でも、あのへん、クレームの対象に
なったりするんでしょうね。 |
糸井 |
怒る人は怒りそうですね。
「どういう意味が!」とかね。 |
永田 |
アジサイの青と血の赤とか、
燃え尽きる若い命のイメージとか、
いろいろ解釈はあるんでしょうけど、
ぼくはドラマの流れをスッと止めて
特別な世界を挿入する演出で
ふつうにいいなあと思いました。 |
糸井 |
いや、ありゃ貧血の表現でしょう。 |
永田 |
あ、そっちか! |
糸井 |
違うかな(笑)。 |
西本 |
ぼくは『グリーンマイル』です! |
糸井 |
どうであろうと、
ぼくはキレイだなと思いましたよ。 |
永田 |
うん。ぼくもオッケーです。もしも、
時代劇にCGを入れること自体がダメなら、
先週のハエもダメになっちゃいますよ。 |
西本 |
あ、そうなりますね。 |
糸井 |
‥‥ハエ? ハエってなに? |
西本 |
先週、オダギリジョーが
目を開けたまま寝るっていう
エピソードがあったじゃないですか。
あそこでオダギリジョーの鼻の頭に
ハエがピタッてとまるでしょ。 |
糸井 |
えっ! あれ、CG?! |
西本 |
CGですよ(笑)。 |
永田 |
ひょっとして糸井さん‥‥。 |
糸井 |
「うまいこと撮ったなあ」と思ってた。 |
ふたり |
そんなわけないでしょ! |
糸井 |
まあ、池田屋の剣劇は見事でした。 |
永田 |
そして、締めは
宮部鼎蔵との見応えあるやり取り。 |
西本 |
満を持しての「幕府の犬め」発言! |
永田 |
ここで来たかっ、っていう感じでしたよね。
そのあとのセリフもよかったですよ。
「おれを斬ってもそのあとには
幾千幾万の志士が続くが
おまえはそれをことごとく斬るつもりか?」 |
西本 |
「ご公儀に逆らう者なら斬る!」と。 |
糸井 |
本質論ですよね。 |
永田 |
あそこ、ぼくは
『もののけ姫』を思い出したんですよ。 |
糸井 |
あ、『もののけ姫』ね!
つまり、正解のない試合なんだよね。 |
永田 |
そうそう、そうなんですよ。
「恨み言を言いながら死んでいく
宮部鼎蔵のほうが、
じつは正しいんじゃないか?」
っていうあたりは、
たたり神と同じような感じがしたし、
どっちが正しいんだかわからなくて
混沌としてくるなかで、
「京の街を守る」っていう
民意をぎりぎりで汲み取るあたりは、
「この村を、いい村にしよう」っていう
烏帽子のセリフを思い出したし。
なんかこう、勧善懲悪じゃ収まらない
難しい問題を扱いながら、
それでも、つくり手は観る側に、
いちおうの正解を
提示しなきゃいけない苦労とか。 |
糸井 |
なるほどね。でも、そういうことは、
『もののけ姫』以前にも、
黒澤映画なんかでも扱われてるんですよ。 |
永田 |
あ、そうなんですか。 |
糸井 |
うん。だから、その意味では
様式に乗っ取ったかたちともいえる。
ぼくがおもしろいと思ったのは、
あそこで終わらず、本質論を
その後の竜馬にバトンタッチするという
二重構造のほうですね。 |
西本 |
「どいつもこいつもバカじゃきに!」 |
糸井 |
見事にぜんぶしゃべらせてましたね。
もちろん、文句はないんですけど、
あそこ、もっと観念的に見せてくれても
よかったかなとは思いました。
亀の切腹なんかは、直接見せてないぶん、
重みが出てて、じんわり泣けたじゃないですか。 |
永田 |
あれって、第1回から観てたら、
もっと泣けるんでしょうねえ。 |
西本 |
それは思いましたね。 |
糸井 |
まあ、まだまだありますけど、
こんなところにしておきましょうか。 |
西本 |
そうですね。 |
永田 |
‥‥ああっ! 待った!
ひとつ忘れてることがあった! |
西本 |
なんですかなんですか。 |
永田 |
みんな、後半のチャンバラで忘れてますよ。
冒頭、ぼくらはいきなり
つかまれたじゃないですか。
山南敬助ですよ。堺さんですよ。
話し合いのところで、怒鳴るところ。 |
ふたり |
あーーーーっ! |
永田 |
あれはびっくりしました。 |
西本 |
今回、山南の出番ってあそこだけなんですけど、
チャンバラしなくても
ぜんぜんオッケーでしたよね。
いや、存在感ありました。 |
糸井 |
それから、忘れてるといえばあれですよ。
土方が池田屋に到着したときの、
「かっちゃん、うしろだ!」 |
ふたり |
あーーーーっ! |
糸井 |
そのまえの決断を迫る場面では、
近藤のことを「局長!」って呼ぶんだよね。
そのあたりの使い分けが、さすがですよね。
だてに薬売りやってないですよ。
ところが、近藤の命にかかわる場面では
思わず「かっちゃん!」なんですよ。
だって、「近藤!」じゃ、
とっさにわからないかもしれないからね。
ほら、近藤勇って、養子だからさ。 |
永田 |
そういう問題ですか。 |
西本 |
順番からいって、ぼくも
みんなが忘れていることを
言わなくてはなりませんが。 |
ふたり |
どうぞどうぞ。 |
西本 |
池田屋のあったところって、
いまパチンコ屋になってるんですね。 |
ふたり |
ああああああ(笑)。 |
西本 |
あれ、ぼくがパチンコ屋のオーナーなら、
絶対、店の名前を「池田屋」にしますけどね。 |
糸井 |
池田屋事件の日は、
サービスデーとかにしてな。 |
永田 |
夜10時からは大解放! |
西本 |
画面に「お・き・た」ってそろうと、
コインが、喀血のように、
ジャラジャラジャラーって出てきたり。 |
ふたり |
それはないわ! |