土方歳三、かく語りき。
山本耕史 from チャノミバ
第1回「香取慎吾とぼく その1」


ぼくは香取君とはほぼ1年間、
ずーっと同じシーンがありましたから、
つねに横に立っていたんです。
そういうとき、香取君は動いてないわけですよ。
いっぽうでやっぱり土方っていうのは
あらゆるときにあらゆることをやるんですよね。
だから、そういうことが最初は難しかったんですけど、
やっぱりやっているうちに、
「あ、いまはこうだ」「いまはああだ」
とかいうのがだんだんわかってきて。
三谷さんにも言われたんですけど、
「土方は勇の横にどういうふうにいるのか
 っていうのが今回の課題だから」
っていうふうに言われたんですよ。

ぼくはけっこういろんなことをやるんですよね。
それこそ、手品とか、ギターとか。
ということは自分がまあ、なにかを主張したいわけです。
だけど、「自分のいちばんの幸せ」っていうものを
バーッと考えてみると、いちばん幸せなのは、
誰かのサポートをしてるときなんですよね。



だから、『新選組!』がはじまるころは、
「香取慎吾がいっしょだよ。同い年だよ」
っていうことになっても
「オレが何年(役者を)やってると思ってるんだ」
くらいの気持ちでいるわけですよ。
やっぱりそんな敵対心みたいなものがあるわけですよね。
で、いっしょになってやるじゃないですか。
そうすると、ぼくの持っていた「香取慎吾」のイメージと
実際の彼とのあいだにすごくギャップがあるんです。
「テレビではあんなに元気なのに、
 なんでこんな静かなの?」っていうくらい。
すると、敵対心みたいなものはすぐにどうでもよくなって、
「香取君としゃべんなきゃ!」
っていうようなことになってくるわけですよね。
そうすると彼が好きになっていくんです。
彼が疲れてる日は、
「ちゃんと彼を励ましてみんなと
 仲よくやれるようにしてあげなきゃ」
っていうところで動いたり。

だからぼく、『新選組!』を1年間やってて、
お芝居をしたっていう記憶があんまりないんですよね。
これは言っていいのかわからないんですけど、
ぼく、賞をいただいたんですよね。土方歳三で。
それでそのときによく訊かれたのが、
「どういうところを工夫して、お芝居したんですか?」
っていうことだったんですけど、
『新選組!』を1年間やってきて感じたこととしては、
ぼく、お芝居を演じることって
二の次三の次だったんですよ。
それよりも、香取君が今日どういう状態で入って来てるか、
今日はどのくらい元気があるのかとか。
そういうことをぜんぶ気にかけながら、やってたんで。
それこそ彼が目立ってくれるというか、
表に出てくれることがぼくの喜びでもあったわけですよね。
自分が前に出られないとか、
そんなのほんとに意識なかったですね。

だから、ぼくはほんとうに敵対心ガンガンで
現場に入っていって、最終的には、
人を好きになっちゃうんタイプなんです。
そこが自分のいいところって言いたいですけども(笑)。
香取君は、真逆なんですよ、ぼくと。
香取君は周囲のことにはぜんぜん意識がなくて、もう、
「自分が今日この現場を終えて何時に家に帰れるか」
っていうような、彼の生活スタイルがあるわけなんですよ。
ぼくなんかそこに踏み込めないんですよ。
それがぼくは、なんか悔しかったんでしょうね。
それでガンガン踏み込んだんですよね。
「彼の生活スタイルっていうのはどうなんだ?」
「彼は何を考えてるんだ?」
っていうのを考えて追っていくうちにまあ、
ものすごく仲よくなったんですけどね。

ぼくは香取君にずっと
「携帯電話の番号教えてくれよ」っていう話をしてて。
というのは、彼はここ十何年も、
仕事現場の人と連絡先を交換したことがないし、
いっしょにご飯を食べに行ったこともないんですって。
「じゃあ、目標はそれだ」と思って。
ぼくは『新選組!』を終わるまでに
香取慎吾の携帯番号をゲットしようって思ったんです。
それがぼくの課題だったんですよ。
で、最終的には、ぼくが香取君とみんなとの架け橋となって、
「副長、今日の飲み会、局長は来るんですか?」
みたいなときに、
「じゃあ電話するよ」ってやってたわけです(笑)。

postman@1101.comまで、ぜひ感想をくださいね!
このページを友だちに知らせる。
 

2005-04-18-MON

戻る