八嶋 |
『新選組!』って、ほんとに、
出演者が男ばっかりなんですよ。 |
糸井 |
そうなんですよね。
もうなんか、
部活みたいになってたそうですけど。 |
八嶋 |
部活、部活。ほんとに部活ですよ。
あの、撮影の合間に
みんなで集まる場所があって、
そこにこう、受付やってる女の人とかが
たまにお茶を替えにきたりするんですよ。
そうすると、みんなで、ほんとに、
「ヒュ〜ッ、ヒュ〜ッ!」とか言うんですよ。 |
|
一同 |
(爆笑) |
糸井 |
しょうがねえな(笑)。 |
八嶋 |
「おー? おー?」とか言って、
みんな明らかに浮き足立つわけですよ。 |
糸井 |
情けないけど、わかる(笑)。 |
八嶋 |
30過ぎたようなオトナたちが。 |
糸井 |
うちに帰れば女房もいるのに。 |
八嶋 |
いるのに、受付の女の子に
「ヒュ〜ッ!」とか言って。
で、やっぱり(山本)耕史は
ちゃんと名前を知ってたりするわけですよ。 |
糸井 |
ははははは。 |
八嶋 |
土方ですよね。 |
糸井 |
それがお仕事だからね。 |
八嶋 |
はい。すごいですよ。 |
糸井 |
変わった時間が流れてるよねえ〜。 |
八嶋 |
で、オダギリ(ジョー)は
ずーっと本読んでるんですよ。 |
糸井 |
ウワサには聞いてましたが、
それはほんとに読んでるんですか。 |
八嶋 |
はい。
ぼく、前にも仕事してたんでわかるんですが、
マンツーマンだとふつうにしゃべるんですけど、
わーっと人がいると、面倒みたいで。
で、人が少なくなると、話し出すんです。 |
糸井 |
ああ、なるほどね。
なんかこう、いちいち見えるのがおかしいね。
会ったことのない人たちなのにさ。 |
八嶋 |
現場もいらっしゃったことないですよね。 |
糸井 |
ないです、ないです。 |
八嶋 |
だけど、いま、糸井さんが想像してるのは
間違ってないと思いますよ(笑)。 |
一同 |
(笑) |
糸井 |
そう思えますよね。きっと当たってる。 |
八嶋 |
それくらいわかりやすいし、
えも言われぬエネルギーがあった。 |
糸井 |
ドラマと現実が平行移動してるっていうような、
そういう感じがありますよね。 |
八嶋 |
それはみんな言ってましたねえ。 |
糸井 |
はあー。そんなことって
これから先もそんなにないでしょうね。
ひとつのドラマで同じメンバーが
1年間拘束されること自体が
めずらしいでしょうし。
まあ「明治座ロングラン」
みたいなことになれば別でしょうけど。 |
八嶋 |
だから耕史なんかは、
『新選組!』が終わって
ちょっと抜け殻っぽくなった
瞬間があったみたいですね。 |
糸井 |
堺(雅人)さんなんかは、
あえてつぎの仕事を
トントン入れていったみたいですね。
休んだら終わりっていうか、
変なことになるんでしょうね。 |
八嶋 |
でしょうね。
つい、「よっこらせ」って
なるんだろうなあと思いますね。 |
糸井 |
なりますよね。筋肉変わりますもんね。
それだけ濃い時間を1年も過ごしたあとだと。 |
|
八嶋 |
そうですねえ。その濃い時間は、
やっぱりすごいおもしろかったですけど。
若いというか、まだ認められてないような、
雑多なやつらが集まってましたから。
それでみんなが、出て行きたいっていう
漠然としたエネルギーを持ってますし。 |
糸井 |
また、それぞれがみんな違うというか、
タイプとしてはバラバラですしね。 |
八嶋 |
ええ。種類がぜんぜん違うんですよ。
あの、みんなが集まってるたまり場に、
ギターが置いてあったんですね。
それは耕史君のギターで。
耕史は三味線を弾くシーンがあったんで、
何日も練習してたんですよ。
都々逸みたいなやつをうたって。
で、すっごい上手なんですね。
器用だからなんでもできるし。 |
糸井 |
うん。 |
八嶋 |
で、彼が弾いてて、
「うわあ、うまいね」なんて言ったら、
「まだまだぜんぜんダメなんですよ。
三味線とギターのやり方は違うんですよ」って。
で、まあ、感心してたら、耕史が弾いてないときに
今度はそのギターをぐっさん
(山口智充:永倉新八役)が弾きはじめるんです。
ボサノバとかハワイアンとか、
適当にバーッと弾きだすわけですよ。
でもう、「松方弘樹〜」とか言うと
それでハワイアンを
やってくれたりするわけですよ(笑)。
「芸達者だなあ」と思って。 |
糸井 |
仕事するなあ。あらゆる場面で(笑)。 |
八嶋 |
堺(雅人)とかもすごいストイックで、
自分が切腹することが決まってて、
それに向かって、
やっぱり脱いだ時にみすぼらしくないようにって、
ずいぶん前から身体を鍛えたりしてて。
その一瞬のために、
ずーっとそうやって備えてるわけですよね。
ぼくなんかも、どこかで、
自分はサービスマンだと思ってるんですけど、
あんな圧倒的なサービスをする人とかね、
あんなに器用な若い人がいたりすると、
ぼくと大倉は、ふたりして、
「俺たち、なんにもねえな」って思っちゃう。
それで家に帰ったんですよ、自分ちに。
で、嫁にその話をしたら、
「あんたたちはね、雑草なんだ」と。
アスファルトの中から、光を見つけて、
隙間からグワーっと出てくる力だけは
すごい強かったんだと。
でもちょっと顔を出せたときに、
雑草だから、どういう花を咲かせていいのか、
まったくわかってないんだよ、って。
5歳も若い嫁に言われて(笑)。 |
糸井 |
はぁ〜、すごい嫁ですね、それ。 |
八嶋 |
はい(笑)。 |
糸井 |
伸びるのに一生懸命で、
花のことは考えてなかったんだね。 |
八嶋 |
そうなんですよ。光を追いかけるの必死で(笑)。
まあ、自分がこれからどうするかは別として、
そういういろんなタイプの役者が
集まってたのは刺激になりましたね。
そのトータル的なエネルギーっていうのは。 |
糸井 |
思えば、
三谷さんがそういう場所を用意したんだね。
大河ドラマっていう、ある意味では
いちばんフォーマルな舞台に。 |
八嶋 |
いや、その苦労は
すごかったんじゃないかと思います。
すごい戦ったんだなと思いますね。ほんとに。
ほんとのところはわからないですけど。 |
糸井 |
じつはね、ときどきくださるメールで
そのにおいが、
ちらっと感じられるときがあったんです。 |
八嶋 |
あ、そうですか。 |
糸井 |
本人はすごく軽く言ってるんだけど、
これは涙がにじむくらいまで
やり取りしたんだろうな
っていう感じはありましたね。
でも、それをやり遂げたんですよねえ。
若い、雑多な役者たちを使って
1年やり遂げたっていうのは、すごいよねえ。 |
八嶋 |
小劇場界はみんな感謝してますよ。それは。 |
糸井 |
そうですか。 |
八嶋 |
ええ。大きい舞台に引き上げてくれたんですから。 |