スタッズ・ターケル『仕事!』とは

1972年に刊行された、スタッズ・ターケルによる
2段組、700ページにも及ぶ大著(邦訳版)。
植木職人、受付嬢、床屋、弁護士、セールスマン、
郵便配達員、溶接工、モデル、洗面所係‥‥。
登場する職種は115種類、
登場する人物は、133人。
この本は、たんなる「職業カタログ」ではない。
無名ではあるが
具体的な「実在の人物」にスポットを当てているため、
どんなに「ありふれた」職業にも
やりがいがあり、誇りがあり、不満があって
そして何より「仕事」とは
「ドラマ」に満ちたものだということがわかる。


「ウェイトレスをやるのって芸術よ。
 バレリーナのようにも感じるわ。
 たくさんのテーブルや椅子のあいだを
 通るんだもの‥‥。
 私がいつもやせたままでいるのはそんなせいね。
 私流に椅子のあいだを通り抜ける。
 誰もできやしないわ。
 そよ風のように通り抜けるのよ。
 もしフォークを落とすとするでしょ。
 それをとるのにも格好があるのよ。
 いかにきれいに私がそれをひろうかを
 客は見てるわ。
 私は舞台の上にいるのよ」 
       
       ―ドロレス・デイント/ウェイトレス

(『仕事!』p375より)

 スタッズ・ターケル『仕事!』