APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

When I'm sixty-four その6
ふたりはおんなじ。


ノリスケ 経済格差を我慢して失敗したことある?
ジョージ 昔、我慢して、失敗したことある。
(マイクに接近して)みなさん、ご記憶ですか?
消防士さんですっ。
つねさん アッハハハハハ!
ノリスケ 消防士さん(笑)。
我慢したんだ(笑)。
ジョージ でもね、僕ね、すっごい楽しかった、
その人と付き合ってたときに。
ノリスケ 糟糠の妻の暮らしをしたの?(笑)
ジョージ あのね、いや、そういうんじゃなくてね。
つねさん うん、どういう?
ジョージ 一緒にいるときは、エルメスのお店には入らない、
ルイ・ヴィトンのお店はドアをくぐらない、
ワインといえばハウス・ワインしか
この世の中に存在しなくって、食べ放題万歳!
それがねえ、楽しいの。すっごい楽しいの。
つねさん なあに? 「演じてる私がいる」って感じで?
ジョージ まるで『ローマの休日』みたい……
(うっとり)。
ノリスケ ハッハッハッハッハ! うわ〜、うわ〜(笑)。
つねさん ヤな奴!
ジョージ すっごい楽しいのっ!
僕は僕ですっごい楽しかったの!
なんでかって言うと、
彼の世界の中に、僕は、
紛れ込んでるわけじゃない?
そのことが、すっごい楽しいの。
んだけど、彼と一緒にいないときに、
僕は自分の王国に戻ってくるんだよ。
つねさん で、山ほどお買い物してたわけね?
ジョージ 買うの〜。吐くまで買うの〜。
スタイル良く見せようと思って
キツキツのコルセットで、
ウエストを締めて締めて行ったパーティで、
戻って来て、コルセット外して、
家でお茶漬けを山のように食ってる楽しさ、
っていうのかしら? この解放感。
ノリスケ その二重生活ってさ、
買い物、彼にばれなかった?
ジョージ そうなのよ。
やっぱりね、お家とかに置いとくでしょ?
そうすっとね、気がつくんだよね、
この前来たときには、これは無かったって。
気付いても言わないで、見過ごしてくれれば
良かったんだけど…
ノリスケ あ〜。
つねさん 言っちゃうのね。
ジョージ うん、言われるの。で、言われると、
僕、この性格でしょ? 
「いいじゃない? 自分が稼いだんだから」
って、言い返しちゃうの!
そうすると、「世界が違う」とかって言われて。
つねさん あ〜。
ジョージ んで、そんときには、
「ちょっと待って。
 違う世界の二人が一緒に過ごしてるから、
 楽しいんじゃなかったの?」
って思うんだけど、
ま、彼はそうは思わなかったみたい。
自分の世界に来て欲しかったのね。
つねさん あー、でも…
ノリスケ それはしょうがないじゃんね。
だって、あなたが会社畳んで
消防士になるの?(笑)
ジョージ やだー。
ノリスケ いや、今、自分がね、
自分よりは収入があるけれども、
そんなに生活レベルの違わない人と
一緒にいるもんだから、
その、とても違う生活って、
どういうんだろうかな? って、
かねがね疑問だったわけ。
あなたたちを見ていると。
つねさん ん、でも…
ノリスケ で、それって、二人の夢には影響しないのかな?
って思っただけ。
ジョージ ぜんぜん。
ノリスケ じゃ、お家を買うの、
高いんだよって言うとさ、例えばそれは…
ジョージ でも、あれだもん、僕、
べつにそんなお家に住まなくったって
死なないもん!
ノリスケ ハハハハハ。
ジョージ ほんとだよ。だって、今ほとんどの週末は
彼の家にいるんだもの。
ノリスケ あの細くて長くて物がいっぱいあって
ペットまでいるちっちゃな1DKに、
いつもはコンラン・ショップの家具に囲まれてる
あなたが! 
つねさん 余計なお世話ですっ。ぷん。
ジョージ そうなのよ、ぜんぜんちがうのよ、うちと。
ウチでお泊まりすれば、
……横幅が160センチってベッドわかる?
ノリスケ それって、縦にも横にも寝れるって感じね。
ジョージ に、二人で悠々と眠れるのに、
つねさん ウチ来たら120センチぐらいに二人!
ノリスケ しかも、その横幅で……
まあ、僕も、そうですけど。
ぜんぜん平気だけどね、狭いのは。
ジョージ 楽しいの。ね?
で、オナラするの、二人で。
だって、二人の環境で違うのは、
収入だけであって、
それ以外はおんなじ世界に生きてるもんね。
つねさん そうねー、案外ねー。
ジョージ 映画を観るのが好きで、
おんなじような映画が好きで、
苦手なのはアニメだけだとか。
つねさん ああ、あなたはね。
ジョージ そう。
つねさん すいません、たまに見せて。
ジョージ 音楽好きなんだけど。
つねさん 分かれる。
ジョージ 洋楽中心か、Jポップ中心かとか。
つねさん そういう微妙なずれはあるけれど。
ジョージ 食べるのが好きで、
でも内臓系は僕はご免だけど
この人は好き、とかね。
ノリスケ でも、そんなのはね、
好き嫌いなんて、知った範囲だもん。
ジョージ でしょ? だけど、そっちの違いが大きいほうが、
僕はイヤだもん。
ノリスケ そうかー。ぼくは、違うの当たり前だと
いうとこから始めたからなあ……。
(つづきます)

2002-01-10-THU
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