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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

バレンタイン? ふん。
(ラブレターの話に変わりつつ) その6

相手が動くより前に、自分が動くの。

ジョージ 大阪の子と遠距離恋愛やってたときに、
大阪の飲み屋さんで会って、
ものにしたくて仕方がなかったの。
ノリスケ で、どういうラブレターを書いたの?
ジョージ あのときはね、
僕も言葉で仕事をしている人だけど、
彼はコピーライターで、
やっぱり言葉で仕事をしている人なんだよ。
で、もう、彼と話をするということは、
僕を見るようなんだよね。
ノリスケ あ〜。
ジョージ んで、んと、そういう人間に
出会ってしまったことに対する怖れはあるんだよ。
ものすごくね。だけどー、なんか、要はね、
そんときは、自分をもっと好きになりたいから、
彼のことを好きになりたいと思ったの。
それは春先だったんだよ。
つねさん 発情期に向けて磨きたかったのね、自分を(笑)。
ジョージ ま、そんな感じだよ。
それでね、なんかね、僕ね、
締めくくりの言葉に命を賭けた
手紙だったんだと思うんだなー。
あのね、当然、大阪で会ってるから
東京に戻るのに新幹線に乗ったんだけれども、
気がついたら東京駅に着いてたんだよ。
東京駅のホームに降りたときに、
ああそうか、僕はやっと、
自分の場所に戻ったんだ、ってわかった。
「今まで新幹線の中にいた自分っていうのは、
 君の傍らに、まだいたんだな」って。
つねさん って書いて送ったんだ。
ジョージ 「時間というのは、
 等しく均等に刻んでいる
 機械じかけのもののように思っていたけれども、
 飴細工のように
 グニャグニャ形と長さを変えながら、
 自由奔放に場所を変わって、
 昨日があさって、おとといが今日
 顔を出してくるようなものなのかな」
という、ことをね、書いた。
「でも、でもいけない、
 もう街が日常に戻っていて、
 僕はこれから仕事をしないといけない。
 気持ちを言葉に変えて、
 あとは君に任せるから」
っていうのを送ったんだよ。
ノリスケ は〜。・・・それは、
プロポーズ的な言葉だよね。
ジョージ んー、彼からやってきた手紙もね、
なかなかゴージャスだったよね。
ノリスケ どういうふうに?
ジョージ んー、んとね、
「人を言葉で屈服させるのが自分の仕事である自分は、
 ながらく自分の言葉で屈服させられた人間は、
 心豊かに幸せになるであろうと誤解をしていた。
 なぜならば、あなたの手紙は私を屈服させたけれど
 屈服させられた私は、
 心豊かに幸せになったわけではなく
 新たな不安をかき立てられる結果となった」
というのが来たの。
ノリスケ その返事は?
ジョージ 「もうここまできたらば
 何を言っても仕方がないのでしょう。
 再び君に会わなくては、
 自分がどこにいるのか
 わからなくなってしまった僕がここにいます」
って、出したら・・・
ノリスケ すっごーい。
ジョージ その次の週末に・・・
つねさん 来たの?
ジョージ あいつが来たんだよ。
つねさん おそろしい(笑)。
ノリスケ ふーん。(うっとり)。で?
ジョージ ……45日間くらいで、
華やかに燃え尽きたよ、ふたりで。
ノリスケ なんで? 遠距離だから、
もっと続きそうなもんだよね。
会えないんだから。
つねさん そうだよね。
ジョージ だってー、わかるんだもん。
わかりすぎちゃう。
次はこう来るんだろうなって。
つねさん あ、お互いが。
ジョージ うん。で、もうその最初のやりとりが、
予定調和でしょう?
つねさん まあ、そうね。
ジョージ で、僕が投げたものを正しく受け取って。
ノリスケ 脚本みたいだね。
ジョージ そう。
僕が、あの、二丁目かなんかで、
だれかたらそうと思って、
飲んで自問自答していることを、
もう1人の自分とやりあっているようなもんで。
楽しくも何ともないんだよ。
ノリスケ 似すぎていたんだよね。
つねさん そっかー。
ジョージ ぜーんぜん。でも、あれだよ、
肝要なところは
人の心を動かそうとするのがラブレターでしょ?
つねさん うん。
ジョージ で、何でもそうだけど、
人の心を動かそうと思ったら、
直接相手を動かそうとしちゃいけないのよ。
相手が動くより前に、
自分が動かないといけないんだよね。
で、あなたを見ていると
平静でいられなくなる自分、っていうのが、
必ずいるの。もう何年間も付き合っているのに、
別々になって、それぞれのウチに戻って、
一息ついて相手のことを考えるのが、
いちばん平静を保って
相手のことを考えられるんだよね。
あ、ウチの人なにをやってるのかしらーとか。
だけど、一緒にいると、
平静でいられないんだもん。
ノリスケ うーん?
ジョージ だって、一緒にいれば絶対この人は、ね?
昼寝しているわけでもなし、
悪さしているわけでもなし、
ボォーっとしているわけでもないっていうのも、
わかるんだけれど・・・
つねさん 昼寝してるんじゃないかとか、
悪さしてるんじゃないかとか、
ボーッとしてるんじゃないかと
思ってるわけね(笑)。
ジョージ 昼寝してるんだろうなーとかって。
つねさん 悪さは、あんまりしないけどね。
ジョージ 思うよね。でも、一緒にいるとね、
なんかね、なんか、どゆのかな? 
僕はこんなに好きなのに、
この人も僕のことが好きなはずなのに、
不思議と100%心がつながってるわけじゃないよね。
伝えきれない部分って、あるんだと思うよ。
つねさん だから、バレンタインが、あるのかな?
そういうことを埋めることが、
チョコレートひとつでできるんだったら、
そんなに簡単なことはないものね。
(つづきます)

2002-02-14-THU
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